5) 上三声のつなぎ方


和声学では、各声部の独立性を、何よりも大切にします。したがって、次のようなものは良くないとされるのです。4つの声部が平行移動しているでしょう。

このような動きは、近代的な試みとしては行われますが、古典和声にはありえないのです。「連続8度」や「連続5度」の禁則があるからです。

次の例は、音を置き換えることで、連続8度・連続5度を避けています。

実際の曲では、こうやって連続を避けている例をたくさん見かけますが、和声学では「間接8度」や「間接5度」といって、やはり禁じています。

結局のところ、和声学と作曲は別のものなのです。和声学は厳格に学び、作曲は自由に行う、というのが本当のところです。ですから、「連続8度や連続5度の規則は、和声学の実習のためだけにある」のだと思ってください。

では、連続8度・連続5度を避けるため、常にびくびくしながら和声の実習をするのかといえば、そうではなく、具体的には次の4項目を心がけるのです。

<上三声の基本的なつなぎ方>

(1)共通音を保ち、ほかは最寄の音へ進ませる。ただし II → V の場合、あえて共通音を保たず上三声を下行させることが多い。

(2)共通音がなければ、バスに対して上三声をすべて反行させる。ただし V → VI の場合、導音は主音に向かう。

(3)重音配置からの進行は、跳躍のチャンスである。また II へ進むときも、跳躍できることが多い。連続8度・連続5度を避けつつ自己責任で進行させる。

(4)曲尾では、最高声部が主音で終わるようにする。そのために、あえて共通音を保たないことがある。その場合も、導音は主音に向かう。

結局、和声学は頭でおぼえても駄目で、熟練が必要なのですが、どんな熟練者でも、心がけているのはこの4つくらいだと思います。


解答例