ALPAIR 10 スピーカシステム
MARKAUDIOの新ユニット公称13cmのフルレンジスピーカユニットを使ったシステムを組んでみた。
箱はPARCのウッドコーンを入れていた箱があまっていたので、少し大きめだがそれを流用した。
まずは右図の裸のインピーダンス特性からSpeakerWorkShopでT.S.パラメータを算出する。
メーカ発表値 測定値
Qts 0.33 0.35
Qms 2.24 2.72
Qes 0.39 0.40
fo 40 42
と大体メーカ発表値と合っているので、安心してパラメータが使えそうである。バスレフをシミュレーションしてみるとやはり最適に値はメーカ推奨の13Lあたりの容積が良さそうだが、この箱は16Lと少し大きい。この辺はおおまかなのでまあ許容範囲だろうとこれで計算してみたのが左のグラフ。
ポートは45Hzぐらいで少し低域が持ち上がり気味だがそれほどでもない。
ポートは55φで150mmと出たが、実際のインピーダンスをポートを調整しながら測定してみると大体計算データともほぼ合う。(右図)
まずは最平坦ということでポート長は最初は150mmで行ってみる。
最近は低めのチューンニングで密閉に近い動作をさせる場合もあるが、今回は低音をしっかり出させるようにとこの辺にした。
更に箱はユニット単体で見られた中域の盛上がりを抑えられないか、となるべく低域のバッフルステップ周波数を下られるようにとの理由でユニットを箱に横付けにしてみた。
この時バッフルステップは500Hzあたりで2dBもちがあがるが300Hzまで伸びる。横付けだと600Hzあたりから下がってくるので、その場合は最初から補正含みで考える必要がある。マルチならネットワーク前提で横付けのほうが良いかもしれないが、シングルなのでそのまま使えるように出来だけ補正なしで使えるように考えてみた。
実際の周波数特性(室内50cm)を測ってみると
右図のように と予想通りほぼ50Hzぐらいまで伸びている。
高域も素直に伸び中域のピークもそれほど目立たないようだ。
戸外でのオープンエアー(1m)でも測定してみた。
50Hz以下はノイズだが、やはり低域のバッフルステップの影響が見えてくる。広い場所では300Hz以下を少しブースとした方が良さそうだ。
聞いてみると予想されたように低域もかなり伸びて、高域もそれなりにフラットで特性的には問題ない。特性だけでは分からないがマグネシュウムハイブリッドコーンのためか音色もクリアーでフラットな特性と共にすっきりとした音で評判が高いのも肯ける。まだ吸音材も入れていないし、補強もしたほうが良さそうな気がしているので、今後更に手を加えているつもりである。
ALPAIR 10 スピーカシステム その2
少し最初の設定で聞いてみたがやはり全体にちょっと音離れが悪いのと、五月蝿い感じが付きまとう。またブースとすると低域のピークもちょっとで過ぎの感じもするので、もう少し調整した方が良さそうとうことで早くも修正版となる。
最初は低域の盛り上がりが気になるので、ポート周波数を少し下げる。ポート長を15cmから20cmに伸ばしポート共振周波数を約49Hzから43Hzに下げることにする。これでも低域レベルは1,2dB程度の低下で済むし、再生下限も40Hzから30Hz程度になる。
この状態で正確なユニットからの直接出力を計測してみる。戸外であっても周辺や箱の反射で正確なユニット出力は測れないので近接測定が一番ユニットの特性を現している。ただし、バスレフの場合にはポートからの出力との合成になるので、見るには少しテクニックが要る。
グラフは青がユニット直前のニアフィールド特性で、高域は振動板半径が半波長になる周波数までが限界とされているが、図のように振動板から等距離にマイクをおけばかなり高域まで測定できる。今回は振動板の全面から等距離になる様に約7cm離した位置で測定している。
ただしこれでもセンターキャップの部分が凸になっているで、その部分で距離が異なり位相が反転する。ALPAIR10はセンターキャップが振動板より約1cm前に出ているので、10数kHzで位相が反転し図のディップとなっているのではないかと思う。
低域の赤線はポート出力でポート出口直前で測定たもの。総合特性はポート面積と振動板面積比で割った分、ゲインを下げ、畳み込みでコンバインする。この辺はMLSで測定しているので位相特性も含めた演算が可能になっている。
