| 性感帯 act2 |
リョーマの自室の前に立ち、ノブに手を掛けた瞬間。カギが掛かっていたらどうするかな と思った桃城のそれは、杞憂に終わった。 「親父さん、出かけたぞ」 自分が階段を上ってきたことも、一瞬部屋の前で立ち止まったことも、リョーマにはすべ て判っているだろうに、リョーマは桃城に背を向け、ベッドの上で愛猫と戯れていた。 「帰ってこなくていい、あんなセクハラエロ親父!」 憮然としたリョーマの科白が、桃城の苦笑を誘う。憮然とするリョーマとは相反し、桃城 の姿を見つけたカルピンは、リョーマの腕から飛び下りと桃城の足下に戯れ付いた。 「タヌキ、元気にしてたか?」 小さい温もりを抱き上げると、桃城は自分に背を向けベッドの上に座っているリョーマに 近付いて行く。 「怒るなって」 「あんた何そんな平然としてるわけ?どうせ親父から聴いたんでしょ?機嫌直しとけとか なんとか」 「流石親子だな」 玄関での会話が、広い越前家の二階のリョーマの自室まで、丸聞こえではないだろう から、父親の言動を理解しているリョーマに可笑しくて笑った。所詮親子で似た者同士だ。ただリョーマに自覚が薄い、その程度の差だ。 「あのセクハラ親父が、俺に何したか判ってて言うわけ?」 腕から出て行ってしまった愛猫に、カルピンの薄情物と、理不尽な悪態を付き、リョーマ は未だ桃城に背を向け続けている。 「何された?」 精悍な面差しに深い微苦笑を刻むと、桃城はソッと足音を消し、リョーマの背後に近寄る と、 「俺の所為だから、責任とれって言われたぞ?」 自分に背を向け憮然としている華奢な躯を背後から緩やかに腕細い腕ごと包むように 閉じ込めると、情事の最中の最中の低音で、耳朶わ甘噛み囁いた。 「桃先輩…」 「ったく、俺が部屋に入ってきて、初めて呼んだな」 「んっ……」 吐息を吹き掛け、耳朶を甘噛み囁けば、リョーマはあっさり陥落する。腕の中の躯から、 一挙に力が抜け落ちたのが桃城には判る。 「親父さんなら、此処までだろう?」 囁きながら、腕の地からをゆっくり締めて行く。 「やだ…桃先輩……」 「リョーマ」 「ダメ!」 濡れた音を立て、耳朶からゆっくり内側へと這う舌の感触に、リョーマの躯は細い背を 桃城の胸板に預けていく。 「リョーマ」 「や…やだ…」 頑是なく細い首を打ち振れば、黒髪の合間から白すぎる項が垣間見え、その様は、何 処か煽情的だった。 「本当、お前耳敏感だな」 クツクツ笑うと、桃城は耳から項へと舌を這わせていく。 「やだ…桃先輩…今は…」 耳が良く音感もよいリョーマは、桃城の低音にひどく弱い。情事の最中でしか呼ぶことを 許していない名前を囁かれれば、簡単に力が抜けていく。 「親父さんに、何処までされた?」 項に濡れた感触を与えながら、同時に痛感を与えれば、白絹の肌に淡い色が付く。 「あっ…ん…やっ……」 躯を捩り、なんとか桃城の腕から逃れようとしても、昼間から情事の最中の声で、自分 の名前を呼ばれたら、リョーマに抵抗の余地は少なかった。それはリョーマ自身自覚して いることの一つでも有る。認めたくないことではあったが、リョーマは桃城の低音に弱く、 そして自分の名前を呼ばれることにひどく弱い。以前声だけで、イカされてしまったことも ある程だ。 「また、声だけでイクか?」 リョーマが自分の声に弱いのを知っているから、こんな時の桃城は、際限なくその力を 発揮することに躊躇いを見せない。