OmniMic 取扱説明書


         対応ソフト Rev5.04

         


    Rev  0.91

発行 2019/3/2

 






















目  次


1.ソフトインストール

2.測定準備(接続)

3.測定

 3−1.マイクの設置

 3−2.校正

 3−3.測定機能の概要(TAB)

1) Frequency Response(周波数特性測定機能)
2) SPL/Spectrum (音圧・スペクトラム測定機能)
3) Oscilloscope (オシロスコープ機能)
4) Distortion (歪測定機能)
5) Reverberation (残響測定機能)
6) Bass Decay (低音減衰測定機能)

4.測定結果の保存と出力

  1. 表示画面の保存
  2. 測定データの保存
  3. 画面の印刷
  4. グラフ上のカーブの保存と表示

5.測定機能の詳細説明

 5.1 Frequency Response(周波数特性測定)

  ・室内反射音の除去
  ・平均値機能
  ・ウォーターフォール表示
      
  CSD
        Energy Strage
        Wavelet Spectrogram

  ・その他一般共通操作

 5.2 SPL/Spectrum (音圧・スペクトラム測定)

    ・聴感補正フィルターの選択(無し、A,B,C各カーブ)
    ・音圧メータの応答速度切替
    ・スペクトラム表示更新の速度切替
    ・スペクトラム表示方式の選択

 5.3 Oscilloscope (オシロスコープ・波形表示)

    ・時間・振幅軸の自動・固定の切替とレンジ変更 
    ・ローカットフィルターの入り切り
    ・トリガーの有無、方向・レベルの切替

  5.4 Distortion (歪率測定)

   ・歪測定時の注意事項

 5.5 Reverberation (残響測定)

  ・対象周波数の下限と上限設定


 5.6 その他(応用)

    ・グラフカーブの重ね表示
    ・ゲインと位相の同時取り込み
    ・音源までの距離測定
    ・演算機能




1.ソフトインストール

DaytonのホームページからOmniMic V2 Precision Measurement Systemを開きます(下記)。

http://www.daytonaudio.com/index.php/omnimic-v2-precision-measurement-system.html

中段のLastest software versionから最新のVERSIONをダウンロードします(現在5.04)

      ソフトを解凍し、インストールします。

2.測定準備(接続)

2−1.OmniMicを添付等のUSBケーブルでPCに接続します。

USBが接続されるとマイクのコネクタ上の青いLEDが点灯します。

2−2.測定するスピーカをCDプレーヤ、アンプとつなぎ再生できるように準備します。

PCに接続したOmniMicを測定ポイントに設置します。

         OmniMicV2 MIC USBケーブル   

 CDプレーヤ    アンプ     スピーカ                        測定ソフトを入れたPC

                                

2−3.File再生ならHomePage下段のTestTracksfileをダウンロードしたもの再生します。CD再生なら専用のTestTracksCDをCDプレーヤに入れ再生出来るように準備します。


3.測定

3−1.マイクの設置

 OmniMicを添付のフォルダーとマイクスタンドを使って、色々な位置に置いて測定します。マイク、スピーカの周りには物を置かないようにしてなるべく部屋の中央(高さも)で測定します。

測定位置はツィータの正面や、マルチウェイならウーファとツィータの間などで色々測ってみましょう。何点かの平均値も計算できますので、測定ポイントを移動させて平均するのもひとつの方法です。またバスレフポートの直近や通常のリスニング位置での測定も重要です。

 3−2.校正

 インストールされたOmniMic.exeを起動すると図のような画面が現れます。

テスト信号の入力が無いと上部に警告文が表示されますが、信号が入れば自動的に消えます。

 

初めにマイクの周波数特性の校正のために上段メニューのConfigからMicIDを選択します。


DaytonのHomepageより手持ちのOmniMicのコード番号に相当するダウンロードしておいた校正ファイルを、図の右上のFile calラジオボタンを選んでおいてウィンドウにセットし、Applyボタンを押します。

もしくは旧タイプのマイクなどではCODE calラジオボタンを選択し、下記のようなコードを直接入力します。

 

 入力欄にはマイク本体に張ってあるシールの6桁の英数字を図のように各桁のプルダウンウィンドウから選択入力します。全桁終了したらAppleyボタンを押して校正を完了します。

校正データはソフトに記憶されるので、次回からはこの校正操作は不要です。校正により本体マイクの特性に合わせて測定時には自動的に周波数特性の補正がおこなわれます。

 

