| HERMAPHRODITE |
トサリと、ひどく軽い音を立てスプリングの効き過ぎたベッドへと下ろされた瞬間、淡いピンクのドレス がフワリと舞った。まるで揺籃のような天蓋付きの豪奢なベッドは、軽すぎる躯を柔らかく受け止める。 ベッドの上に降ろされたシエルは、見下ろしてくる赤い双眸を見ていた。 見詰めるというより、ただ視ていると呼んだ方が似つかわしい蒼と翠の宝玉。感情の波一つ見出だせ ないシエルの瞳を見詰め、セバスチャンが静かに口を開いた。 「怖くなかったですか?」 「何がだ?」 静邃とさえ思える声音に、シエルは本気で何を言われたのか意味不明の様子で、少しばかり小首を 傾げた。その瞬間、サラリと長いままの髪が揺れる。 「子爵にあんな場所に監禁されて」 「それが何で怖いんだ?」 本気でお前の科白は意味不明だと、シエルは僅かに攅眉する。そんなシエルの本気の視線に、セバ スチャンが内心で遠い眼をしたことを、勿論シエルは知らない。 「下種な男達の視線に凌辱されて、怖くなかったですか?」 「……機嫌の悪い原因はそこか?」 漸くセバスチャンの言いたいことが判り、シエルは小さく吐息を漏らした。 執着などないだろうに、妙な部分で悋気とも勘違いしそうになる部分を垣間見せる悪魔に、シエルは何 とも言えない気持ちを味わった。 「坊っちゃんの行き当たりばったりな行動は心得てますが、もう少し警戒心も持って頂かないと」 臨機応変と言えば聞こえはいいが、要は表層意識に伝達されるより先に、際立つ洞察力が行動を決 定してしまうのだろう。確かに手の内の駒を持つ以上、子爵の懐に飛び込んでしまう遣り様は最短コー スだろうが、躊躇いのなさは容認できない。 「何の為にお前が居るんだ?喚べば来るお前が居るのに、何でいちいち面倒な手順を踏まなきゃいけ ない?」 警察捜査でない限り、手続き上の面倒は何処にもない。ダンジョンだろうがテレポートだろうが、下さ れた命を解決できれば問題はない。むしろ今回のような事案の場合、集団ヒステリーに発展しかねな い市民感情を考えれば、手段を選んではいられなかった。時間を掛けず、尚且つ冤罪を生むことなく解 決できれば、最短であることにこしたことはない。被疑者検挙が最大の防犯である以上、それはたとえ 警察捜査でも同じことだ。 「坊っちゃんが私を喚ぶタイミングの問題ですよ。遅すぎれば、前回のような痛みを負う可能性もあるん ですよ?」 イタリアマフィアに拉致された時。シエルはかなり手酷い暴行を受けていたが、それでもすぐにセバス チャンを喚ぶことはなかった。それこそ刺客を追い、居場所を突き止め、相手に電話を掛けた際、初めて 喚ばれた。あの時電話をしなければ、どうなっていたのか?あの時最初からシエルが喚んでいれば、 刺客を追い、居場所を突き止める手間はなかっただろう。そしてシエルが痛みを負うことも、もっと少なく て済んだ筈だ。 「手間を惜しむな」 「手間と面倒を嫌って、無茶で無鉄砲な行動をなさる坊っちゃんに言われたくありませんよ。総じてそう いう行動を、行き当たりばったりと言うんです」 口調こそ柔らかいものの、言葉の中身は辛辣だ。 「坊っちゃんはつくづく、探偵には向きませんね」 「元から探偵になった覚えはない」 「名称はこの場合無関係ですよ。下される命に警察以外の場所で事案を解決する。そういうのを探偵と 呼ぶんです」 疑問と答えと消去。推理はその推論の積み重ねで構成されている。名探偵と呼ばれる人間は、恐ら く核心に近付く為の推論の組み立てが常人とは捕え方が違うのだろう。何より『識る』ということに尤も 貪欲な人種だ。 錬金の才を持つシエルもまた、際立つ洞察で推論を組み立てるのは巧みだが、下された命を解決す る以外の熱意は注がれない。