| 絹 の 夜
Valentine day
act1 |
深夜の蒼い帳の中。ベッドサイドの淡い光量だけが灯る室内は、先刻までの情事の激 しさを物語るように、今は生温い気配が漂っている。けれど室内を満たす情事の残滓とは 相反し、リョーマの機嫌は悪化の一途を辿っている。 「ったく、あの人、俺一人ほっぽっといて、何やってるのさ」 未だ熱の失せない、情後の心地好い気怠さを引き摺りながら、リョーマは憮然となりつ つ、つい先刻まで桃城が居たシーツの上に、白く細い腕を伸ばした。激しいテニスをして いるとは思えない瀟洒な印象の指は、桃城の体躯を覚えているかのように、シーツの上 を無自覚な動きで彷徨っている。 未だ激しく睦んだ感触が抜けない肉の奥深くの熱同様、シーツの上には、桃城の体温 が残されていて、リョーマの機嫌は悪化しているものの、肉は容易に弛緩し、甘い吐息を 吐き出している。幾度となく桃城を受け入れた幼い胎内は、未だ桃城の熱が潜り込んで いるようで、白い下肢の内股には、桃城が胎内で吐き出した熱情が流れ、生温くこびりつ いている。 「サイテー」 いつもなら、情後にリョーマを一人残し、部屋を出ることなど決してない桃城だった。 それこそ幼い胎内を開いた罪悪を未だ手放せない男だったから、再現なく気のすむまで、それこそリョーマが盛大に呆れる程、桃城は細い躯を腕にして離さない。その桃城が、 情後の心地好い虚脱感に包まれている細身の躯を緩やかに抱き締めた後、不意に何か を思い出したように、意味深な笑みを浮かべ室内を出て行った。それが10分程前だ。 情後の目蕩みに埋没しながら、緩やかな仕草で髪を梳かれ、トロンと心地好い眠りに誘 われていたリョーマは、唐突に失せた温もりに、怪訝な表情をして見せた。一体何事かと 視線で問うリョーマに、桃城は『ちょっと待ってろ』と、珍しく意味深な笑みを浮かべ、情事 の熱の残るベッドにリョーマを一人置き去りに、室内を出て行った。 そんな桃城の行動が、リョーマに面白い筈がない。 リョーマに対しては莫迦みたいに慎重で過保護な桃城が、リョーマに対し、意味深な笑み を見せるのは、そう数の多いことではなかった。そしてそんな時の桃城の意味深な笑み の答えを、今までリョーマが当てられた試しはない。ないから、リョーマは今も桃城が情後 自分を一人置き去りに、階下に降りていった理由が判らず、何処にも八つ当たりの出来 ない状況に、憮然となっていた。 「どうするカル?パパ出てっちゃったよ?」 憮然とした表情に、クスリと小さい笑みを浮かべると、リョーマは視線を巡らせる。 愛猫のカルピンは、既に指定の位置に置かれたフワフワのクッションの上、丸まって熟 睡している。リョーマの愛猫の可愛がりようを顕すように、小さい生き物の上にはご丁寧 に、キャラクターものの毛布まで掛けられているが、それは飼い主のリョーマではなく、親 バカぶりを発揮したかのように、桃城が買ってきたものだから、南次郎が呆れながら、苦 笑したのは言うまでも無い。苦笑する南次郎に『どうせカルピンは俺達の子供だから』と、 シレッと答えたのはリョーマで、リョーマの科白に、乾いた笑みを漏らしたのは桃城だった。 「…子供が熟睡してるからって、激しくしといて…サイテー」 激しかった情事の最中の熱が引いてくれば、深夜の空間には暖房機の音が静かに響 いている。桃城が居ればあまり意識しない情後の沈黙に、リョーマは憮然となりながら、 つい10分前まで、桃城が居た場所にコロンと細身の躯を投げ出し、大きいクッションを抱 え込むように俯せになれば、いつも桃城が漬かっているそのクッションからは、桃城が使 っている整髪剤の匂がして、鼻孔を擽っていく。 「何やってるのさ」 クッションから立ち上がる整髪剤の匂は、そのままダイレクトに官能に直結してしまうか のように、桃城のそのものの匂をリョーマに意識させる。何よりリョーマが一番身近に感じ ている整髪剤の匂は、失せた筈の熱を、容易に炙り出すかのようだった。 「サイテー……」 悪態を吐きながら視線を巡らせた場所で、穏やかな寝息を立てているカルピンを眺め、 柔らかい笑みを浮かべた。 