 また基準となる校正済みの音圧計があればConfigメニューから「Adjust」を選ぶと音圧計との感度差を微調整することもできます。(通常は自動設定されるの必要ありませんが、一度は確認した方が良いと思います。修正は録音デバイスのプロパティからも可能です。)

 

 

 3−3.測定機能の概要

 初期画面の上からに6つのタブが並んでいますので、ここで行いたい測定機能を選びます。OmniMicには以下の測定機能があります。

  1. Frequency Response (周波数特性機能)
  2. SPL/Spectrum (音圧・スペクトラム測定機能)
  3. Oscilloscope (オシロスコープ機能)
  4. Distortion (歪測定機能)
  5. Reverberation (残響測定機能)
  6. Bass Decay (低音減衰測定機能)

この6つ機能の中から1つを選んで測定を行います。


1)周波数測定機能

 一番左のタブをクリックするとスピーカの周波数特性等が測れます。

 グラフ上の左側ラジオボタンは「sine sweep」を選びます。「pseude noise」も選べますが精度が落ちるので「sine sweep」を選んでください。測定は必ず片chづつ行います。(両ch同時だと左右の再生音の干渉が起こり特性が乱れて正確な測定が出来ません。)

CD
プレーヤやファイル再生で「Short sine Sweep」Test Trackを再生します。 指定と違うトラックの再生では測定がうまくいかなかったり、値が異なったりしますので注意してください。
 「bass removed」や「 bass and midrenge removed」はそれぞれの帯域がカットされた信号ですので、ツィータなどの測定にもローカットのコンデンサなどの入れずにそのまま測定できます。

 再生音がスピーカから出て、左上のプレイボタンが押されていれば測定は自動的に始まります。(初期状態では左上隅のプレイボタン が押されています。)

 画面の感度軸のレンジは初期状態が自動調整(auto)なので、再生される音が適当な大きさで聞こえる様にボリュームを調整すればグラフには適切な大きさ・位置で周波数特性が表示されます。

 

周波数特性が安定して表示されるようになったところで、左上隅の一時停止ボタン を押します。これで測定が一時停止しますので、その後のデータ評価・保存ができます。測定を再開するは再度プレイボタン を押します。(各測定機能で共通です)

 

 画面の下段にはインパルス応答の時間軸波形が表示されています。これでスピーカの極性や室内の反射音が見られます。グラフ上の中央のラジオボタンでは反射波の除去をするためにデータの一部を削除して演算する、混在(blended)、制限モード(only to)を選ぶこともできます。また位相データの表示は右下のshow phaseチェックボックスにチェックを入れると見られます。

 詳しくは詳細な機能説明をご覧ください

 グラフ下の選択ボタン(機能)では左から

   平均値の取り込みと表示
   平均値表示の消去
   直近測定データの非表示

などができます。


またこの画面で入力信号タイプの選択

室内反射音の除去

カーソルでのグラフ値の読み取り

グラフのスムージング変更

グラフ軸のレベル・レンジの変更

表示周波数範囲の変更

保存したデータカーブの重ね表示、比較

 位相の表示のオンオフ

なども行えます。詳しくは詳細な機能説明などをご覧ください。


 他にこの機能からポーラパターンの測定・表示やウォータフォール類の表示なども出来ます。


2) SPL/Spectrum 音圧・スペクトラム測定機能

 2番目のタブを選択すると音圧レベルおよび周波数スペクトラムがリアルタイムで測定できます。

周波数の補正カーブの選択はグラフ上のラジオボタンで行います。

騒音レベルの測定には通常、聴感補正Aカーブのフィルターを用います。聴感補正フィルターはスペクトラム表示にも反映されます。音圧からはスピーカへの入力電力が解れば大体の能率が判断できます。

ここでできる追加選択項目(機能)は

聴感補正フィルターの選択(無し、A,B,C各カーブ)

音圧メータの応答速度切替

スペクトラム表示更新の速度切替

 

などで、詳しくは詳細な機能説明をご覧ください。


音圧測定レンジの自動または固定

スペクトラムデータのカーソルでの読み取り

スペクトラム表示周波数・ゲイン・レンジの変更

更新の頻度の変更

などもできますが、これらは周波数特性の測定の場合とほぼ同じです。


3) Oscilloscope オシロスコープ機能

上段のタブの3番目を選択するとOmniMicで拾った音圧の波形を直接見ることができます。

波形は普通のオシロスコープのようにトリガーの選択や時間軸、ゲインの調整ができ、ローカットフィルターもあります。スピーカからのテスト信号や音楽波形などが見られます。