そこが探偵と呼ばれる存在達と差異を分ける部分だろうが、実際頭の中 で行っている行為自体は、探偵のそれと同じだ。 そして古来から『識る』ということに貪欲な人間は、悪魔を召喚することにも慣れていた。 「事実は一つだ。だけどそれに張り付いている真実は幾重も存在する。そんなものを識りたいとは思わ ない」 だから自分は探偵にはなれないと、シエルは無機質な視線をセバスチャンに向けた。 「探偵が楽しいのは推理の過程だろう?要は死体が作り出されるまでの過程だ。僕はそんなものに興 味はない。推理が楽しかったら、お前を使って最短で解決しようなんて思わない。全部自分の手でする」 そう告げると、シエルは自分を見下ろしてくる冷ややかな眼差しに向かって、おいでおいでとヒラヒラ 手を振った。 幼い主人の幼い仕草。その意図が判らないセバスチャンではなかったから、背を屈めれば近寄れば、 威勢よく襟元のスカーフを引っ張られ、態勢が崩れた。 「僕を雌にしたのはお前だ。下種な男達の視線に凌辱されて、僕が気持ち悪くなかったとでも思うのか?」 あんなの犯されたのも同じだと、シエルが性質の悪い笑みを刻み付ければ、セバスチャンはその物言 いに少しだけ呆れ、ベッドの上に静かに上った。そうすれば即座にシエルの腕が、ねだるように首筋に 絡み付いてくる。 「雌とは、また随分な言い様ですね」 首に絡む細い腕に視線を向け、華奢な躯を引き寄せる。 「どう言っても同じだろう?」 「悪魔さえ陥落させる肉体を持っている坊っちゃんが、悪いんですよ」 幾人と契約し、幾人と関係したのか覚えてもいないが、シエルほど婬らな肉体を持っている人間をセ バスチャンは知らない。 「簡単に男達に触れさせて」 夜会でシエルを取り巻いていた男達の視線。 「紛らわしい言い方するな」 「触れさせていたのも、同じです」 ドレスの内側の幼い肉体。それを玩弄する妄想を視線に乗せ、シエルを見ていた男達。けれどシエル が一体何処までそれを理解していたかとなると、セバスチャンに明確な答えはなかった。 洞察力は鋭いくせに、そういうことにはどうにも鈍感な主人だ。下される命に集中すると、容易に視野 狭窄を引き起こす。それが総じて行き当たりばったり的な行動に顕れるから始末に悪い。 「子爵を誘惑しろと言ったのは、お前だろう?」 「手段は選ばないとお仰ったのは、坊っちゃんですよ。坊っちゃんがお好きな最短コースだから申し上げ たまでのこと。監禁されろとは言ってません」 抱き合う恰好で緩い抱擁に紛らせている言葉は、これから先に費やされる時間の睦言のようなものだ。 体温を感じさせない手袋を嵌めた指先が、卵の先端のような細い頤を掬い上げ、ゆっくりと口吻る。 「うっ…んっ…」 薄く開かれた口唇から忍び込んでくる生温い軟体のような舌。歯列の裏側から嬲られ、狭い口内を思 う様掻き回される。その合間にも長い指先がドレスの裾から入り込み、膝裏から内股までを往復する。 「んんっ……」 焦燥が湧く遣り様で内股を撫で回され、それがゆっくり脚の付け根へと伸びてくるのに、シエルの肌 が急速に粟立っていく。 内股を撫で回される感触に気を取られていると、残る片腕でセバスチャンは 器用にもドレスの胸元を下げ、ウエストを締め付けているコルセットの紐を緩めていく。 「やっ…、んぅっ…」 内股と華奢な細腰を撫で回され、半瞬口唇を解いて甘い悲鳴を零せば、それは再び今まで以上のき つさで塞がれる。 「んっ…、ッッ!」 ねっとり絞り上げるように吸い上げられる舌。同時に、敏感に屹立した胸の飾りを引き潰すように摘み 上げられ、細い躯がびくんと跳ね上がる。 