時にはひどく意地の悪い男に変貌するのだと、リョー マは知っている。そしてそんな部分で求められてしまうこともが、快感に繋がってしまうこ とも、教えられている。 「やっ…やだ……」 「ママァ〜〜〜」 「カル……!や…ダメ…!」 放置されてしまった愛猫が、足下にすり寄ってきたのに、リョーマは忘れていた記憶が 再現した。 「また、タヌキ混ぜてするか?」 ゆっくりリョーマの膝に手を掛け、少しだけ開かせると、リョーマは小作りな頭を遮二無二 揺すり立てた。 「変態!あんたも親父と変わらない変態!」 そんなことは、冬のあの夜だけで沢山だと、リョーマはゆっくり締め付けられていく桃城 の腕の中、抗いを繰り返す。 「ホァラ〜〜」 キョトンと、二人の正面で小首を傾げ見上げてくる愛猫に、リョーマは嫌々と頭を振り乱 す。 桃城がスキー教室から帰宅した2月の夜。リョーマはこのベッドの上で、愛猫を交え、痴 態に乱れきってしまったのだ。 「や…!カルピン!やだって……向こう行ってろ」 長毛がハーフパンツから剥き出しになっている下肢に触れ、敏感な肌が粟だった。 けれどリョーマの賢明の抗議の声は、当然人語を介さない愛猫に、通じる筈もない。 「可愛い子供だろ?」 項から再び耳朶を甘噛めば、ビクンと細い躯が顫えるのが判る。手を掛けた膝を、賢明 に閉ざそうと無駄な抗いをする白い下肢は、何処か雄を挑発する煽情さが滲んでいる ように桃城には見えた。 形よい膝をやんわり撫で、ゆっくり内股を撫で上げていけば、幼い躯はビクビクと反応す る。 「本当、敏感だな」 内股から膝をやんわり撫でる仕草を繰り返し、片手で抱き込めてしまう華奢な躯を更に 胸板に寄り掛かるように引き寄せれば、リョーマは抗いながらも桃城の動きに従順になる。 自分から挑発して誘う面では何処までも勝ち気で、時には娼婦のような淫猥さも見せる というのに、桃城から仕掛けられる突発的なこんな事態に、リョーマは極端に弱くなる時 がある。 「カルピン…やだ…桃先輩…どけて…カルピン退けてよ」 急速に熱を帯びる躯。内側から表面に突き出してきそうな熱に、リョーマは緩慢に首を 振ると、桃城の胸板に背を預けきり、足下にすり寄る愛猫に視線を移す。 「タヌキ、またママのミルク飲むか?」 何処か淫猥な声で笑う桃城に、リョーマはビクンと顫えると、更に片足を愛猫の前で開 かれて行く。その淫らさに、嫌々と頭を打ち振った。 「ママァ〜〜〜?」 「タヌキの鳴き声、やっぱ『ママ』って呼んでないか?」 近頃どうにも、リョーマの愛猫の鳴き声が、『ママ』と聞こえて仕方ない桃城だった。 「ママのミルク欲しいって、お前どうする?」 クツクツ嗤う桃城の声に、リョーマはその時初めて桃城を振り返った。 色素の薄い綺麗な空色が、快感に溶け初めてはいたものの、その勝ち気さは健在で、睥 睨する眼光が桃城を凝視する。 「変態…ん…」 けれどリョーマは知らないのだ。白皙の貌に血の色を透かせ、睨み付けてくる眼差しが、どれ程男の嗜虐を煽情してしまうかなど。悪態を叩く口唇は、半瞬後には桃城の口唇に 塞がれ、舌が絡み取られる。 「んっ…ぅんん…」 角度を変え、縺れ合うように貪婪に舌を絡め合う。リョーマの口内に生温い桃城の唾液 が流し込まれ、白い喉がコクリと鳴る。その合間にも、桃城の悪戯な手はハーフパンツか ら剥き出しになっている白い下肢の、膝から内股を撫でている。 敏感になっていくばかりの肉体を弄るその動きは、玩弄と言うより、戯弄だろう。