既に桃城とリョーマの二人にとって、カルピンは子供のようなものだった。言い切ってし まうには当然多分に語弊が含まれはするが、感覚的には似たり寄ったりなのは、否定で きないものだろう。それは多分にリョーマの父親であり、テニス部顧問の竜崎スミレに言 わせれば、年を喰うに従い、年々面の皮も厚くなっていると言われる、青学初代曲者の 南次郎が、桃城とリョーマの二人が揃ってカルピンを構い倒している光景を眺め、そう言 い切ったものが、今では二人の間でも定着してしまっているから、室内で行為に及ぶ時。 自然とカルピンの視線を意識してしまう。尤も、リョーマは時折その挑発的な性格で『カル ピンが羞かしくなる程しよ』とか、桃城を魅了する笑みで誘ったりするものだから、大抵ど ちらかがカルピンの存在を気にしても、それは熱くなる情事の最中、その意識を保ってい られるのは極短い最初の内だけだ。今夜は昼間遊び疲れたらしいカルピンは、早い内か らクッションに丸まり熟睡していたから、二人は最初からカルピンの視線を気にしてはいな かった。 「ったく、何やってるんだか」 ベッドボードに置かれた時計を眺め、リョーマは深々溜め息を吐き出した。時計の針は、 0時を半分弱過ぎた時刻を示している。桃城が室内を出て行って、15分近くが経過しよう としていた。 リョーマがクッションに半ば憮然と拗ねたように顔を埋めた時だった。 「お待たせ」 足音どころか気配一つ立てずに、桃城が室内に戻ってきた。情後の熱が失せた躯に纏 うのは、夏なら桃城のパジャマを一つに分け合い、上着はリョーマが、ズボンは桃城がと いう具合に着ているが、真冬の今はそうはいかない。濃紺のパジャマをしっかり着込んだ 桃城が、扉を開けた場所に立っている。 「帰ったんじゃ、なかったんだ」 クッションに顔を埋めたまま、視線だけ入り口に佇む桃城に、リョーマは笑う。 情後室内に居る時は、温度調整された空間だから、真冬でもパジャマの上下を分け合っ て着ている。それが今は桃城は自分のパジャマの上下をしっかり身にさけているから、明 日はアレを着て寝ようと、リョーマが思っていることなど、きっと桃城は知らないだろう。 「帰って良かったのか?」 「あんたがセックスの後、俺ほっぽって帰れる度胸が有るんならね。勿論、その場合は即 離婚だけど」 悪戯気な様子でクスクス笑いながら、リョーマは近寄ってくる桃城を眺め、片手に小さい トレイを持っているのに、不思議そうにまろい瞳を瞬かせた。 「そうやってっと、お前本当、仕草がタヌキに似てるな」 「何それ?逆じゃないの?」 「似てるぜ、お前達。そうやってっと、本当そっくり」 「そりゃ、親子だから。きっとあんたとも、似てる所有るんじゃないの?」 「そうだな」 悪戯気に笑いながら、拗ねているとも憮然とした様子も窺えるリョーマの科白に、桃城 は苦笑する。 クッションに顔を埋めていたリョーマが、可笑しそうにクスクス笑い、乱れたシーツの上で 半身を起こすと、ゆっくり近寄ってくる桃城を眺めている。楽しげに瞬くまろい瞳が愛猫に 似捨ていると、桃城は深い笑みを刻み付ける。 南次郎に言わせれば、何処からどう見てもお前達の子供だと言われて久しいリョーマの 愛猫は、やはり何か有れば、リョーマより色素の濃い蒼瞳をキョトンと瞬かせ、不思議そう に小首を傾げる仕草をする。今のリョーマはまったく同じだ。 「ホイ、お前を一人ほっぽり出した理由」 「………ソレ…何?」 ギシリと鈍い音を立て、ベッドに腰掛けてきた桃城の手の中に有る小さいトレイを凝視す れば、桃城はトレイからグラスを取り上げ、キョトンとしているリョーマに、意味深な笑みと 共に差し出した。それは、脚の長い瀟洒なカクテルグラスに注がれた、薄茶の液体だった。 「バレンタインの、チョコレートがわりだな」 「………あんたってば、サイテー」 シレッと笑う桃城に、途端リョーマは憮然となる。 「怒る場面じゃないだろ、普通」 尤も、リョーマが怒るだろうなとは、予測していた桃城だったから、予想通りのリョーマの 反応に、幅広い肩を竦めてみせた。それがまたタラシ度を高めている所為で、リョーマは 益々憮然となっていくのに、桃城は緩やかな動作で細身の姿態を引き寄せる。 