濃厚なキスに耽溺させられていた合間に、ほっそりとした白い下肢は左右に押し開かれ、極自然とM 字に開脚される。レースをふんだんに使用した薄いランジェリー越しに、ヒク付く花莟を擦り上げられ、華 奢な躯がびくびくと顫え上る。 「やっ…!」 咄嗟にドレスの内側に潜り込んでいる腕を押さえ付ければ、逆に胸の飾りを痛い程摘み上げられる結 果になった。 「嫌、じゃないでしょう?」 ココはこんなに悦んでいますよと、体温を感じさせない手袋を嵌めたままの指先で、薄い下着の上か らひくひくとヒク付く双丘の奥を擦り上げる。そうすれば雄を咥え込むことを教えられた花莟が、喘ぐよう に収縮するのが伝わってくる。 「んっ…、んっ…っ、だ…めぇ…っ」 ガクンと崩れ落ちるように、細い躯が正面の胸元に倒れ込む。胎内の肉が婬らに蠢いていく生々しさ に、脳髄が浸食されていくようだった。 「気持ちいいですか?」 其処彼処を快感に顫わせている淡い肌。十二歳という成長途中の未成熟な躯は、けれどその未成熟 さが却って卑猥さを生み出し、男を誘惑する色香を滲ませる。それが男の嗜虐心を煽情してしまう被虐 美なのだと、きっとシエルは知らないだろう。 「んんっ…」 否定なのか、肯定なのか。揶揄を含んで問われた声に、シエルは嫌々と細首を振り乱す。 「ホラ、もうこんなに」 濡れてると、耳朶を甘噛みして囁けば、敏感な躯が腕の中でを顫え上るのが判る。下着の上から触 れた幼い性器は、もう下着を濡らす程に昂まっている。 「いやらしい躯になりましたね。こんなに濡らして」 「や…っ!イッちゃ…ぅ…」 下着越しにやんわり触れられただけで、強烈な快感が背筋を這い上がっていく。それは脳髄の深み から意思も意識も腐食させる生々しさを持っている。 「もうですか?未だ早いですよ」 目線の下、肩口に顔を埋めてびくびくと顫えている幼い躯。未成熟でありながら、男を知る抱かれ慣 れた躯は、そのアンバランスさがシエルの魅力に化けている。 クツクツ哄笑すると、長い指先を下着の内側に潜り込ませ、セバスチャンの悪戯な指は、喘ぐように綻 んだ花莟へと伸びた。 「やめ…っ!」 咄嗟に押さえ付けた筈の腕は、けれどシエルの非力な腕では役にも立たず、狭間の奥へと潜り込ん でくる指先に、肉の内側から突き崩されていく。 「だめぇ…っ!やっ…セバス…チャ…」 がくがくと引き攣るように、下肢が揺れる。 「気持ちよくして上げますから、もっと脚を開いて下さい」 「やっ…離……」 「今夜はそう簡単にイカせて上げませんよ」 「なんで……」 秘花を玩弄する指先は、円を描くように花莟の縁を撫でているだけで、ヒク付く奥へと未だ入ってはこ ない。涙に濡れた瞳を向ければ、セバスチャンは意味深に笑った。 「お仕置ですよ。簡単に男に触れさせた」 「…理…不尽…だ」 「なんとでも」 切れ切れの悲鳴じみた声で反駁してくるシエルに、けれどセバスチャンは優游と笑うと、白い首筋に 舌を這わせ、同時に秘花を嬲る指先を内側へと潜り込ませた。 「ひぁぁっ…!」 ズッ、と胎内に潜り込んできた指先に、細腰が跳ね上がる。けれど手袋越しの感触が嫌で、シエルは 嫌々と懇願するようにセバスチャンの肩口に顔を押しつけた。 「やっ…!それ…っ」 「それとは?」 シエルが手袋越しの愛撫を嫌うことなど、百も承知だ。肌を撫でる愛撫は構わないものの、脆い肉体 の内側に触れられる時、手袋越しではひどく嫌がるシエルは、いつも生身の愛撫をねだってすすり歔き を高くする。 「はず…せ…」 「外せば、いいんですか?」 クスリと哄笑すれば、敏感な柔襞が収縮し、指先をぎゅっと締め付けてくる。 「鳴呼、これでは無理ですよ。抜くも進もできません」 くつくつと嗤えば、それはいっそう顕著に反応し、涙に濡れた勝ち気な瞳が睥睨を向けてくる。 