電流アンプ駆動2Wayマルチスピーカ

今回は以前から使っていたDCU-131PPに新たにツィータのDCU-T114Sを加えた2Wayスピーカを作りました。
 今回の特徴は
1. 電流マルチアンプ駆動
2. 対向ウーファのディレイ駆動
3. 球形フローティング対向ツィータ
といったところでしょうか。

1. 電流マルチアンプ駆動
 電流アンプというのは以前から興味を持って色々作っていましたが、対応するスピーカが難しく結局実用システムになっていません。最近某試聴会の電流アンプシステムが好感だったことから、再度トライしてみようという気になり作ってみた物です。
 電流アンプの使い方のコツは特性補正にあります。そのままでは電圧駆動用になっている通常のスピーカは暴れてしまい実用になりません。今回の特徴はデジタルチャネルデバイダのパラメトリックイコライザを使って補正をしっかり掛けることで、最新の測定技術に慣れるに従って調整のコツが解るようになってきました。

 グラフはチャネルフィルターを掛ける前に特性補正した各ユニットの特性です。(OmniMIC使用)
マルチでフィルターを掛けるにしても、その前の元の状態でなるべくフラットな特性に仕上げた上で、チャネルフィルターを掛ける方が最終的に良い結果になると思います。それでこの時点でピークなどは潰しておきます。
例えば低域ではそのままではfoのインピーダンス上昇でかなり周波数特性が持ち上がってしまいます。低域でのダンピング改善の目的もあって、パラにLCRのインピーダンス補正回路を入れて、イコライザでの補正が少なくて済むようにしています。

この状態からチャネルフィルターを掛けることにより、より理想的なクロスになります。左のグラフがクロス付近の周波数特性です。
 クロスフィルターの種類はリンクウィッツ・ライリーの-48dB/oct、3.24kHzを使いました。タイムアライメントの確認調整用にはツィータを逆相にした場合のリバース・ヌル(グラフの赤線)のディップもしっかりでています。(6kHzのディップに付いては別途説明)

電流アンプ;入力電圧に応じて出力電流が比例するアンプ。出力インピーダンスは理想的には無限大となる。インピーダンスに応じて出力電圧が決まるため、普通のスピーカを駆動するとフラットではなく、インピーダンスカーブにならう音圧特性になる。

2. 対向ウーファのディレイ駆動
 対向ウーファは振動軽減と起点の明確化による立ち上がりの良さが特徴ですが、中高域も生かそうとするとウーファは前後配置になるので、その場合ユニット間のディレイが問題になってきます。
 今回は前のスピーカにディレイをかけて、後とアライメントを合わせるようにそれぞれ別アンプで同相駆動にしました(距離差は実測で172mm相当)。デバイダチャネルとアンプがもう一つ余計に必要になりますが、アライメント取ったお陰で音のピントがより合ってきて、その効果は大きいと思います。ついでにアンプ内はバランス(逆相)駆動にして電源の改善に役立てています。

 構造の話が遅れましたが、ウーファエンクロ―ジャはヘッド部(3L)が以前のスピーカの流用で、通しネジで前後ユニットを固定していいます。エンクロ―ジャ本体はハンドキャリアブルにするためホームセンターで購入したごみ箱(^^;(約7L)を流用、軽量化と積み重ねによる運び易さを優先しました。ちょっとまだ容積が足りないので低域はあまり望めませんので、この点は今後改良するかも知れません。

3. 球形フローティング対向ツィータ

 ツィータは初めてPARCの軽量小型のT114Sを使いました。実装は対向設置にすると共に、安価な発泡スチロールのくり抜きによる球形エンクロ―ジャとしてみました。小さくするためユニットのフランジはカットしています。固定は両ユニット背面のM4タップに棒ネジを通し前後のユニットをがっちりと締め込んでいます。
 更にツィータはウーファからの振動遮断が重要なので、バネ性の保持具で支え、クリアーな音になる様考えました。
このユニットは持ち運び時に便利なよう、簡単に取外しができます。またその時のキャリー用の保持ケースも別途作っています。
 ただしこちらは現状ではユニット間でディレイを掛けた駆動をしていていないので、前後ユニットの距離差3cmが半波長となる6kHzあたりにディップが出てしまっています。
シングルでは完全にフラットですが、それでも対向ユニットにした方が、中高音に厚みが出て、そのディップが出る欠点を上回る音がしています。 

4. 総合的に

 はっきり理由は解らないのですが、電流アンプ駆動はすっきりとした辛口の音がします。とはいっても尖った歪のある音では無く、滑らかな後味のキレのある良い音に仕上がっていると思います。また余韻が良く表現され、高解像な音で楽しめます。
ハンドキャリー用で低音は多少端折っていますが、音色確認用として電流アンプ駆動は普通の電圧アンプの音とはまた違った世界が有る様に思いますので、これはこれでまた面白いのではないでしょうか。

 デモ使用機器(予定)
プレーヤ Astel&Kern AK-100 光デジタル出力同軸変換
チャンデバBehringer DCX-2496改(デジタル入力、アナログ出力)
アンプ LM3886帰還型電流アンプ 3ch分(ステレオ)+低域インピーダンス補正回路

                                2014/4/20 記