石祠


石祠(せきし)とは、石のほこらのことです。富士見町に多い形で、中に双体神や奇石が入っています。石祠は、小さいながらも一つのお宮なので、道祖神ばかりでなく神社の末社としても、よく見かけます。だいたい次の4つの屋根を知っておくと良いでしょう。

<切妻(きりづま)造り>
 二つの面を合わせた屋根で、切妻(=屋根の山型の断面)が見える屋根だと思えばいいでしょう。

<寄棟(よせむね)造り>
 四つの面を寄せあう形の屋根です。切妻が見えない屋根だと思えばいいでしょう。

<入母屋(いりもや)造り>
 寄棟造りに、切妻が入っているものです。したがって、屋根の途中で角度が変わっているように見えることが多いのです。

<宝形(ほうぎょう)造り>
 四つの面が、頂上の一点に集まるもので、上から見ると正方形のようになっています。てっぺんに宝珠(ほうじゅ)と呼ばれる丸石が置かれていることが多いです。

これらの分類を知っていると、街を歩きながら、あ、この家は寄棟造りだ、この家は入母屋造りだ、というように、家々の屋根を見て回る楽しみができます。そんなのを見て回って、何が楽しいんだと言われるかも知れませんが、そのくらいの余裕を持って街を歩きたいものです。だいいち、格安の趣味だと思いませんか。

それから、次の点も知っておくと良いでしょう。

<妻入り(つまいり)>
 切妻のほうが正面入口になっている形です。

<平入り(ひらいり)>
 平らなほうが正面入口になっている形です。

<流造り(ながれづくり)>
 入口に、屋根が張り出している部分を向拝(こうはい)といいます。平入りが向拝になっているものを「流造り」と言い、この形が富士見町に最も多く見られます。


左:富士見町 下蔦木。寛政十年(1798)。流造り。
中:富士見町 横吹。流造り。柱は細くて壊れることが多く、木で補修したものを時々見かける。
右:辰野町 上辰野。柱がないが、屋根が張り出した形になっているので、流造りと言ってよいだろう。なお、この石祠は永禄七年(1564)の、室町時代のものだという情報がある。

<直彫り石祠>
 石祠に、双体神を直彫り(じかぼり)したものです。


左:富士見町 池の袋。直彫り石祠の例。
右:茅野市 北山。石祠に鳥居が彫ってある面白い例。