「そんな表情が、男を煽ってしまうんですよ」 「ひぁっ…っ!」 グッと根元まで指先を咥え込まされ、柔肉がそれを締め付ける。その感触がひどく婬らで、押さえ付け た腕に爪を立てる。けれどそれは逆に、男の嗜虐性を煽ってしまう被虐美にしかならないことを、シエ ルは知らない。 「ホラ、抜かせて下さらないのは、坊っちゃんですよ」 「やっ…!」 耳朶を甘噛み揶揄を落とされ、緩く胎内を掻き混ぜられれば、胎内は浅ましい収縮を見せ、嵌められ た指を食んでいく。 「あっ…、ぁあっ…っ!だめぇ…」 白い喉を淡い光の下に曝け出し、細い背が弓なりに撓う。悲鳴じみた嫋々の喘ぎを響かせ、シエルが 絶頂に達しようとした瞬間、胎内を掻き混ぜる動きがピタリと止まった。 「んっ…!んんっ…」 「言ったでしょう?簡単にはイカせてあげませんよ」 ブルネットの髪が縁取る繊細な輪郭。泣き濡れた頬に口唇を寄せると、快楽に顫える細腰をぐっと引 き寄せた。 「ひっ…っ!」 白いシーツの上を引き摺られ、セバスチャンを挟み込む恰好で否応なく開かれる下肢。胎内に指が残 されたままの動きは、柔襞を抉られる痛みをもシエルにもたらした。 「あっ…もっ…、や、…だぁ…っ」 熱く重い熱の塊が細腰の奥で澱んでいく感触に堪えきれず、シエルは細腰を揺すり立てる。 「んっ…んっ…ぁあんっ…」 胎内に咥えこんだ指を一番感じる場所に導こうと、シエルは躍起になって華奢な腰を揺すり立てる。 そんなシエルをセバスチャンは冷静に見ていた。 「坊っちゃんは淫乱な性質ですね」 雌と言うのなら、確かにこれ以上雌な行為もないだろう。器の性別と相反し、作り替えられていく内側。それを目の当たりにしてなお、それでもシエルの肌は、誰の手垢も付いていない気分にさせられる。 「あっ…セバス…チャ…もぅ…ほし…」 幼い肉茎から零れた愛液は、今は指を咥え込んでいる胎内にまで入り込み、それは腰を揺すり立て る都度、濡れた粘稠音を響かせる。その婬らさに羞恥が湧く一方、耳から入り込む婬らな有り様に、胎 内の奥が疼いていくのを、止められない。 「何処に、ですか?」 胎内に潜り込ませた指を大きく掻き回すと、セバスチャンは未練もなく指を引き抜いた。 「やっ…、だめ…っ!」 「こっちのおねだりの仕方も、教えたでしょう?」 妖冶な笑みを滲ませると、淡く色付く雪花石膏の肌を撫で上げる。ザワリと総毛立つように粟立つ肌 の敏感さに、セバスチャンは満足そうに笑った。 「あっ………」 「さぁ、坊っちゃん」 甘く低い声に促され、これから先の行為に対する羞恥と期待に、繊細な貌が白痴に歪む。 「欲しいんでしょう?」 長いままのブルネットの髪を柔らかく撫でると、シエルは陶然の態でセバスチャンを挟み込んだ下肢 から濡れきった下着を抜き取り、半瞬躊躇った後、ゆっくりと内股を開いていく。 それでも完全な羞恥は拭いされないのか、捲り上げられたドレスの裾で、露になった場所を隠してい る。その初さがセバスチャンを煽った。 「まったく、貴方は娼婦の手管をお持ちだ」 「…そ…な…しらな…」 細腰を脅かす熱の塊。吐精できない性器の先端から、とろとろと溢れていく粘稠の愛液。それがドレ スの上に鈍い染みを作り上げていく。 「私に抱かれ慣れた躯のくせに、決してその処女性も失わない」 だから時折、手酷く引き裂いてやりたくなってしまうのだと、シエルは気付きもしないだろう。 慣れた反応を返すくせに、誰の手垢もついていない。そんな娼婦と処女の二面性がシエルには存在す る。 「そのくせ、甘い蜜で男を引き寄せる。今夜のように」 「そんなの…全部…お…まえが…」 悪いんだろうがという科白は、けれど甘い吐息に掻き消され、最後まで反駁は続かなかった。 