ツツガムシ[ツツガムシ科]
アカツツガムシの幼虫
(イメージ図)
ツツガムシ関連リンク
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生態 ダニの一種で,山間部から平野部の田畑,山林,草原,河原に生息し,人の皮膚に吸着した場合に組織液を吸う。フトゲツツガムシ,アカツツガムシ,タテツツガムシの幼虫は時としてツツガムシ病を媒介する。
特徴 かつて,秋田県,山形県,新潟県などの河川流域で発生する風土病とされていたが(古典的ツツガムシ病),戦後北海道や沖縄を除く全国各地で発生するようになった(新型ツツガムシ病)。ツツガムシ病はツツガムシが媒介するリケッチアによる感染症で,高熱と発疹,リンパ節の腫れなどが生じる。処置が遅れると死に至ることもある。平成14年に佐賀県では3人が感染した。
対処 有効な治療薬があるので,診断さえ誤らなければ恐れる必要はないが,ツツガムシ病は風邪の症状に似ているので,疑わしい場合(ダニの刺し傷があり,高熱・発疹が生じる場合)は早期に医療機関で診断を受け,抗生物質の投与などの適切な治療を受ける。
【ツツガムシ病体験記】
佐賀大学農学部の先生がツツガムシ病に感染されたことがあるということを聞き,インタビューをさせて頂いた。
Q いつ,どこで,どのような状況で感染したのか?
A 2001年の11月頃に,佐賀,長崎,熊本,宮崎,鹿児島各県でベニツチカメムシの生態調査を行っていた。佐賀県では神埼町の日の隈山で調査を行ったが,各県での調査に費やした時間から考えると日の隈山でツツガムシ病に感染した可能性が高い。周囲は落ち葉が堆積した森林の中で,調査中は地表に座り込んだりしていたので,そのときにツツガムシに吸血されツツガムシ病リケッチアに感染したのではないか。
Q ツツガムシに吸血されたことには気が付いていたのか?
A 刺されてすぐではないが,腰部にダニのものと思われる刺し傷があることには気が付いていた。痒みはほとんどなかった。そのうち治るだろうと思っていたが,徐々に黒ずんできて少し腫れが広がってきた。(ダニに刺された部分は皮膚が多少固くなり,傷口も確認でき,カに刺された場合と違う。)
Q 症状はどのように変化していったのか?
A ダニの刺し傷を見つけて1週間後位に熱が出始めた。風邪だろうと思い安静にしていたが,40℃近い高熱と夜寝れないくらいの頭痛が生じてきたので佐賀市内の内科医に診てもらった。内科医もたぶん風邪だろうという診断であったが,頭痛が特にひどく,体の至る所に小さな発疹も生じてきた。もしかするとツツガムシ病ではないかと自ら疑い,インターネットでツツガムシ病関 連のサイトを調べてみたところ,まさにツツガムシ病の症状に一致していた。当初内科医は薬にあたって発疹が出たのではと言っていたが,なんとか内科医を説得し,ツツガムシ病の研究も行われている佐賀県立病院の皮膚科の先生を紹介してもらった。(この間発熱して4日経過)
Q 病院でどのような治療を受けたか?
A 県立病院の皮膚科で診てもらい,すぐにツツガムシ病であると診断され入院した。治療ではテトラサイクリン系の抗生物質の点滴を2日間程行った。点滴を受けてから1日過ぎたあたりから熱も下がり始めた。ツツガムシ病に感染すると肝臓,腎臓など内臓の機能が低下することがあり,自分も肝臓の機能が正常ではなかったので,結局10日ほど入院した。
Q ツツガムシ病に対して注意すべき点は?
A 野外で活動する際には,皮膚が露出しない服装を心掛け,時々服を手ではたき吸着したダニ類をはたき落とす。活動後には入浴し衣服を着替える。また,ダニの刺し傷がないかも確認しておくとよい。
野外で活動する機会が多い人は,風邪を引いたかなと思った場合,熱以外に発疹やダニの刺し傷があれば,ツツガムシ病の可能性があるので,症状の経過,複数の医者の意見,インターネットや専門書からの情報をもとに病因を絞り込んでいくことが重要である。