6MP17pp CIRCLOTRON

 Aritoさんのトランスキット(球付)を某会のオークションで落札したので早速作ってみました。PPとはいえ5W程度のミニアンプなので割りと小型軽量に仕上がり、球数が多いので小型でも真空管アンプらしく見栄えがするアンプとなりました。

 このアンプはCIRCLOTRONという名前のように出力段がちょっと変わったCSPP(クロスシャントプッシュプル)という方式の一種になっています。これは負荷となる出力トランスをプッシュブルの球が完全にパラドライブすると言った回路で、マッキントッシュの負荷分散型とはまた違った方式らしい。詳しくはWikipediaあたりを参照してください。

 負荷分散型ほどではないのですが電源トランスにはフローティングの4電源が必要なのでやはり特殊なものとなります。今回はAritoさんの専用オリジナル電源トランスも付いていて、既にこの試作回路も試されデータもあるので、まずはそのまま製作例のとおりに作ってみることにしました。(整流回路のみ出川式に変更、平滑コンは400V180μF8本使用)

 シャーシサイズは23Wx20Lx4Hと少し小さめにしましたが、なんとか入って可愛いミニアンプとなりました。これならどこへでも持ち運べそうです。もうちょっとパワー(現在5W強)があるとどこでもドライブも余裕があるのですだがまあこんなものでしょう。

 トータル(オープン)ゲインはブートストラップもあって30dBあります。それに13dBのNFを掛けてクローズド仕上がりゲインで17dB(7倍)になりました。約1V入力でフルパワーになります。
  周波数特性は4.7〜330kHz(-3dB)と全く半導体アンプのような特性で、両端も滑らかに減衰してピークディップはありません。OPTの優秀さが伺えます。歪もNFを掛けた状態でかなり優秀で実用領域で0.1〜0.2%あたりに収まっています。

 


















仕様・特性
    入力インピーダンス 10kΩ
    出力          8Ω
    ゲイン         17dB
    ノイズ         0.45mV(Rch),1mV(Lch)->0.2mV(L,Rch)
    DF           約15
    周波数特性     4.7〜330kHz(-3dB)



微分補正なし(上)
10kHz矩形波応答(上:入力、下:出力)

微分補正あり(下)1kΩに560PFパラ
10kHz矩形波応答(上:入力、下:出力)

微分補正が無いと若干オーバーシュートとリンギングが立っているが、聴感上最終的には微分補償はしていない。








 早速出来たCIRCLOTRON試聴してみました。比較は我家の小型アンプの標準で出力は少し小さいですがSATRI-DRIVEの6BM8パラシングル(3W)です。その他の条件はスピーカがALPAIR10,ソースはリップしたCDをSDmemoryPlayer+BaffaloIIDACで再生、本体VRは使わずDACのデジタルVRを使用しています。

 CIRCLOTRON最初はちょっとボケた音でしたが、30分ほどすると音像もしっかり締まってきていい感じです。両者とも性能は高いのですが、細かく言えばやはりかなり違いがあります。
 6BM8の方はシャープでメリハリがあり音像も少し手前目ですが、CIRCLOTRONはシルキータッチで音像も奥目でやさしい音に聞こえそれぞれの特徴は対象的な面があります。この辺はハイブリッドとオール球の違いが出たのかもと思いました。それにしてもCIRCLOTRONは広がりもあり、細かい音を良く再生します。今時なら肉食系と草食系といった感じかもしれません。(その後印象は大分変わりました。)

 ちょっとCIRCLOTRONに食い足りない部分が有ったので、NF抵抗(470/47Ω)を最初のREY1/4Wからホーロー巻線2W(1k/100Ω)に変更してみました。この方がメリハリが付いて骨格がしっかりするはずです。
 これで聞いてみると狙い通り大分良くなって、広い音場の中にしっかりとした音像が定位し、声などにも艶がでて、何よりも全体の自然な感じが良いですね。これと比べると6BM8はどこか各帯域で不自然に強調されたような所が感じられます。



 その後スピーカ負荷がオープンでは安定性が悪くノイズが載るのが分かったので0.033μFと10Ωのスナバを出力に入れ、電源のダイオードノイズ対策でも各B電にも0.015μFと1Ωのスナバを入れました。それに初段のB電にも0.47μFのコンデンサを追加。あと左chのノイズが特に高かったので、アースがシャーシからフローティングしているのを落とし、ヒータも片側アースに落としました。おかげで両chとも0.2mVと劇的に下がりました。

 これで試聴してみると大分シルキーな面は薄れ音像も大分普通の感じに近くなってきました。あれはノイズの性だったのでしょうか。結構厚みのあるしっかりした音になりました。
  NFの微分補正も試してみたのですが、ちょっと大人しくなり過ぎでシングルコーンなどでは無しの方が切れがあってよい感じです。ハイエンドだと評価が変わるかもしれませんが、当面無しで行きます。

 大分オールマイティな音になり、何もを掛けても素直と音が出ます。それでもかなり細かい描写も得意で今ままで気づかなかった音が聞こえたり、解像度も高そうです。生録の津軽三味線など演奏中の周りの話し声が入っているのに今まで気が付かなかったのが分かるようになりました。

 ともかく初めてのCSPP、それもCIRCLOTRONという方式ですが、トランスの良さからか、かなりいい感じのアンプに仕上がってきたと思います。

2010/6/7 記