「まるで聖女と売春婦の両面を持つ、マリアのようですよ」 キリストでも生んで見ますか?と哄笑すれば、シエルは焦爛に歪んだ貌に半瞬だけ、淫蕩に耽った意 味深な微笑みを見せた。それはセバスチャンさえ虜にするような、背筋をゾクリと撫で上げていく忍び笑 いだった。 「人間と悪魔の間の子なんて、それこそ魔王か神のどちらかだろう?」 淫蕩に耽った狂女のような妖冶さで笑うと、シエルはドレスの裾を捲り上げた。 「坊っちゃん…」 シエルの快楽の沸点は低い。焦らせば焦らした分だけ、それは婬らな官能を深めていく。 「あっ…っ!ぁぁん…っ!」 今までセバスチャンの指が潜り込んでいた場所に自らの指を埋めると、シエルは見せつけるように肉を掻き混ぜていく。それでも決して一人では達っせないことも、シエルはよく判っていた。 「未成熟なヘルマプロディートスそのものですね、貴方は」 長い髪を揺らして身悶える躯は、けれど器の性別は少年だ。そのくせ作り替えられた中身を象徴する ようなドレスを身に付けていると、どちらがシエルの性別かと疑いたくなってしまう。 少年と少女の両極、処女と売春婦の両極端な部分。それらが共喰いでもするかのように、こんな局面 になると、シエルの内側から顕れる。それがセバスチャンには不思議でならない。 関係してきた人間の中で、こんな未成熟で不安定な要素を持つ人間はいなかった。少女だろうが女 だろうが、少年だろうが、男だろうが。 セバスチャンは手袋を外すとシエルの指を抜き取らせ、其処彼処を官能に顫わせている躯をそっと横 たえた。 「ぁっ…、ぁあんっ…、い…、やぁ…っ」 白い胸元に散る悪魔の所有印は、服を着れば見えないギリギリのラインに色濃い痕を残している。 濃厚なキスを至る処に落とされ、胸元ばかりか、二の腕の内側にまで、悪魔の所有員は残されている。 理性的で冷静なくせに、こういう部分は執拗だと、いつも情後にその痕を見つけては、シエルが苦く呆 れることを知っていて、セバスチャンはシエルの見える範囲に痕を残す。 「あっ…、いゃ…んっ…」 気付けばドレスは脱がされ、シエルは幼い未成熟な肌を、淡い明の下に曝け出されていた。与えられ る快楽に白い肌は淡く色付き、セバスチャンから与えられる官能の深さに、シエルは全身で応え、淫蕩 に耽っていく。 そんなシエルとは相反し、セバスチャンはコートと上着を脱ぎ、スカーフを解いてシャツのボタンを緩め ているだけの恰好で、乱されているのが自分だけだと思うと、シエルはの羞恥は淫蕩と同じ場所まで深まっていく。 「あぁっ…セバス…チャン…もぉ…」 細腰が浮くほど左右に下肢を開かれ、その間にはセバスチャンが顔を埋めている婬らさ。腹に付く程 昂っている幼い性器を舌と指とで玩弄され、シエルのすすり歔きが高くなる。 中心に顔を埋めているセバスチャンを引き離そうと伸びた腕は、けれど力なく漆黒の髪を掻き回すだ けの徒労に終わり、より強く与えられた刺激の前に、足先が引き攣るように小刻みに顫え上る。 「ひぁぁっ…!やだぁ…っ」 自身を玩弄され、同時に幼い胎内に潜り込んだ指を三本に増やされ、望むままに手袋を外したそれで 掻き回されれば、絶頂は呆気ない程早くに訪れる。けれど玩弄されているシエル自身は根元を押さえ 付けられ、容易にイカせてはもらえなかった。 「だめぇっ、深い…、いゃっ…っ」 ぐちゅぐちゅと響く淫猥な粘着音が、自分の胎内を掻き混ぜられている音だと思えば、その卑猥さに 耳を塞ぎたくなる。けれど咥え込んだ男の指を貪婪に締め付けている肉の浅ましさに勝てない自分も、 シエルはよく判っていた。 