結果が黒線でこれがほぼユニットの総合出力に相当する。約7kHzのピークを除けば非常にフラットで中々優秀なユニットであるのが解る。ピークは帯域が狭いのと周波数的に高いのであまり耳にはつかないと思われる。
低域は200Hzあたりから2,3dBあがっているのでバッフルステップ補正も3.4dB程度でよいことが解る。
ここで肝心なことは低域のポート共振が理論的には高域に向かって-12dB/octでレベルが下がるはずだが300Hzあたりからエンクロージャ内の共鳴で余計な音が出ていることで、これが普通だと右図のように振動板から出る音と同じぐらいのレベルが出ていることがある。
右図は内部の吸音材が無い状態で中域に内部共振と思われう音がかなり漏れているのが解る。左はその対策としてポートとユニットの間の中央を吸音材で仕切った場合で、500Hzから2kHzあたりのピークで15dBくらい改善されている。
これでもまだ漏れは理論値よりは10dB以上高いので、このポートからの中域の音は厄介な存在だ。これがバスレフの音を悪くしている元凶とも言え、この辺がなぜ注目されないのか(あまり問題視したくない?)不思議なくらいだ。
まだこの点の完全な対策は無いと思うが、エンクロージャ内ポート出口の位置と内部の共振状態を検討することがポイントだろうと思う。
ALPAIR 10 スピーカシステム その3
この状態で色々聞いてみるとまだ少し低音が足りないようで、自室では良いのだが広い所などではやはりバッフルステップの補正も入れておいたほうが良さそうだと思い、端子が2組あることから補正有り無しと選べるようにした。
補正回路は前のEdgeシミュレーションより300Hzぐらいから6dBほど上げればよい。今回は試聴してみた感じから、少し上げ気味の8dBほど持ち上げるたあたりが良さそうだと感じ、その時の補正回路の値が左図のようになった。
右図がその時の補正値で、この特性は負荷のインピーダンスが一定でないので実際のインピーダンスカーブから計算させた。
補正のコイルは3mHあたりと大きくなるのでコア入りを使用。珪素鋼鈑コアが望ましかったが、コストからフェライトを選択。以前フェライトはどうも歪っぽい感じがしたが、今回のは大型のを選んだのでまあそれほど悪くは無さそうだ。
ついでに内部補強をバッフルの中央部分、ユニットのフレーム脇と背面との間に突っ張り板を入れた。これでバッフルやユニットの振動は触った感じでだがかなり減少した。
最後に各状態での歪率を測定してみた。
ニアフィールドでのバッフルステップ補正なしの場合はユニット音圧歪特性は
で、歪は40dBUPなので基準より-50から-55dB程度と全帯域に渡って良い特性を示している。
ポートからの音圧の歪特性は次のグラフ。
ユニットと同じぐらいの音量になるよう相対レベルを下げて測定している。こちらも歪は少ない。
ただし、低音は音量を上げ振幅をが増すと歪が急増する。ニアフィールドから離れ全帯域で見てみると50cmでは
のようなデータになった。低域は定在波の影響が出ている。220Hzあたりに歪が増加しているが原因は不明。
中高域の特性は優れている。
バッフルステップ補正により低域を持ち上げると上昇分と振幅の増大で相乗的に歪は急増する。
この入力レベルで大体バッフルステップ無しと中域では同じぐらいの音圧で、約86dB(50cm室内)程度である。これでも中域の歪は0.1%程度とかなり低いが、300Hzから下は約12dB/octで増加し100Hzで1%、それ以下では数%になる。 これは振動板の振幅にほぼ比例し、振動板のリニア歪が現れているものと思う。これでもまあこのサイズだと良いほうでバスレフのために50Hzあたりでは上昇が押さえられむしろ下がり気味になる。
バッフルステップ補正を加えると流石に低域がゆったりし、音楽が落ち着いて聴けるようになる。不思議に中高域も音離れ場良くなり奥行きも出るように感じられ、ほぼこれで満足いく音になってきた。低域はかなり下まで伸び我が家で聞く分には充分すぎるほどである。
これからはこのスピーカを各所に持ち出し色々な環境で比較試聴してみる予定にしている。
使用ソフト SpeakerWorkShop、WinISDpro、Edge、MsWord、Myspeaker
2009/10/19記
2009/10/21その2記
2009/10/23修正
2009/11/1その3記