・・・さて。
少なくとも現行で発売されている新車以外はすべて「旧車」に当たるわけで、
何をもって「旧車」と定義するのかは難しいところであるが、私個人の意見としては  
その境界は1980年代中盤、と考える。
インジェクションがキャブレターに取って代わり、メーカーが空力なんぞを考慮して
美しくも面白くもへったくれも無いような車を造り出した頃。(これは現在も続いている。)
それ以前の車がいわゆる「旧車」に当たるのではないか、と自分の中で認識している。
むろん自分が生まれる前に出来た車などは記憶も思い出も無いわけで、
自分にとっての「旧車」の始まりは70年代の中盤に一世を風靡した「例の漫画」に
登場する車たち、になるのではあるが。


「旧車に乗る」と一語で言うのは簡単だが、実践となると多大な努力と忍耐を要する。
購入・維持はもちろんのこと、単に「運転する」だけでも様々な気を使う必要がある。

まず、車に乗り込む前。

1. 車の周囲を一周。タイヤのエアーが抜けていないか、変に車体が傾いていないかのチェック。
2. 車の下を覗く。ガソリンやオイル(エンジン・ミッション・ブレーキ)、冷却水の漏れがないか。
    ちなみに、オイル漏れはあって当然。それが許容範囲かどうか。    
3. エンジン・フードを開ける。目視、臭いをチェックした後エンジンオイルの量・質、
   冷却水の量(外からは見えないので懐中電灯で照らしながら)を確認。ベルト類のチェック。

ここで初めてエンジンを掛ける。
が、旧車は「キーを捻ればエンジンが掛かる」というわけにはいかない。

1. キーを「ON」にし、フューエルポンプを動かす。(電磁ポンプの場合)
2. キャブレター内にガソリンが入り、フロートが上がると流入が遮断される。その際のポンプの
   音の変化を確認。
3. アクセルを数回クランキングし、その陰圧で少量のガソリンを気化させる。必要であれば
    チョークを引く。
4. スターター・モーターを始動。

これでようやくエンジンに火が入るわけであるが、インジェクションと違い始動当初から理想的な濃度の
混合気がシリンダーに供給される筈がなく、このままだとすぐエンジンは止まってしまう。
従って、エンジンが安定して回りだすまでアクセルを煽ってやらなければならない。
回りだしたら回転数を一定に保持し、水温が60〜70度に上昇するまで暖機運転を行う。
その間に計器にてオイル・電圧のチェック。後ろに廻ってエンジン音や排ガスの色・排圧をチェック。

ここまでの行程にすべて異常が無ければ、ようやく走り出すことが出来る。
が、無事動き出したからといって決して安心は出来ない。なにせ相手は旧車、いつ止まっても
おかしくないのである。(事実過去に、天神北ランプの交差点のど真中でいきなりエンジンが止まり
クラクションの雨あられに晒されたことがある)
走行中は常にエンジンの音に耳を傾け(と言っても「防音」なんぞにこれっぽっちの考慮もなく造られて
いるから、エンジン音以外は殆ど聞こえない)、こまめに水温をチェックしオーバー・ヒートを未然に
防がなくてはならない。


現在まで約1年間、旧車に乗って経験したトラブルをいくつかご紹介する。

@ 突然停電!事件
    走行中、バッテリーキルスイッチが「勝手に」切れ、スロー・ダウン後停止。
A 超扁平タイヤ事件
    30年以上前のオリジナル・ホイールにリークがあり、気がつけばリア・タイヤの
    片われがぺったんこに。
B いきなり2気筒!事件
    走行中エンジンから異音、スピード・ダウン。キャブレターの調整不良が原因で
    プラグにカーボンが溜まり、いきなり4気筒中2気筒が死んだ。
C 旬のサンマ事件
    エンジン・ルームから「ジュージュー」と食欲をそそる音が。サーモスタットのゴムが切れ
    冷却水が漏れ、それがエキパイにかかっていた。
D 雨と涙と冷や汗事件
    旧車は基本的に電装系が弱い。遠征中雨が降りだし、ワイパーのスイッチを入れるも
    微動だにせず、歪んだ景色のまま走行した。

と、枚挙に暇が無い。


「そんな苦労をするくらいなら、新しい車に乗ればいい」という声が当然聞こえてきそうではあるが、  やはり旧車には旧車なりの何物にも換え難い魅力があり(というか今の車に何も魅力を感じない、と 言ったほうが正しい)、困難を乗り越える度に愛着も深まり、無事走り終えた後には例えようの無い  幸福感に浸れるのである。


・・・ちなみに私は、決っしてマゾヒストではない。
1973 LOTUS EUROPA SPECIAL TYPE74S
旧 車 放 談