「あっ…、あぁんっ…もぅ…」 限界以上に昂っている自身は痛い程反り返り、先端から濃い愛液を滴らせている。玩弄にさえ容易に 反応する肉の浅ましさに、シエルは泣きじゃくりそうに嫌々と小作りな頭を振り乱す。 「慣らさなきゃ辛いのは、坊っちゃんの方ですよ」 「ひぁ…もぅ…やだぁ…」 吐精もできなければ、一番欲しい場所を埋めてももらえず、シエルはとうとう泣きじゃくるような哀願を 口にした。 「イキたいですか?」 泣きじゃくり、乱れきったシエルを見遣ると、セバスチャンは答えを強要するように、幼い胎内に埋めた 指先で柔襞を押し広げていく。 「いやぁ…っ!」 どろどろに爛れた胎内を押し開かれていく生々しさに、薄く細い背が限界まで撓う。 「坊っちゃん」 促され、すすり歔きながら視線を移せば、冷静に見ているセバスチャンの視線とぶつかり、シエルはし ゃくり上げながら哀願を口に乗せた。 「イキた…もぉ…」 「どのように?」 「…えっ……?」 今まで重ねてきたセックスの中で、意地の悪いセバスチャンに嫌らしい科白を強要されてはきたこと は多々あったものの、今夜のような意地の悪さはなかったから、シエルは半瞬では求められている言 葉の意味が脳内で繋がらなかった。 「口ですか?指ですか?どのように致しましょう?」 「……貴様…」 口にされた哄笑に、羞恥で頬が紅潮するのが判る。そんなシエルの涙に濡れた勝ち気な視線に、セ バスチャンは鷹揚に笑うと、幼い胎内を掻き回す。その途端シエルは短い悲鳴を上げ、浅ましいほど細 腰を喘がせ、身悶えを深くしていく。 白いシーツの上に散るブルネットの髪。それはもう本来の長さに戻されて、もこよかな態で喘ぐシエル と共に、流れるように揺れ動く。 「強情ですね」 嫋々に喘ぎながら、それでもねだる言葉を口にしないシエルに、セバスチャンは白い内股を更に割き、片足を胸元まで屈曲させる。そうすれば男の指を咥え込んだままの秘花が丸見えに曝され、そのあ まりの羞恥に、シエルは咄嗟に顔を背けた。 「あっ…っ、いやだ…」 敏感になっている下肢の付け根を思い切り吸い上げられれば、営利な電流のような快感が背筋を這 い上がっていく。苦悦さえ伴うその快感に、シエルは勝てなかった。 「あっ…やっ…もぉ…セバス…チャ…」 んんっ、と、小さく喘ぐぎながら小作りな頭を振り乱すと、シエルはすすり歔きに紛らせた声で、セバス チャンを求めた。 「…舐め…て…」 しゃくり上げる辿々しい声音に、セバスチャンは満足そうに微笑むと、シエルの内部から指を引き抜き、幼い性器を口に含んだ。 「ひぁぁあっ…っっ!」 濡れた淫猥な音を立て、根元まで生温い口内に含まれ、しゃぶり回され、吸い上げられる。その生々 しい快楽に、シエルは鋭い絶頂の悲鳴を迸らせた。白い喉元が反り返り、薄い背が限界まで反り返る。 シーツを握り締める指先に力が籠り、シエルはセバスチャンの口内に淡い精を吐き出した。 「…ぁっ…、ぁっ……」 まるで人の手の温もりに囚われた魚のように、白い裸身が小刻みに顫えている。焦爛が湧く程、散々 はぐらかされていた絶頂に、小さい躯はぐったりと弛緩しきっていた。 「さぁ坊っちゃん。今度は私を受け入れて下さいね」 絶息した動物のように、快楽の余韻に乱れた呼吸をしているシエルを見下ろすと、セバスチャンはほ っそりとした下肢を抱え上げ、露にした曝した双丘の狭間に、取り出した脈動をゆっくりと押しつけた。 「あっ……」 狭間の奥に押しつけられた熱の塊。それを察し、白痴になった眼差しが、セバスチャンを探して虚ろに 彷徨い、白い下肢が抱え上げられている恰好に、シエルは咄嗟に抗った。 「まっ…待って…!まだ…っ」 絶頂の余韻に収縮している胎内に、熱の塊を受け入れるのは、幾らなんでも快楽より苦痛が大きい。 