けれどリョーマが桃城の舌戯を半瞬の躊躇いもなく受け入れ、舌で番う程に貪欲に求め合って いる今、それはむしろ嬉戯に変化してしまったのかもしれない。 リョーマの下肢は、白いシーツに波紋を描きながら、焦れた様子を伺わせ、緩慢に動く。 背後から桃城に抱き竦められ、桃城も高まっているのが細腰に伝わり、それは更にリョー マの熱を増長させる。 「あっ……やっ…」 下肢を這う桃城の掌中が、細い躯のラインを伝い上がり、それは一番触れてほしいだろ う場所を綺麗に避け、腹部を撫で上がりながら、胸を弄って行く。 リョーマは寒がりなくせに、室内に居る時は結構薄着だ。 今も桃城がリョーマの部屋に置いてある、赤というより、若干くすんだ蘇芳色のシャツを着 ている。それはリョーマには一回りは大きいものだ。 大きいシャツの裾から、アンダーシャツを着ない肌に触れ、桃城の大きい掌中は、腹部 から胸を往復する。 「んっ…んんっ…やっ…」 明確な刺激を与えられない躯は焦れ、切なげな貌が身悶える。それでも、未だ二人を キョトンと見ている愛猫の前で、我を忘れ乱れてしまう自分を、昼間から真っ正面で見せ たくは無いリョーマだった。それでも、そんなリョーマの意思など、桃城の曖昧さを含む愛 撫の前では、大した時間も掛からず、陥落するのもいつものことだ。 「親父さんに、此処までさせたか?」 幾ら息子への愛情表現が世間様から外れているとはいえ、南次郎がリョーマに仕掛け る悪戯が、度を越さないものだと知らない桃城ではなかったから、これは完全にリョーマ を煽る科白でしかなかった。 「させてたら…どうするのさ」 貪婪に番っていたにも関わらず、桃城はあっされ開放した口唇に執着など見せず、再び 舌は耳朶を甘噛んでいる。 「あんたしか知らない場所、あんたに開発された性感帯、確認されてたら、あんたどうする の?」 吐息で喘ぎながら、それでも勝ち気な性格は健在だ。 「お前に、そんなことできる筈ないだろうが」 「なんで…」 「お前が前に言ったんだろうが」 七夕の夜。戯れに任せてリョーマが吐き出した激情を、桃城はちゃんと覚えている。 彦星に逢いに行く織り姫を乗せて天の川を渡る船。もし織り姫の躯を差し出さなければ、天の川を渡さないと言われたら、リョーマは南次郎とそんな下らない会話をにしたのだと、桃城は七夕の夜、情後の気怠い気配に埋没した時、リョーマに聞かされた。その時リョーマは自ら言ったのだ。桃城に以外に犯されるなら、相手を殺して逢いに行くと。そんなリ ョーマが、悪戯を超えた範囲の行為を、父親に許す筈もない。 「第一お前にそんなことしたら、親父さんが今頃向かう場所は、地獄か天国だろうな」 「…悪党…」 すべてを見透かし嗤う桃城に、リョーマは舌打ちする。それでも躯は煽られ、細腰の奥 の奥に濃密な熱の塊を感じる。それは吐き出したいと、浅ましく腰を顫えわせて行くばか りだ。 「声」 耳朶を甘噛み吸い上げると、夕暮れを移す室内に、細い嫋々の嬌声が響く。 「声だけで、イケよ、リョーマ」 「んんっ……!」 「リョーマ」 「嫌…呼ばないで…」 「感じるだろ?」 ホラッと、顫える細腰に下腹を密着させれば、ジーンズの上からでも、桃城の昂まりをダ イレクトに捉えてしまい、リョーマは益々甘い懊悩に恫喝される。 「コレが、お前の中に入るの、想像してみろよ?」 コレと、押しつけると、眼に見えリョーマが顫えるのが桃城には判る。雄の嗜虐を煽情す る被虐さが、こんな時リョーマには滲んでしまう。