まとめ


以上、長くなりましたが、「さえの神、くなどの神、ちまたの神」などと呼ばれる日本固有の神と、「どうそじん、どうろくじん、たむけの神」などと呼ばれる大陸伝来の神が習合して、現在の道祖神信仰になっていったと考えられています。

まとめますと、道祖神信仰は、大きく分類して以下の3つの信仰が混ざったものと言ってよいでしょう。

(1)災厄の侵入を防ぐ神。(さえの神、くなどの神)
(2)子孫繁栄・五穀豊穣の神。(ちまたの神、やちまたの神)
(3)道ゆく旅人の安全を見守る神。(たむけの神、みちの神)

この3つを知っておくことは、道祖神の理解のためにぜひ必要です。異なる信仰が合わさってしまうことを「習合(しゅうごう)」と言いますが、道祖神信仰は、まさに“ごちゃまぜ”の信仰だということを、よく知っておいてください。


さらに、地蔵や庚申塔なども含めて、道端にある神仏の総称として「道祖神」「道の神」という言い方をすることもあるようです。岐阜・長野の県境にある野麦峠資料館で、道祖神がひとつ展示されていましたが、これを見る限り、岐阜では「道祖神 = お地蔵さん」という理解をしているのかな、と思います。


岐阜県 高山市 高根。

そもそも道祖神は民間信仰から出発し、「神」として日本神道の系列に組み込まれるようになったのでしょうが、仏教の地蔵の姿で作られることもありますし、神社の境内の片隅に置かれたりすることもあります。結局“ごちゃまぜ”というしかないのです。日本人の、宗教に対する寛容さ、いい加減さが表れているのでしょう。

そして道祖神の歴史は、これで終わったわけではありません。近世・近代になって、猿田彦や天鈿女と結びついていったように、今後もさまざまな信仰と結びついてゆく可能性があります。

道祖神と星占いが結びついた最近の例を見たことがあります。しかも、星占いの中でもマイナーな「十三星座占い」と結びついた例でした。


茅野市 車山。十三星座道祖神の中のひとつ。(へびつかい座)

突飛な例かもしれませんが、道祖神は野ざらしの神、だから屋根をつけてあげよう、という基本的な設計思想は、守られていると思います。