陽石・陰石


陽石は、道祖神の最も古い形と言われています。路傍に野蛮な姿をさらしています。


左:伊那市 長谷 溝口。陽石。
右:伊那市 高遠 片倉。あまり男根という感じの形ではないが、すじが入っているので、たぶん陽石として祀られたものであろう。

こういう石は、たぶん畑仕事や山仕事をしていて、きのこ状の石を見つけたときに、その形に神秘を感じて、持ち帰って道祖神場(さいとば)に置いたものだと思います。

中には、自然石ではなく、人工的に彫られたと思われるものもあります。


下諏訪町 久保海道。写真では分かりにくいが、「道祖神」と彫られているので、文字碑だと言ってもよい。

佐久・東御地方では、雪だるまのような形の陽石が、道祖神場に集められているのを見かけました。陽石というよりは、宝形造りの石祠の上の「宝珠」ではないかと思われるものも見受けられます。


佐久市 塚原。けっこうかわいらしい。同様のものを東御市や立科町でも見かけたので、この東信地方一体でポピュラーな形なのかも知れない。

富士見町では、石祠(せきし)の中に石棒を祀ってあるものを見かけます。これも、一種の陽石と言ってよいと思います。


富士見町 立沢。石棒と丸石を組み合わせて、男根を表現しているのだろう。

なお、陽石にくらべると、陰石のほうは、あまり数は多くないようです。


左:伊那市 高遠。陰石。茶碗のかけらが散らばっていたので、厄投げ(後述)に使われたのであろう。
右:佐久市 望月。