それはリョーマ自身無自覚な分だけ、桃 城により教えられた女の部分なのだと思えば、桃城も男だ。幼い躯を開き、官能の深さに 埋没する術を教え込んだ罪悪と同時に、雄の身勝手な傲慢さも感じてしまう、二律背反を 自覚する。 「お前の中、掻き回して、お前の気持ちいい場所擦ってる俺の」 其処で桃城は一旦言葉を途切らせると、弱々しく抗う躯を引き寄せ、耳朶から内側に口 唇を寄せ、 「ペニス」 低く甘い声で、淫猥に囁いた。瞬間。 「だめぇぇ……」 ヒクリと、リョーマの躯が顫え上がる。 桃城の雄が胎内を押し開き、奥へ奥へと埋没するあの感触を、リョーマは否応なく脳裏で は無く、肉の内側で反芻するように思い出してしまい、濃密な射精感が細腰を熱くし、喘ぐ ように身動きする。先走りの愛液が、下着を濡らしていく感触が生々しかった。 ちょっと前までは、深まる秋の夕暮れを映す茜の空が見えていたのに、今は夜の気配 が窓の外には広がっている。明かりのない室内は、薄暗い気配に閉ざされていく。 「お前、全身性感帯だもんな」 甘く笑う声が、リョーマの聴覚を否応なく刺激する。情事の最中の桃城の声は、日常の 声より若干低く、深みのあるバリトンに変化する。 桃城の大きい掌中が粟立つ肌を丹念に撫で、それは敏感な胸へと辿り着く。ゆっくり脇 を撫でながら移動する指先の感触に、リョーマの鼓動は期待に早まって行く。 敏感に飛び出している乳首を避け、桃城の指は嫌になる丹念さで、屹立を増す周囲を 撫で、突然それは屹立する先端を摘み上げた。 「ヒィッ!」 人の手の温もりに囚われてしまった小魚のように、リョーマの細い躯はビクンと跳ね、掠 れた声が、夕暮れから藍色の夜へと移り変わる室内に、細く響いた。 「あっ…あっ…あぁんっ……」 鋭敏になりすぎている乳首の先端を爪先で挟み込まれ、摘み上げられ擂り潰すように 刺激されては、リョーマはたまったものではないだろう。 「リョーマ」 「桃先輩…桃先輩……」 「どうしてほしい?」 「触って…」 「何処をだ?」 桃城は抱き竦めているリョーマの腕を開放すると、顫える腕が、桃城の腕に伸ばされる。 桃城の腕に触れ、躊躇いを覗かせるリョーマに、桃城は苦笑する。 情事の最中、奔放に振る舞うリョーマは、桃城には見慣れたものだ。それこそたった一人 の男の娼婦だと言い切ってしまう勝ち気さがリョーマにはある。だからこんな局面で、らし くない躊躇いを覗かせるリョーマを視るのは、桃城には案外物珍しいものだった。 「どした?」 「……カル……」 構ってくれない二人に拗ねた様子で、愛猫はリョーマの枕の上で眠りに入っている。 「タヌキが恥ずかしがる程、しようっていうお前にしちゃ、珍しいな」 実際いつものリョーマなら、カルピンが室内に居ても、桃城との情事に影響などなかっ た。けれど今日は夕方からする気もなく、流されてしまった感が拭えないリョーマにしてみ れば、些か愛猫の目の前で情交に及ぶには、多少なりともの羞恥が湧いたのかもしれな い。 「そんなこと、考えられなくなる程、気持ちよくしてやるよ」 桃城の腕が、下腹部に伸びる。 「ぁんんっ!」 脱がされることもなく、パンツから上から刺激される愛撫は、いっそその方がリョーマの 羞恥を煽るものだった。 「あっ…そっ…そんな…桃先輩…ダメ…イク…」 もう十分に昂まっているリョーマは、明確な刺激を与えられ、今にも達してしまいそうだ ったが、桃城は今日に限り、直接的な愛撫をしないのか、それはパンツの上からの愛撫 にとどまっている。 