ここでできる追加選択項目(機能)は


時間・振幅軸の自動・固定の切替とレンジ変更

ローカットフィルターの入り切り

トリガーの有無、方向・レベルの切替

カーソルでの値の読み取り

 

などです。

 

 


4)Distortion 歪測定機能

4番目のタブを選択するとスピーカの歪率の測定ができます。このテストでのTestTrackは必ず「Long sine sweep」を使用します。

 2次から5次までチェックを入れるとそれぞれ高調波歪が演算・表示されます。最後の2nd−>5thはそれらの総合した値の表示がされます。カーソルをグラフ上に置くとその周波数と音圧、歪率が表示されます。

 歪の下限は環境ノイズによっても影響を受けますのでなるべく静かな環境でおこないます。歪成分が(信号が無い場合に相当する)暗騒レベルと同じになっている場合には、測定値は正確な歪率を表わしてはいません。意味のある測定にするには騒音が少ない環境で測定するか、再生信号のレベルを上げ、歪成分が暗騒音レベルを上まわる必要があります。

 

例えば同じ環境でCDを再生させない環境で採ったデータを見てみると


前の測定例では4、5次高調波歪や300Hz以上はノイズレベルとほぼ同等なのであまり意味が無いことがわかります。

IP2,IP3は2次及び3次歪が現在の再生音レベルになると予想される再生音レベルで、チェックマークが入っていると表示されます。

 

ここでできる追加選択項目(機能)は

グラフのスムージング

グラフ表示軸レベル・レンジ・周波数範囲の変更

グラフ表示レベル・レンジの自動・手動選択

カーソルでの値の読み取り

などです。

5)Reverberation 残響測定機能

5番目のタブを選択すると試聴環境の残響時間の測定ができます。

このテストでもTestTrackは必ず「Long sine sweep」を使用します。

 測定結果のグラフは音が急に止まったと仮定した場合の時間経過に応じた再生音の残響音の減衰を示しています。なるべく減衰特性が直線で素直になるようタイミングを選んで測定を停止します。

 データに対して平行で(0dB,0ms)からの赤い線をイメージします(図上は後で追記)。この赤い線の-60dBの所が残響時間を表しています。

 グラフの上には残響時間を測定する周波数帯域が選べます。

ここでできる追加選択項目(機能)は

対象周波数の下限と上限設定

演算の上限時間の設定

カーソルでの値の読み取り


などです。


6)Bass Decay 低音減衰測定機能

6番目のタブを選択すると試聴環境での共振による低音の減衰(共振)状態(Bass Decay)が見られます。

このテストではTestTrackは必ず「Bass sweep」を使用します。

この測定は低音での定在波(鳴き竜現象)の発見と対策に役立ちます。特に時間が長い周波数ポイントが有る場合ではヘルツホルム共振や、スピーカ位置の調整で対策をする参考になります。


 下のグラフは周波数特性を基準にそれぞれの周波数での音の減衰量に対する時間が下のグラフに色別で表示されます。

ここでできる追加選択項目(機能)は

グラフ表示軸レベル・レンジ・周波数範囲の変更

カーソルでの値の読み取り

 

などです。

4.測定結果の保存と出力

 今までのいずれのTABから選んだ機能でも、その結果の出力と保存は次の処理で同じ様にできます。

1)表示画面の保存

 表示されているグラフ画像はSnapshotメニューから拡張子を指定して、ビットマップファイルやサイズを自由に可変できるWMFファイル、一般的なJpegなどに保存ができます。このファイルをペイントソフトなどで表示させれば、後でどういう状態だったかを確認したりするのに役立ちます。

2)データの保存

 周波数特性などで測定データを数値で保存する場合は上段のメニューのFileのプルダウンメニューで色々なデータタイプの保存できます。データはASCIIテキスト形式で保存されるので、後から他のソフトで利用することも可能ですし、グラフの重ね書にも利用できます(項目によってはデータ保存が出来ない測定もあります)。

