楽 屋 う ら





「なんや、未来や人生についてばっかやな」

「行き詰まってるんでしょ、色々と。相変わらず、料理の腕イイね、服部」

「そうか?なら今度、魚料理食わしたるから、楽しみにしとけ」

「謹んで辞退します。名探偵〜〜こぉ〜んな根性悪と付き合ってると、性格歪むよ」

「んな事ねぇぞ。こいつ自分で市行って魚買ってきて、ココでさばくんだぜ?刺身旨いぞ」

「いい奥さんなるわよ、服部君」
           
「せやろ?工藤料理出来るくせに、横着してせぇへんからな、俺がたんと旨いモン食わしたらんとな」

「哀ちゃんまで苛める」

「んな事ねぇって。お前ぇ一度服部のさばいた刺身食ってみろよ。旨いぞ」

「ひどい、名探偵まで」

「黒羽、戯れとらんと、皿くらい用意しとけ」

「ハイハイ」

「んで、さっきの話しの続き。誰が、行き詰まってるって?」

「そりゃ当然、俺のファンのくせに、工藤の倖せが一番大事っつう、いい性格しとるココの管理人やろ」
                               
「ヘェ〜〜知らなかった、あいつ俺の倖せなんて、考えてんだ。骨の髄までお前ぇのファンかと思ってた」

「そりゃ考えてるでしょ。あの人アレで、名探偵お大事な人だからね」

「愛情表現がちょっと歪んでるのよね」

「そうそう、好きな相手は苛めたい、お子様心理が抜けてないんだよ」
                 
「でもやっぱ、そんじゃ服部ファンなんじゃねぇ?」

「名探偵?」

「根拠は?」

「んな事、視りゃ一目瞭然だろ。俺が服部にベタ惚れなんつぅ、救えない設定組んでんだぞ」

「事実じゃない」

「深く考えると、腹立つけどね。名探偵、服部に惚れてるから」

「そやそや、工藤俺ん事好きやろ?」

「バーロー」

「言葉に不自由ね」

「判ってるから」

「まぁ工藤は、俺だけやない、嬢ちゃんも、こいつも好きやろ?」

「皆、判ってるわよ。私達も、貴方が大好きよ。まぁ好きな意味も色々だけれど」

「まぁなんだね、管理人も、色々有るみたいだし。でも『人生とはなんぞや』なんて、悟れる性格してないよ」

「そりゃそうやろ?んな事悟れたら、俺等でこんな話し書いとらへん」

「ドライだぞ、あいつ。ドライすぎて感性ゼロだぞ。協調性ないし、共有感覚や感情ないし。よくアレでああいう仕事してるよ」

「生きる事は、自己死を乗り越えた所にしか存在しないって、明言してるからね」

「……プラトン主義……な訳ないか…」

「んな難しい事考えてないでしょ、臨床現場の応用。好きなのユングとニーチェって対極なんだから」

「『神は死んだニーチェ』と『神は在るのユング』その本質は神は在るか?」

「アホらし。ありゃこの世でその存在一番否定してるやん。宗教が紛争の大本だって、断言してるやろ」

「っのくせに、宗教もの好きだよねぇ。否定できるって事は、倖せな証拠」

「せやな、縋る存在が宗教しかないって国が、まだまだ多いんやからな」

「知識と臨床だと、当然臨床が勝るよな」
           
「そうでもないわよ。知識と臨床は連動してるから。知識のない臨床は存在しないわ」  

「嬢ちゃん言うと、説得力あるな」

「まぁ人生なんて人それぞれだかんな。同じに歩いてても、手を繋いで歩いても、自分の途を歩いてるんだ」    
「自分の途しか、歩けないんだよね…『生きる途』だからね」
                 
「だから、こうしてる俺達は、偶然で出会っても、一緒に人生って旅の道連れなんだ」

「貴方国語不自由なくせに、文学的な事も言えるのね」

「ほんま工藤の頭は捻とるな」    

「なんだよお前ぇら〜〜」

「コラコラ、クッション投げないの。食事前に埃立つでしょ?おいたしてると、土産に持ってきレモンパイ、切ってあげないよ」

「なんだよ、俺は餌付けなんてされねぇからな。まぁっちょとはレモンパイ勿体ねぇけど」

「……工藤、レモンパイに誘惑されとるんやない。黒羽、トースト焼いとけや。冷蔵庫にジャム入ってるから」

「マメだねぇ、全部お手製?このジャム」

「言ったでしょ?いい奥さんなれるって」

「俺明日から、ココきて食おうかな…」

「したら毎日、魚食わしたる」

「俺だけ特別メニューにして」

「和食メニューで、旅館の朝っつぅ朝食も、たまにはいいな、ウチいっつもトーストだからな」

「だからやっぱり名探偵は、服部に惚れてるって言われるんだよ。自覚ない?」

「姦る事姦ってて、自覚ない訳ないだろ」

「成長しちゃったんだねぇ、名探偵。毒気に当てられて」

「黒羽〜〜朝から工藤を下世話な会話に巻き込むんやない。ちゃっちゃと支度せぇ、ホンマに魚料理にしたるで」

「ダメよ、この人の方が、下世話な会話大丈夫なんだから。服部君の方が理性的」

「哀ちゃん、苦労してんだね」

「お前ぇらなぁ〜〜人をなんだと思ってやがる」

「嬉しいのよ、この人達」

「嬢ちゃんもやろ」
 
「哀ちゃん狡いよ」

「?っんだよお前ぇら、三人で判り合ってるんじゃねぇ」

「さっきの話しから続いてるの、貴方判ってないでしょ?人生って旅の道連れ。同じ途は歩けないけど、それぞの途で出会って重なって、そうして一緒に歩いて行ける。それが嬉しいって、そういう事よ」
                                 
「だからな工藤」

「どれだけ走ってもいいから、置いていかないでね」

「バーローお前ぇらなんて、バカでお人好しで、置いてったって、勝手に付いてきちまうじゃねぇかよ」

「そうよ、だから最初から連れてった方が、面倒はないわよ。回収する手間はぶけるし、忠犬も在るし」
                         
「ちょぉコラ、誰が忠犬や」

「…服部、自分で言ってるようじゃ、ダメダメだよ」

「お前ぇら、本当にバカだな……」

「懐かれた貴方の負けよ」







人はそれぞれの途を歩いている。
それは決して同じものではなくて、けれど重なる出会いに、共に歩く事は可能なものだ。
決して同じ途など歩けなくても、支えあう事は可能だ。
そうして人は生きているのだ。 

人生はゴールを目指して歩く長い旅。
重なりあう縁に、手を繋ぐ事はできても、誰一人、同じ途を歩む事は出来ない。人は皆、自分の人生を旅している。


君も
貴方も
見知らぬダレかも
        
そうと認識して、影響しあえる存在は、多くはない。
出会えたら、それはとても倖せな事なのかもしれない。
だからまず、出会った最初の言葉はこんな言葉。

「初めまして」

手を差し出して、一歩を踏み出して。ソコから始まる。

名も知らなかった君
そうして出会った君

大切な君達へ

たくさんの倖せが、君の上に降り注ぐ様に

希代の名探偵

そんな君に出会えて倖せだから

だから君に言うのは綺麗なこんな言葉

「ありがとう」