「イッちゃぅ!」 このまま達してしまえば、下着もハーフパンツも残骸になる。その淫らさに、リョーマは嫌 々と頭を振り乱す。けれど桃城は素知らぬ顔で、パンツの上から幼い熱を玩弄するだけ だ。 幼い自分の熱を玩弄する桃城の長い指が、嫌に鮮明にリョーマの視界に入り込む。 その淫猥さに、眩暈さえする。 「桃先輩…桃先輩…」 背後の幅広い肩口に頭を預け、嫌々と細い首が動けば、白い喉元が淫らに浮き上がっ て見えた。 「リョーマ……」 桃城は細い首筋に顔を埋め、茱萸の実のように屹立している乳首と、ハーフパンツの上 からでも判る、痛い程昂まっている幼いリョーマ自身の両方を玩弄しだした。 「あっ……もぉ…ダメ…」 下着も脱がされることなく達する淫らさに、どれだけ抗っても、所詮桃城の愛撫の前にそ れは無駄だと判らないリョーマではない。桃城に触れられれば簡単に熱を孕む淫らな肉 体は、たった一人の男に開発されたものだ。 キスもセックスも、もっと深いものも。雄を受け入れる苦痛も、苦痛を通り越した場所に ある快感の深さも。愉悦に埋没する心地好さも。生温い泥沼に漬かり込む快美も、すべて 桃城というたった一人の男に教えられたものだ。殺めたい程、恋しい恋情も何もかも、こ の男に教えられたのだと、リョーマは喘ぎながら、半瞬赤く濡れる口唇が忍び笑いを漏ら した。 「お前…そんな顔、親父さんに見せるなよ」 肩口に頭を預け、のけ反っているリョーマの血の透けた淫らな貌。そしてその紅脣に浮 かんだ、日本人形のような意味深な忍び笑い。それこそリョーマがいつも情事の最中、桃 城にだけ見せている娼婦の貌だ。 綺麗で妖冶で、桃城の内側から罪悪を引き出すそれは、まるで、何処まで穢がしても、 誰の手垢もついていないかのような、清純無垢な処女性と、血濡れた娼婦性を連想させ る、双極の貌をしている。そんなアンバランスさが、リョーマの魅力に化けているが、それ は同時に、幼い胎内に雄を受け入れる術を教え込み、内側から開かれ達する快感を植え 込んでしまった、桃城の罪悪の在処でもある。けれど当然桃城に、後悔などある筈もない。 「さぁね?」 クフフと笑う紅脣が、桃城の眼球の中核に伸びる。 「んっ…もぉ…」 淫蕩に耽る貌を曝しながら、リョーマは切なげに喘ぎ、桃城の掌中に腰を押しつけ揺す り立てる。 「俺を、女にしたの、あんたなんだから」 もぉダメと、リョーマは不意に桃城の掌中に自らの手を重ね、更に自身に押しつける淫 猥な仕草をみせると、桃城は苦笑する。これこそリョーマだと不意に思うから、所詮感じる 罪悪など、微々たるものなのかもしれない。 「性感帯なんて生温い、俺をあんたにしか発情しない雌にしたのは、あんたなんだから。 あんたとセックスすることしか考えられない生き物にしたんだから」 忙しい呼吸の狭間で、奇妙にハッキリとした声が、桃城に向かって放たれる。 「あぁんっ…イク…イッちゃ…ぅぅ!」 桃城の手背に自らの掌中を重ね、自身に押しつける恰好でリョーマは細腰を喘がせ、 白い喉をのけ反らせる。白い内股を顫わせ、喜悦に歪んだ貌は、何処までも放埒な娼婦 の姿だ。 絶頂を告げる悲鳴にも似た嫋々の嬌声が、すっかり夜の気配に埋もれた室内に、生々 しく響いた。 「んっ…んっ…ぅんん…」 「リョーマ……」 桃城の掠れた吐息が、ベッドサイドの光量が支配する仄かな闇の中で漏れる。