文字碑とくずし字


文字碑を見て歩くと、しばしば「くすじ字」に出会います。たぶん馬頭観音が、いちばん崩されている可能性が高いと思います。


左:箕輪町。右:安曇野市 豊科。どちらも馬頭観世音。
「馬」は「る」のように崩される。「頭」の字は、場合によっては原型をとどめないくらい崩されることがある。

くずし字辞典をひとつ持っていると心強いです。それから、大きな本屋さんに行くと、古文書(こもんじょ)の演習書が売られていますから、それを少し自習でやってみると、くずし字や異体字に強くなれると思います。

(筆者も、くずし字は自習しただけなので、そんなに読めるわけではありません。せいぜい読めるのは200文字くらいですが、その程度でも、石像物探訪には充分です。)


道祖神も、くずし字がよく見られます。ちゃんと読めるように楷書で書けばいいのに、と思うかも知れませんが、高名な書家の先生に頼んで字を書いてもらうことも多かったでしょうから、そういうものは、どうしてもくずし字になるのでしょう。

次の例は、「道」の字の原形をとどめているのは書き出しの三画だけで、特にしんにょうは、とても短く省略されてしまっています。「祖」の字も、つくりが「止」のように見えてしまいます。


安曇野市 豊科 上鳥羽。

次の例は、全体の半分が「道」の字で占められており、「祖」の字は極端につぶれていて、これで読めというのが無理な話です。「神」の字もかろうじて読める程度で、ずいぶんつぶれています。ですが、三文字がぎっしりと詰まった、渾然一体となった様子が、もしかするとありがたいのかもしれません。


伊那市 高遠 弥勒。