歯の知識

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歯の数は標準では,子供は20本,大人は28本(親知らずを除く)です。
歯は外側が硬く,エネメル質で,中側が象牙質です。歯髄によって栄養供給されています。
セメント質 せめんとしつ cementum
《白亜質 cementum》
 ワニより高等な動物の歯根の表面をおおっている骨によく似た硬組織である.ウシ,ウマなどの草食動物では,エナメル質の表面に沈着することもある(歯冠セメント質).ヒトの歯でもセメント舌として,歯頸部のエナメル質の上に沈着することがある.
 〔発生〕ヘルトウィッヒ上皮鞘が歯根象牙質表面から離れて,網目状のマラッセ上皮遺残となると,歯小嚢内の間葉細胞が象牙質表面に1列に並んでセメント芽細胞に分化する.この細胞によってセメント質が形成される.厚さは歯頸部では薄く根尖部では厚いが,通常は20-150μm程度である.しかしなんらかの刺激,または無刺激でもセメント質肥大をきたすことがある.歯の組織のうちではもっとも小さいが,セメント質は歯根膜から栄養を受けているので,歯髄が死滅したり,抜髄されたりしてもセメント質や歯根膜・歯槽骨が生きているかぎり,歯はなんら不自由なく生きている歯としての機能を行う.しかしセメント質や歯根膜,歯槽骨などが生活機能を失うと,歯は齲蝕がなくても動揺しはじめ,ついには抜け落ちる.このように歯の硬組織には重要性は非常に高い.
 〔分類〕組織構造の差によって,無細胞セメント質,細胞セメント質,セメント前質,セメント芽細胞に大別できるが,研磨標本で観察できるのは前二者のみである.
 〔特性〕モースかたさ4-5度,帯黄白色で光沢がない.透過性が大きく,F,Clなどのイオンを吸着する.比重2.02-2.04,屈折率1.562-1.565で,複屈折性も強い.成人セメント質の無機質は45-60%で,報告者により差が大きい.残りは有機質と水である.無機質の大部分はヒドロキシアパタイトで,有機質はコラーゲン線維とムコ多糖類である.
 〔組織〕骨と同様にセメント細胞と細胞間質とからなるが,原生セメント質には細胞がない.細胞間質は基質と線維とからなる.線維はシャーピー線維と基質線維から構成されているが,後者は微細なヒドロキシアパタイトでおおわれているので,よい鍍銀標本などでしか,みることは困難である.
 〔骨との差異〕骨には血管があるが,セメント質にはない.このため歯根に適度な圧を加えると,歯根膜や歯槽骨の血流はわるくなり,栄養不良となり,破骨細胞による吸収を受ける.しかし血管のないセメント質は,この程度ではまだ吸収を受けない.牽引側の歯根膜では,骨芽細胞ができて,歯槽骨壁に骨の添加が起こる.このことが矯正歯科治療を可能にするわけである.(三好作一郎)