節のあ る指が、股間で浮き沈む小作りな頭に伸びた。 「んん…」 名を呼ばれ髪を梳かれれば、リョーマは口内に咥えた桃城を吸い上げる。 「越前…」 突然肉棒を生温い口内の喉の奥で締め付けられるように吸い上げられれば、思わず達 してしまいそうになる桃城だった。 リョーマが淫蕩に耽溺した眼差しで桃城を見上げれば、桃城は精悍な貌に色濃い情欲 を張り付かせていて、リョーマの雌を満足させた。 今のリョーマの恰好は、ひどく淫猥なものだ。桃城の蘇芳色のシャツだけを羽織り、射精 で濡れたハーフパンツと下着は、無造作にフローリングの床の上に放り出されていた。 そしてリョーマのベッドでスヤスヤ眠ってしまった愛猫は、今は定位置のクッションの上だ。そして今までカルピンがいた場所に、桃城は座っていた。 「淫乱、だな」 喉を鳴らし、桃城は呻く。生温いリョーマの口内に思う様しゃぶられては、桃城とて既に 限界が近いのは当然だろう。 滅多に奉仕など強制しない桃城は、当然今夜もそんなつもりは微塵もなかった。けれど リョーマは頑なだった。 こんな時のリョーマは、到底自らの欲を満足させなければ、機嫌など直らないことを、桃 城はよく判っていたから、拒める筈もなかった。 今のリョーマの恰好と言えば、これ以上ない程淫猥なものだろう。元々一回りは大きい 桃城のシャツは、今はボタンが外され羽織っているだけの状態だ。そして細腰を高く上げ、ズボンの前を寛げた桃城の股間に顔を伏せている。薄闇の中、白い双臀が挑発的に浮 かび上がっている。 「そうしてると、天性の娼婦って感じだぞ」 「俺を雌にしたあんたが、無責任なこと言わないでよ」 桃城の科白に、リョーマは伏せていた股間から顔を上げ、熱に浮かされた冶容さで桃城 を見上げた。普段は色素の薄い口唇が、血を吸ったように濡れている様は、ひどく煽情的 だ。 リョーマは陶然と笑うと、再び桃城の股間に綺麗な顔を伏せる。 「越前、もういい」 生温い口内に含まれ腰が浮く。けれど当然リョーマが行為をやめる筈などない。この行 為がリョーマにとって、今主導権を握っていると判っているからだ。結局これは。リョーマ の報復なのだと、気付かない桃城ではなかった。 最初こそ、リョーマに口戯の術はなく、したいと言った時も、自分が桃城にされている愛 撫を思い出しての拙いものだった。けれど桃城はそれでも十分感じることができたのは当 然だろう。そんなリョーマも、1年半も付き合っていれば、幾ら桃城がリョーマに対してオー ラルをしたがらないと言っても、勝ち気なリョーマがおとなしく引き下がってばかりはいな かった。一体何処で覚えたんだと、桃城が心配になる程、リョーマは舌淫が上達していた。 唾液をたっぷり含んで先端から舐め、括れからゆっくり根元へと向かう舌の動き。時に は甘噛み、時には口内で締め、淫猥な音と、喘ぐような吐息を漏らし、リョーマは桃城に 愛撫を加えるのに余念がなかった。 「んっ…んっ…ぅん…」 「越前…」 小作りな頭が、股間で上下しているその淫靡さ。まして正面には、白すぎる双丘が惜し げもなく曝されている淫猥さだ。 「お前…親父さんに変なビデオでも見せられただろ」 桃城は今にも射精してしまいそうになりながら、正面で揺れる双丘を撫で始めた。 「ぅんんっ……」 そうすると、リョーマは目線だけで妖冶に笑ったのが桃城には判った。そんなものを親 子二人で観ていて、今更性感帯云々で拗ねるなと思ったのも、一瞬のことだった。 