 ★位相特性も同時に保存する場合にはファイルメニューのAddCurves>AddLIVECurveを使うのが良いと思います。

3)画面の印刷

 今表示されているグラフ画面を直接プリンターに印刷する場合は上段のメニューの「印刷」をクリックし、defaultプリンターでよければyesのボタンを押すと印刷されます。

4)複数データの表示

 複数の周波数特性グラフを表示させたい時はデータ数値を保存し、AddCurvesメニューより表示させたいデータを選択して重ね書きができます。


5.測定機能の詳細説明

5.1 Frequency Response(周波数特性機能)

室内反射音の除去

 中央の3つのラジオボタン「全部(all)」「混在(blended)」「制限(only to)」ではインパルス応答を見ながら結果の周波数特性にどこまでの反射波(室内の影響)を含めるかの選択ができます。

室内での音響測定ではスピーカからの直接音以外にも、必ず周りの物体から反射した反射音が加わるのが避けられません。正確なスピーカの特性測定にはこの反射音を少なくするように、スピーカを周りの物から離して置く必要がありますが、この反射を取りきれない分を電気的に除去することができます。

ラジオボタンが「blended」か「only to」の場合、周波数特性の下に時間軸での応答波形を見ることができます。この例では0 msecでのインパルス信号とスピーカの振動に続いて反射音のインパルス(グラフでは8.5msec)が遅れて現れているのが見えます。

ここで反射を除去した特性を見るにはグラフ上の反射波の前にマウスを移動し左クリックします。この時「only to」ラジオボタン右側の数値表示窓の値とインパルス応答グラフの色の範囲が変わります。この状態でラジオボタンを「only to」として測定をすると周波数特性を演算するデータがクリックした時間までに変更されます。

この時の周波数表示は図のように設定した時間に応じた周波数までに下限が制限されたグラフになります。これはそれ演算時間を制限したために低域の周波数データが計算できなくなるからで、反射波の影響を少なくできる代わりに低域までは測定できません。

また低域は室内の定在波の影響も出るので、スピーカのみの正確な測定は近接法という数cmの近距離にマイクを置いた方法で測定します。

「all」のラジオボタンでは反射波を含めた次のようなグラフの周波数特性の表示となり、スピーカ固有の特性に加えて室内の特性が加味されます。


中央の「bleded」ラジオボタンを選択すると低域ではこの演算時間の制限なしのグラフと高域での反射波を除去したグラフをつなげて表示したものになります。
 インパルス波形も同時に見たい場合は時間レンジを極端に広げると「all」に近いデータになります。

インパルス応答の反射の除去という方法では反射波の避けられない室内においても、低域では難しいとはいえスピーカそのものの特性をなるべく正確に把握することができるようになります。

ただし、スピーカ自体の特性ではなく室内において総合特性という意味では「all」「blended」の長時間窓で全体を見た方がより聴感に近い特性になると思われます。

 

・平均値機能

      平均値ボタンを左クリックすると取込んだデータを平均値として保存し、グラフには赤線で表示されます。2回目のクリックからは元の平均値のデータに現在の測定データが加算平均され表示されます。平均値ボタンの右側には追加平均された回数が表示されます。


測定値はばらつくので何箇所かのデータをとると平均した特性が得られるので、その場合に利用すると便利です。またグラフの一時保存にも使えます。また高度な機能ではデータの重み付け演算も出来るようです。


左の「−」マークを右クリックすると直近の測定グラフの太さがサイクリックに変わります。右クリックでは青線の現在のデータのグラフの太さが変わります。


平均値の削除」ボタンを左クリックすると保存され、表示している平均値と表示を消去します。

    右側の「非表示」を左クリックすると現在測定の青線データのグラフが消え、平均値のみの表示になります。

 

・ウォーターフォール表示

反射波除去のラジオボタンが「blended」または「onlyto」の時、周波数特性の測定実行中にウォータフォールアイコン を押すと周波数特性表示が変わり、いわゆるウォーターフォール表示になります。この表示(演算)は3種類用意されていて、メニューバーの切替で選べます。メニュー隣の「f特測定に戻る(Return to FR)」で通常の周波数特性測定に戻ります。


1) Cumulative Spectral Decay

略称はCSDでインパルス応答の時間経過ごとのFFTを表示しています。

画面中央下の「EQ フラット」にチェックが入っていると初期データをフラットに換算し、そこからの減衰状態を表示します。これは次のTESやWaveletでも同じです。