「敏感になっているから、いつもより感じる筈ですよ」 非力な抗いなど意にも介さず、セバスチャンは細腰を抱え上げると、脈動の先端で円を描くように花莟 の縁を擦り付ける。そうすればシエルは引き攣った貌を刻み付け、華奢な躯が逃げを打つ。 「やっ…!セバスチャン…!まだ…、まだ…やだぁ…っ」 ゆっくり円を描いて擦り付けられている脈動。受け入れるのは慣れている。痛感さえ快楽に転じる通 過点でしかない。けれど余韻で激しい収縮を見せ蠢いている肉の奥に、雄を受け入れるとなれば話し は別だ。 「あっ…、やっ…、まだ………」 「怖いですか?」 細い躯を押し潰さないよう覆い被されば、細い両腕が必死になって胸板を押し返そうと振り回される。 昂まっている性器をゆっくり花莟に押しつけ、細腰を引き寄せれば、押し込まれる予感に、シエルは言葉もなく嫌々と頭を揺すりたてる。 「んんっ……っ!」 収縮する肉の入り口が、雄の昂まりを押し込まれる予感に萎縮する。それでもセバスチャンはシエル を犯すことに躊躇いを見せない。 「怖いならそれで結構。今後もその恐怖を存分に覚えておいて下さい。無鉄砲な行為は、いつだって自 分に跳ね返ってくるんですよ」 無茶で無鉄砲な行動原理は、際立つ洞察と同時に、自分に執着を持てないシエルの顕れだ。引き換 えの恐怖の一つ程度覚えていたら、もう少し憐れさは減るだろうか? らしくない感傷に自嘲すると、セバスチャンは嫌がるシエルの細腰を固定すると、熱くなっている脈動 を幼い胎内に押し込んだ。 「ひあぁっ……っ!」 萎縮する入り口を割く威勢で埋没してくる熱い怒張。慣れた雄の形に押し開かれていく柔襞。爛れた 肉を容赦なく擦り上げられていく過ぎる快感に、細い躯を引き攣らせると、細い腕が縋るものを求めて、 セバスチャンの背に爪を立てた。 「っ痛っ…やっ、あっ…」 押し込まれた雄の形に、内側から押し開かれていく幼い胎内。圧倒的な質量を持つ慣れた雄の熱。 すぎる快感は痛いくらいだというのに、抱かれることに慣れた躯は、痛感を快楽に転換させる術をよく心 得ていて、シエルの胎内は咥え込んだ雄を四方から絞り上げていく。 「…はっ…、あっ…、ぁあん…ィっ……」 「本当に、婬らな躯になりましたね」 自分が作り替えた躯だったものの、シエルは生来的に淫乱な性質なのだろう。それでなければ、どう にも合点がいかないと、セバスチャンは熱い脈動を絞り込んでくる幼い胎内の収縮の強さに、腰を大き く打ち付ける。 「んんっ…も…っ…、イク…」 徐々に激しさを増していく律動に、シエルは頑是なく小さい頭を振り乱す。下肢は一時もじっとしていら れないのか白いシーツを掻き乱し、それは既に残骸に近い。 「ぁあっ…、ぁあんっ……やっ、もぉ…」 目の眩むような絶頂の予感に、セバスチャンの動きに合わせ、細腰が揺すりたてられる。深々所有さ れている胎内は、熱い性器をぎっちりと咥え込み、浅ましい程奥へ奥へと誘い込む。 「んんっ…やっ…、だぁ…セバス…チャ…もぉ…抜いて…」 下肢を更にM字に割り開かれ、深々男を咥え込まされる生々しさに、シエルが嫌々と身悶える。 「出しますよ」 ぐっと腰を押し付け、幼い胎内の敏感な場所を抉りたてれば、シエルは細い絶叫を放って、白い胸元 を反り返らせる。 「だめっ…!出して…やっ…!」 「だから、出してあげますよ」 貴方の内に。 下肢を抱え上げ深々咥え込ませると、耳朶を甘噛み、甘く低い声で囁けば、シエルが発狂した様子で 力の抜けきった両腕で抵抗する。 「やだ…やっ…!それは…セバス…チャン…」 「いつも往生際が悪いですね」 根深い快楽に狂いながら、シエルは胎内で開放されるのを極端に嫌がる傾向にある。