ファンネルダクト(DFBR)方式スピーカの計測
大地さんからタイトルのスピーカを送っていただいたので、その私なりの解析と測定データを紹介します。使用ユニットはTangBandのW3-881Sという8cmのフルレンジです。
低域のスピーカシステムの測定は色々な点で難しい面があります。
室内での低域の測定の問題点の一つは周りの暗騒音が結構有ることです。静かな部屋でも周辺の低域ノイズはあまりカットできずに残ってしまいます。それともうひとつは室内だと壁や床などの定在波や反射が避けられないことです。
またマイクアンプの低域ノイズなどの計測系のノイズも問題になります。
ですから(無響室で無い限り)あまり室内の低域での測定結果には信頼性がありません(精度が悪いということ)。ほとんど部屋の特性を測っているようなものでスピーカの実力は簡単には近接(nearfiel:ユニット前数cm)測定でしか見られないのです。
このグラフの読み方は青がユニット側、赤がポート側で黒がその合成特性(計算値)になります。
これから見ても分かるようにポートは単純な単共振形ではなく、予想した様にダブルバスレフに近い動作となっているようです。ただし、レベルが低いので合成特性としてはそれほど低域は伸びていません。
だだし、室内では反射や定在波などで補えれば5〜60Hzぐらいまでは聞こえていると思います。
左図のFDBRの動作を少し考えてみました。高いほうのポート共振(150Hz前後)ではフロントのユニットと強めあい総合レベルが上がっていますが、低い方(60Hz)では逆に合成特性はレベルが下がっています。
これは上側が通常のバスレフのように位相が180度回りフロントと同相になるのに、低い方は更に180度回って逆相で打ち消しあってしまうというダブルバスレフの特徴が出ているのではないかと思います。
ちなみに測定はSpeakerWorkShopでMLS信号を使った計測です。nearfieldとはユニットから2cmぐらいの距離での測定で、数kHz以上のデータは誤差があります。
実際の室内での周波数特性はというと左図のようになりました。
neafieldでのデータでは500Hzあたりから低域が上昇していますが、バッフル面が小さいのでバッフル効果で落ち込みと相殺し、室内のfarfieldではちょうど150Hz程度まではフラットになっています。しかし、それ以下はやはり急激に落ち込みます。50Hz以下はほとんどノイズレベルです。
今回の環境でのノイズレベルのデータ例は上のようになります。毎回少しづつ違いますが、大体の感じは判ると思います。100Hz以下から影響が出て、50Hz以下はイーブンですから、上記50Hz以下のデータには意味がありません。
後、100〜500Hzあたりは部屋の定在波や反射波の影響を受けピークディップが出ます。250,400Hzあたりのディップがそれだと思われます。また10kHzあたりからの高域はマイクの特性とSPとの軸のあわせ方で結構ばらつきが出ます。
一応50cmと2mのデータも上げておきます。50cmだと低域の特性がより明確になります。2mだと部屋の影響が大きいですし、ゲインを調整しているので低域のノイズも相対的に上がってしまっています。
逆になりましたが、次はインピーダンス特性です。
グラフの様に実装時のインピーダンス特性は単純な双峰特性でダブルバスレフ動作にしてはちょっと変のような気もします。もう少し複雑な共振特性かと思いましたが、その辺は良くわかりません。
ユニット単体と外側のポートを塞いだ密閉状態でのインピーダンス特性は下記のようになります。
それぞれピーク周波数はポートを密閉した時がfs123Hz、ユニット単体ではfo102Hzで、それぞれ普通の単一共振でした(密閉の場合200Hzあたりに小共振あり、内部チャンバーの副共振?)。
これよりティールスモールパラメータは
Qes 1.05
Qms 6.3
Qts 0.9
と計算されます。
記 2010/8/5