    2)Toneburst Energy Storage
    こちらは短時間のトーンバーストと等価の信号が入った時の経過時間での減衰状態を表しています。

右下の入力欄で信号バースト波の波数が選択できます。

 

3)wavelet Spctrogram

Impulse信号をWavelet変換により時間的な要素を持たせた解析ができ、タイムアライメントを見ることが出来ます。
これによりマルチスピーカにおいて音場表現の再現性に大きな役割を果たしています。

グラフの漏斗型のネジレやズレが時間軸の歪みを示して、この中心が上から下まで真っ直ぐであればアライメントが合っているといえます。

時間軸は中高域を見る場合には数mSまで拡大する必要があります。中高域ではズレを0.1ms程度まで追い込むと音場表現が良くなると思います。
下のEQflatにチェックを入れると周波数レベルのピークを揃えてくれるので見やすくなります。

 

・その他一般共通操作

カーソルでの値の読み取り

 グラフ上にカーソルを移動させるとそのポイントのデータが表示されます。

グラフのスムージング

周波数特性測定では右上のプルダウンメニューで表示されるグラフの滑らかさを選択できます。

 

グラフ軸のレベル・レンジの変更(グラフの調整)

 表示される各グラフはレンジ、ゲイン、周波数範囲が調整できます。

たとえば周波数特性の画面で@ABCDのマークがそれです。

@はゲインの調整で一目盛りあたりの感度を変更し、グラフを拡大縮小表示させることができます。

Aはグラフの絶対値の調整で、グラフを上下に移動させることができます。

    Bは表示周波数の下限設定でCは上下設定となり、表示範囲を変更することができます。

    Dはチェックが入っているとグラフのゲインと絶対値を自動的に調整します。


これらのマークは他のグラフでも同じように機能します。

 

 

5.2 SPL/Spectrum 音圧・スペクトラム測定機能

・聴感補正フィルターの選択(無し、A,B,C各カーブ)

音圧を評価する場合には人間の聴感の特性に応じた重み付けをする場合があります。人間には低域と高域の感度が落ちるので図のようなフィルターをかけた方が感覚的に適合します。これが聴感補正フィルター(カーブ)と呼ばれているもので標準的なAカーブとそれ以外にB,Cなどもあります。これらの周波数特性は下記のようになります。

このフィルターを選択した場合はスペクトラム表示も同様に影響を受けます。


音圧メータの応答速度切替

 音圧メータの下のラジオボタンでメータの応答スピードを選択できます。インパルスモードでは減衰が滑らかになります。右側のAutoモードチェックボックスや下のピーク数値表示なども影響を受けますので参考にしてください。


スペクトラム表示方式の選択

 絶対音圧値とそのスペクトルが見られます。

 音圧は聴感補正や応答時間が選べます。

 

・スペクトラム表示更新の速度切替

 これらのグラフ表示の更新速度もグラフ下のラジオボタンから選択できます。音圧メータと同じでAutoモードや周波数範囲、レベル感度などの選択も可能です。

これらのスペクトラム表示は聴感補正カーブの影響を受けて表示されます。

 

5.3 Oscilloscope (オシロスコープ機能)

・時間・振幅軸の自動・固定の切替とレンジ変更 

  オシロスコープ機能では通常のオシロスコープのように縦の振幅軸、横の時間軸の値がグラフ表示の変更と同様な方法で選択できます。

 振幅軸の単位値はPa(パスカル)になっています。

・ローカットフィルターの入り切り

 表示を見やすくするためにローカットフィルターのチェックボックスが右上にあります。こちらは10Hz以下の周波数をカットします。

・トリガーの有無、方向・レベルの切替

 0msecでの表示のトリガーもその有無と立上がり、立下りがラジオボタンでオフセット値指定がマウスの左クリックで選べます。


5.4 Distortion (歪測定機能)

・歪測定時の注意事項

 歪率の測定には周りの騒音に注意することは述べましたが、その他の注意事項をまとめておきます。

 マイクをスピーカに近づけて配置し、S/N比をあげること

 何回かのスィープを時間かけて測定し、安定したところでデータを取ること

 測定音圧は125dBSPLを超えないこと

 カーソルでの歪率値の読取は歪カーブにマウスを近づけると表示されます。

 右下のSP1,2のチェックボックスは現在の音圧レベルに2次、3次歪みがなる基本波レベルを表わしているようですが、紛らわしいのでチェックオフにした方がよいでしょう。
 
