和声学の禁則は、実習のためのものですから、あまり本書では扱ってきませんでした。こういう禁則があるということくらいは、知っておいてください。人によって見解が違うとは思いますが、ここでは大きく十七条にまとめてみました。
[1] 増音程進行を禁ず。
(ただし増1度進行はよい。倚音に達するものはよい。反復進行中はよい。)
[2] 7度進行を禁ず。
(ただし減7度進行はよい。倚音に達するものはよい。分散音としての7度進行はよい。)
[3] 複音程進行を禁ず。
[4] 上三声の離隔を禁ず。オクターブまでを限度とせよ。
(ただし、分散音による離隔がありうる。最高声部は旋律的必要によって離隔がありうる。)
[5] 第3音の欠如を禁ず。
(ただし、分散音による一時的な欠如はありうる。)
[6] 導音・付加音・変質音の重複を禁ず。
[7] 導音・付加音・変質音からの跳躍を禁ず。
(ただし、置き換えや分散音や倚音によって跳躍することがある。最高声部の導音が6度上行することがある。)
[8] 連続1度・8度・5度を禁ず。
(減5度に達する連続5度は問題ない。同一和音内の連続5度は一方が減5度ならよい。倚音に達する連続5度はよい。)
[9] 連続1度・8度・5度は、反行のものも原則として禁ず。
(ただし、反行連続8度は曲尾の外声に現れることがある。反行連続5度は内声で許されることがある。)
[10] 連続1度・8度は、倚音を挟むものも禁ず。
(連続5度は、倚音を挟めば許される。)
[11] 直行1度を禁ず。
(ただし、V → I でバスと導音に生じる直行1度は許されてよい。)
[12] 直行8度・5度は、外声で禁ず。ただし最高声部が順次進行なら許す。
(減5度に達する直行5度は問題ない。IV → V の半終止に生じる外声の直行5度は許されてよい。同一和音内での直行8度・5度は許されてよい。)
[13] 間接1度・8度・5度は、直行で和音の変わり目に達するものを禁ず。
(ただし、間接5度は斜行になるならよい。)
[14] 不協和の解決を、3度下行で直行重複してはならない。
[15] 不協和を1度へ解決してはならない。
(ただし、経過音が1度へ解決することはある。)
[16] 倚音・掛留音の上方に、解決音を置いてはならない。
[17] 対斜を避けよ。
(ただし N → V に生じる対斜と、減七・増六諸和音に達する対斜、バスの導音に達する対斜は、許されてよい。)