筆者は無調音楽を誰かに教わった経験などなく、まったくの独学であります。学生時代、図書館から十二音技法の古い理論書を借りてきて、狭いアパートでは読む気になれなかったので、わざわざ海岸まで出かけて、読み終わるまでは帰らないという誓いを立て、潮風に吹かれながら強制的に勉強したのであります。
その後、無調音楽に対する筆者の興味は薄れてゆき、十二音技法も忘却の彼方へと葬り去ってしまいましたが、いま思い返してみると、あの頃の前衛的な作曲活動がまったく無駄だったとは思えないのです。
無調作品を書くには、古典作品を書くよりもはるかに「創意」が必要です。独学という試行錯誤の中で、筆者は「創意」というかげがえのない財産を、無調音楽から学ぶことができたと思っております。
2001年 著者記す