27) 偶成


外音を使った結果、和音が成立しているように見えることがあります。これを「偶成和音」と言い、本書では和音記号にカッコを付けて示します。

上の例では、最初の IV は良いとして、他のものは、通常では考えられない進行になっているのが分かると思います。

  I は、進行規制音の扱いがおかしい。
  II は、弱進行をしている。
  VII は、用法のおかしい借用ドミナント。

偶成和音の中で、わりと多用されるのは減和音(減三・減七)です。これらは、何らかの VII と分析できるのですが、たとえば VII なのに II へ進まない、VII なのに III へ進まない、という現象が見られます。よって、分析が非常に厄介なものと言えるでしょう。

そこで初歩の人は、偶成と思われる“分析しがたい減和音”を、すべてΔ(デルタ)で分析してもよいことにしておきましょう。デルタは Diminish または Dominant の頭文字を、ギリシャ文字で表したのだと思ってください。

次の和声を読んでみて下さい。通常では考えられない和音を、偶成和音としてカッコつきで分析すればよいのです。初歩の人は減和音にΔを使ってもかまいません。

ところで、属七の第7音は、経過音が独立したものと見なすことができます。属九の第9音、導七の第7音は、倚音と見なすことができます。副七の第7音は、掛留音と見なすことができます。これが進行規制音の正体なのです。


解答
C: I (VII) I I | (VII) IV V | (VII) I (IV) II | (VII) V I
B: I (II) I | VII (III) VII | (IV) I | (VII) V V | I (VII) I | IV (VII) IV | (III) V V | (II) I

Δを使った解答
C: I (Δ) I I | (Δ) IV V | (Δ) I (IV) II | (Δ) V I
B: I (II) I | VII (III) VII | (IV) I | (Δ) V V | I (Δ) I | IV (Δ) IV | (III) V V | (II) I