安曇野では、自然石の表面に、鳥居や破風を掘り込んだものが多く見られます。
<鳥居掘込>
鳥居(とりい)は神社にあるのでおなじみでしょう。特に安曇野に多いのですが、諏訪でも少し見かけます。

安曇野市 豊科 細萱。享和元年(1801)。
<唐破風掘込>
曲線的な屋根です。

安曇野市 豊科 寺所。文化二年(1805)。
<千鳥破風掘込>
直線的な屋根です。

安曇野市 豊科 下鳥羽。文政四年(1821)。
以上は、円形中区の道祖神が流行する少し前に、多く造られた形ではないかと思われます。安曇野の道祖神は、盗難防止のためでしょうか、きっちりと年号が彫られているものが多いので、形の変遷をたどってゆくことができます。
<文字装飾掘込>
このように周囲に虫がはったような文字が掘り込まれたものも、安曇野特有の形と言えます。

安曇野市 穂高 柏原。安政六年(1859)。円形中区は、鳥居や破風の掘り込みよりも、少し時代が後のものが多い。
私は長いあいだ、龕灯中区の凸型が、いったい何を表しているのか不思議に思っていました。それで諏訪地方と安曇野の道祖神を見比べているうちに、やっと気がついたのです。唐破風の曲線が、龕灯中区と同じものだということを。

左:茅野市 玉川 穴山。
右:安曇野市 豊科 下鳥羽 上手。文政七年(1824)。
あくまで仮説ですが、「龕灯中区の起源は、唐破風である」と言ってもよいのではないでしょうか。