濡れた音と、喘ぐような吐息で桃城を含むリョーマの口内で、桃城は達していた。 「ごちそう様」 呻くように達した桃城自身から顔を離すと、リョーマは姚冶な気配を滲ませ、紅脣を濡ら す粘稠の白い液体をペロリと舐め上げて見せる。 「ねぇ?桃先輩、あんたしか知らない俺の性感帯、気持ちよくしてよ」 リョーマは細い腕を桃城の首に回すと、淫靡に笑った。 それは娼婦の放埒さを滲ませながら、何処か無垢な処女を連想させる笑みだった。 気怠い躯を桃城の腕の中で顫わせなから、リョーマは半身を起こし、真上から桃城を見 下ろした。 「嫌だったのか?」 結局激しく求めあってしまった若い躯は、1度や2度でその情欲がおさまる筈もなく、気 付けば時間は既に夕食の時間を通り越していた。既にシーツも二人分の、何度とも知れ ない愛液を含み、残骸に等しくなっている。 「耳だけとか言ったら、殺すよ」 熱に浮かされた陶然さで、リョーマはクスクスと可笑しそうに笑う。白皙の貌は未だその 熱を肉の内側に滲ませていることを曝すように、うっすら血が透けて見えた。 「あんたしか知らない場所に手ぇ出されて、親父に蹴りいれる程度で済ませたの、褒めて よ」 リョーマはやはりクスクス面白そうに笑うと、スゥっと綺麗な造作を桃城に突き出した。 「ねぇ?桃先輩」 「ん?」 真上から見下ろしてくる綺麗な輪郭を、桃城の掌が包み込む。包んだ輪郭は、桃城の 大きい掌の片手で包めてしまう程小作りだ。 「あんたも知らない俺の性感帯が、もう一つ有るんだけど?」 その瞬間、今の今まで妍冶な気配を滲ませ笑っていた貌が、反転する。今は悪戯を思 い付いた、子供のような貌だ。 「俺も知らない?」 そんな場所有るか?桃城は首を捻ると、繊細なラインに内取られた輪郭から、ゆっくり 後頭部に腕を回して行く。 「ヒントは?」 「ナシ。ちゃんと考えてよ」 後頭部に回った桃城の掌が、ゆっくりリョーマを引き寄せる。その仕草に、リョーマが抗 うことはなかった。 「判らないの?」 甘い吐息が桃城の耳朶を擽って行く。 「判らないな……何処だ?」 リョーマが全身敏感で、そんな中でも特別に感じる場所は限られている。そんなことは、 幼い胎内を開いた桃城が、誰より判っている。だからそれ以上の性感帯など、桃城は当 然知らない。 「まだまだだね」 仕方ない人、リョーマは溜め息を吐くと、細い指が桃城の褐色の胸を這った。 「ココ」 リョーマは再び身を起こすと、左胸の心臓の上を、指先が正確に撫でていく。 「って、心臓か?」 情欲の色を纏い付かせてはいないくせに、奇妙に生温い気配をもたらす指が、胸を緩 やかに撫でて行くのに、桃城はリョーマを見上げ、繊細な貌を凝視する。 「莫迦だね」 リョーマはやれやれと吐息を漏らすと、 「心」 「お前」 臆面なく言うリョーマに、桃城は呆気に取られた。まさかリョーマから、そんな言葉が出 るとも思わなかったからだ。 「心の性感帯は、あんただけ。あんたじゃなきゃ、誰も触れない場所。テニスしてる時の、 俺が発情しちゃいそうな雄のあんたも、俺を莫迦みたいに慎重に扱う悪党のあんたも。 ココは、あんたにしか感じない、あんただけが触れることのできる性感帯」 その瞬間、リョーマは綺麗な貌を少しだけ切なげに歪めて笑った。 「ココは、あんたにしか感じない場所なんだから。忘れないでよ」 俺を殺すことができるのはあんただけ。 リョーマは泣き出しそうな貌で、桃城に口吻た。 |