悪魔の種子を 胎内に撒かれる恐怖というより、受け入れた先に在る本能的な恐怖なのか、シエルは毎回決まってそ の瞬間を嫌がる。 内側の雌に相反し、器の性別は胎内に海を持たない。あるのは受精もしない死海だけだ。性交が種 の保存という意味を持つ以上、同性で番う行為を、シエルは何処かで恐れているのかもしれない。受精 一つ出来ない行為に溺れていく怖さ。それでも最後には陶然となり、所有された胎内に放たれながら、 シエルもまた絶頂に達するのは毎夜のことだ。 「ホラ、出しますよ」 大きく胎内を掻き回せば、ぐちゃぐちゃと濡れた音が婬らに響く。ぎっちり咥え込まれる激しい収縮に、 セバスチャンも限界に近付いていた。 「あっ…、あんっ…やだ…っ、やっ…」 抉り掻き回される爛れた肉。胎内に熱を放たれるのは嫌だと思うのに、自分の意思が一切通じない婬らな肉体は、咥え込んだ雄を決して離さない。浅ましい程絡み付き、蠢き奥へと誘い込む。押し開かれていく生々しさが、脳髄まで圧迫していくようで、シエルは絶え絶えの呼吸を漏らす。 「あっ…、あっ、セバ…スチャン…もぅ…っ」 未成熟な胎内を容赦なく所有していく脈動は、最後にはシエルさえ知らない深みにまで埋没し、もうシエルの意思一つ届かない。その歪みに、シエルは狂女が持つ妖冶な陶然さを滲ませ、生々しいすすり歔きを高くする。 「貴方は本当に婬らで、綺麗な生き物ですね」 そしてその分、とても憐れで哀しい生き物だ。化生にもなれず、自覚のない疵を内側へと抱え込んで いく。 セバスチャンは静邃な眼差しで乱れ堕ちていく幼い生き物を見詰めると、きつい収縮を繰り返す柔襞 を突き崩す威勢で抉りたて、シエルの胎内で熱を開放した。 「ぁあっ…!」 いやっ、と小さい悲鳴を零しながら、シエルもまた互いの腹の間に挟み擦られ、限界を訴えていた淡 い精を開放した。その瞬間、意思も意識も混融する愉悦に埋没し、シエルはそのまま意識を手放した。 「坊っちゃん……」 短い悲鳴とも喘ぎともとれない嫋々の音を響かせ、華奢に背を限界まで撓わせたまま、シエルは意 識を手放した。意思を失った躯は瞬時に力を失い、ひどく軽い音を立てベッドへと沈み込んだ。 汗と精液とで穢れきった白い裸身を清めると、セバスチャンは丁重にシエルをベッドへと横たえ、失神 した幼い寝顔を見詰めた。 青く透ける白い貌。そこに浮かぶ疲労の翳り。ブルネットの柔髪が縁取る瀟洒な輪郭に、散々泣かせ た痕跡がうっすらと残っている。 「こうでもしないと、貴方は泣くこともできないでしょう?」 泣くことも叫ぶことも悲鳴さえ忘れ、ただ呆然と血の海の中に佇んでいた幼い子供。恐怖さえ忘れ果 ててしまう程の恐怖に曝され、気狂いにも、化生にさえなれず、身の裡に疵を抱え込んでいく憐れな生 き物。 泣くことさえ忘れた病んだ心は、何処かで泣き場所を作らなければ、生きていくことは難しいだろう。 シエルを殺さず最期まで守ること。それが交わした契約だ。シエルを殺すのが、何も他人とは限らな い。絶望を知る人間は、深淵に惑わされやすいようにできている。 「だから貴方に、簡単に死んでもらっては困るんですよ」 それは悪魔の美学に反することなので。そう囁き、手袋を外した指先で乱れた前髪を梳き上げると、 思いのほか静謐な眼差しが白く小さい面差しを見詰めた。 「貴方は私のモノなんですから」 願いを叶える為の引き換えの代価。契約者という悪魔の獲物。 壊すことも見捨てることも可能だった幾重もの選択肢の中、シエルを守り育てると決めたのは自分の意 思だ。 「最期までお傍にいますよ、マイロード」 セバスチャンは深い自嘲を刻み付けると、力の抜けきった腕を掬い上げ、その薄い手の甲に恭しくキ スを贈った。 |