オマケ






「ねぇ桃先輩」
 繰り返すラリーの合間、リョーマが思い出したように口を開いた。
「なんだよ?」
 結局、リョーマの父親が仮住職を勤める寺のコートで、ラリーをしているのだから、やはり互いにテニスバカなのだろう。
「思い出したんスけどね」
「ん?」
「金木犀」
「アア?」
 突然何を言うのかと訝しみながら、ボールを視線で追いつつ、リョーマの声に耳を傾ける。
「あの匂い」
 鋭く返ってきた打球。自分が打つより重い打球を、ラケットを両手で握って打ち返す。
都大会からこっち、益々ももしろの打球は重さも回転も鋭さも加わっている。
「何処かで嗅いだと思ったら」
「お前、そんな事考えてたのかよ」
 それで途切れる事なく打ち続けていられるのだから、大したものだと、関心する。
「トイレの芳香剤に、ありましたよね、金木犀って」
「………お前なぁ〜〜〜」
 オチはソコかと、桃城はガクリと肩を落とすと、
「ハイ桃先輩の負け。ファンタ奢りね」
 桃城のコート内。コロコロ転がるボールに、リョーマはとびきりの笑顔を桃城に向けた。