MFBスピーカについて

 アンプのNFBと同様にスピーカのボイスコイルまでをNFループに入れ特性を改善したMFBが知られているがまだ特殊な分野として普及していない。また制御理論としての基礎知識もあまり理解されているように見えない部分もある。そこで私の考えるMFBのあり方や問題点をまとめてみることにする。

 MFBは入出力間の系の外乱に対してネガティブフィードバックループを形成することにより特性を改善する方法だと述べたがそのポイントはループの安定性とフィードバックセンサーの精度だと考えられる。通常のNFBだとフィードバックは帰還抵抗による抵抗比で決まるので、高精度かつシンプルで簡単に特性の改善が行える。しかし、それでも抵抗の種類や実装などで音への影響が見られるほど重要なポイントである。この点MFBは検出機構が複雑になり抵抗比の様な高精度も取れないなどの問題点もあるが、スピーカ自体の問題が大きいのでそれでも総合的には改善が見込めると考えられる。実際の検出方法から見るといくつかの方法がある。

1.容量検出方式(位置検出)
  センサーは割と単純で精度も取れるが、電圧への変換が難しいことノイズが問題だろうか。他には最終的な制御量である加速度成分まで2階微分となるので制御信号レベルが小さくなる欠点がある。
2.検出コイル方式(速度検出)
 MFBでは一番一般的だと思われるが、検出コイルの取り付けというユニット改造がネック。ポイスコイルからの電磁誘導や(キャンセルコイルによる対策可)、検出コイルまでの機械的な結合強度が一番の問題点だろう。後はあまり触れられていないがセンサーのリニアリティのデータもあまり発表されたことがないので、実際はこの辺も問題になるだろうと思われる。
3.ブリッジ方式(速度検出)
 ユニットの改造は必要ないが、そのままでは駆動と検出が同じ機構なので駆動部分のリニアリティの改善というMFBの重要なメリットは活かせない。ただしリニアリティは検出電圧を逆特性のリニアライザーができれば対策は可能。また本質的にボイスコイルと検出部が同じなので機械的な伝達に問題はない。ただし、ブリッジをなすボイスコイルのインダクタンス成分を完全にはキャンセルできない。
4.マイク検出方法(加速度検出)
 コンデンサマイクにより音圧検出を行い帰還。ECMなど安価で高性能マイクができたので可能性はある。音響、振動ノイズの対策が問題か。
5.加速度センサー方式(加速度検出)
 高性能で軽量なセンサーがないのがネック。ロボットの普及で半導体センサーなど高性能センサーが入手できるようになれば一番可能性は高いと思われる。

 方式だけでもざっとこのくらいあるが、オーディオ分野では古典的は安定性の問題は大分考慮される様になったが、まだセンサーの精度やMFBの実質的な改善度合いまでデータ上で検討されるまでにはいたっていないなど、まだまだレベルは低い状態だと思う。
 その原因の一つは、MFBの主流が2の検出コイル方式が主流なためユニットが一般的でないのが一番の問題だと思う。ここは3のブリッジ方式をもっと取り上げ一般にMFBに取り組みやすくするべきではないだろうか。ブリッジ方式の欠点であるリニアリティの改善もリニアライザを使用すれば解決できそうだし、それ以上に外乱の制御というMFBの一番の特徴を生かした利点を広める必要が有ると思う。スピーカの電圧駆動も一つのMFB速度制御であることも理解されてい様な状態では制御に対する無理解と偏見が多くまだまだの感がある。