 できれば歪率は再生音量にも影響されますので聴感で平均値と最大値でも見ておくと実際的です。

 

5.5 Reverberation (残響測定機能)

・対象周波数の下限と上限設定

 残響時間は周波数により異なります。対象となる周波数での残響時間を見るために、その上下限を設定できます。

 上段のバーのつまみをドラッグすると限度周波数が変更され、間に対象周波数幅が表示されます。

 表示の右側の南京錠をクリックすると幅を固定して周波数を変動できます。再度クリックすると連動は解除されます。

 

 

5.6 その他

・グラフカーブの重ね表示

 重ね書きグラフを作成するにはデータを一旦ASCII形式で保存してから読み出します。メニューのAddedCurves>Add+を選択すると

グラフデータファイルの選択メニューが出るので表示するデータのファイルを指定します。

そうするとグラフカーブの設定ウインドウが開きます。



ここではグラフの色、太さ、表示周波数範囲、スムージング変更等の指定できます。

グラフが表示されない場合にはShowCurveのチェックを入れなおしてください。またOffsetのところではデータを変更せずにデータの表示ゲイン(上下)のみを変えてグラフを上下に移動させることもできます。決定後に最後にOKボタンを押してください。

 グラフは追加で何本でも重ね表示できます。また個別にメニューから削除もできます。

 

・ゲインと位相の同時取り込み

 シミュレーションなのでゲインと位相情報を同時に取り込みたい場合がありますが、その時はAddCurves>AddLIVECurveを選択します。 
 
 選択すると保存先を聞いてますので、それを指定すると次から自動的にファイル名をインクリメントして保存します。そのままにすると後で内容が解らなくなりますから、適宜ファイル名を変更しておいた方がよいでしょう。(ちなみに測定時の位相表示は右下のshow phaseチェックを入れると見られます。)

 このファイルはSpeakerWorkShop、rePhaseなどのシミュレーションに使用出来ます。

 

・音源までの距離測定

 タイムアライメントなどの測定のために音源までの絶対距離を測定する場合には、図のように並列に小型スピーカをマイクの位置に置きこれでトリガーをかける方法があります。

2発目のインパルスまでの時間に音速を掛ければスピーカまでの距離になります。サンプリング周波数からみて分解能は約0.025msecですから、測定距離分解能は約0.7cm程度になります。相対的な精度は取れるのでユニットの位置あわせなどに使えます。

実施例

マイクの固定方法の実施例

小型のスピーカをマイクの近傍に留めテスト対象のスピーカとパラにつなぎますが、レベル合わせのため音量を下げる必要があり、直列に数百ΩのVRを直列につなぎます。その状態で周波数特性(インパルス特性)を測定します。

 距離測定の応用

 この方法でマルチウェイのスピーカーのそれぞれのユニットまでの距離が測定できます。この例では小型の2wayスピーカのツィータ()とウーファ()の距離を測ってみました。

 スピーカまでの距離が実測67cmでしたので、音速348m/s(28)とする1.92mseccになり、測定の約1.9msecと大体合っていることがわかります。(厳密には表示数値は最初のピークからの時間なので、より正確に起点の波形の立上り時間で見れば約0.04msecプラスするべきです。実際はこれが参照スピーカまでの距離とほぼ等価になって相殺されています。マウス矢印は後合成です。)

 それぞれ波形の立ち上がりで見ると差分で0.03msec(約1cm)ツィータが早い(等価的に前に出ている)ようです。本来ならこの分ツィータを下げるなり、ディレイを掛けることにより位相を合わせる必要があります。実際に聞いてもこの効果はわかります。

例はツィータがドームの小型スピーカで、ユニット中央の高さで測定しているのであまり差は出ないようですが、ホーンスピーカなどでは結構差が大きくなり無視できない値になります

 ・演算機能

 周波数特性測定で高度な機能はメニューの「演算(MainCureve math)」があります。

これは

Normalize        基準値よりの偏差表示
Filter          特定の周波数特性を通過させた場合の結果表示
Sum           合計
Flip           反転
Offset          オフセット
Evaluate         上下限を設定して、その間に入るかどうかの判定
Thick traces       表示線を太くする
ShowEqulizer       イコライザーを表示
InvertCapturePhasePolarity 極性反転

などができますが、詳細は省略します。


  以上