「怒る」 桃城の腕に緩やかに引き寄せられるのに、悪態を吐きつつも抵抗など欠片も見せず、 リョーマは桃城の胸板に背を預け、憮然としながら、差し出されたカクテルグラスを掬い上 げた。 カクテルグラスに入っているのだから、当然カクテルだろうが、見たこともない色をしたカ クテルに、リョーマは少しだけ不思議そうに、けれど興味ありげにグラスを傾け、淡い液体 を眺めている。 父親である南次郎は、もっぱら夏はビール、冬は熱燗の人種だったから、時折晩酌に 付き合うリョーマも、流石にカクテルまでは判らなかった。 「フーン。あんたって本当、悪党で詐欺師。何処まで女に甘やかされてきたのさ」 カクテルを作れてしまう中学生など、そうそう居はしないだろう。それを短時間で用意周 到に作ってしまう辺り、桃城が一体何処まで女に甘やかされてきたのかと思えば、胸が 灼け付くようだった。 「正式には、チェリーを縁に飾るんだけどな」 「ホストクラブで、バイトでもしてくれば?」 悪態を吐きつつ、リョーマはグラスに口を付け、 「甘い」 思ったより滑らかな舌触りと甘さに、意外そうに桃城を見上げた。何処となく、カカオの 香りを含むそれは、だからバレンタインのチョコレートがわりなのかと、リョーマは納得した。 「シルクストッキング、って言うんだぜ」 その名前の通り、リョーマの手に有るカクテルグラスの中身は、絹のような滑らかな舌 触りと、仄かにカカオの香りがするチョコレートカクテルだ。色彩も、名前の由来通り、女性 の足許を意識させるものだという。 「シンプルなチョコレートってのも、つまらないだろうと思ってな」 意外そうな表情を見せるリョーマのそれが見たくて、桃城は先手必勝でカクテルを作っ たようなものだった。 負けず嫌いのリョーマのことだ。こんな風にチョコレート同様の意味でカクテルなど渡さ れれば、憮然と拗ねるのは判りきっていたから、予想通りのリョーマの反応に、桃城は楽 しげに笑っている。それがリョーマの憮然さに拍車を掛けるが、それが桃城には愛しくて 仕方ないのだから、大概終わっている自覚の一つや二つ、桃城にも有るのだろう。 「………あんたってば、やっぱ本当っっ、サイテー。何処の女に、こんなの教わってきた 訳?」 「そう怒るなって」 睥睨して来る眼差しの底には、挑発的な色が見て取れて、桃城は苦笑する。 「っで、その心は?」 覗き込んでくる精悍な貌を、首を少しだけ傾げて背後を眺めれば、桃城は口端で笑って いる。 「そりゃ当然、お前のこの脚」 腰から下はケットで隠れている下肢に、躯の線を撫でながらゆっくり指を這わせていく。 リョーマの肌は情事の熱が少しだけ残っているのか、撫でる指先に触れる温度は、昼間 より少しだけ高く感じられる。 「んっ……」 やんわり羽毛のように触れられる愛撫に、リョーマは甘い吐息を漏らし、ピクンと無自覚 に細身の躯が顫えれば、失せた筈の熱が、肉の奥からゆっくり浮き上がってくるようだっ た。 「お前のこの、綺麗な脚。絹みたいに指に馴染むんだって、知ってるか?」 女のように脂肪の乗らない未成熟な躯は、細い骨格に沿い、綺麗に筋肉が付いている。テニスという激しいスポーツをしているのだからそれは当然なものだったが、未完成で 未成熟な肉体は、幼さ特有の肉の柔らかさが残っている。元々雪肌のような滑らかさを 持っているリョーマの肌は、情交を重ねれば重ねる程、桃城の指先にしっとりと馴染む絹 肌になっていくようで、桃城を倖せにするのだと、きっとリョーマは知らない。 「その科白、一体何人の女に吐いてきたの?」 グラスを指先で弄びながら、けれどリョーマは憮然となることなくクスクス笑っている。 所詮これは言葉遊びだ睦言だと、判っている会話だ。 「お前だけに決まってるだろ」 「ねぇ?俺の肌、絹みたい?」 「ああ、指先にしっとり馴染む」 「だけ?」 「ん?」 「脚だけ?」 「………お前、明日休みじゃないんだぞ。挑発するなよ」 紅脣に忍び笑いを刻み付けるリョーマに、桃城は苦笑を深め、大仰に脱力してみせる。 日付変更線を超えた今日は、女子にとっては年一回の大切な日で、男子にとってもお祭 りだった。 公立等は、ゆとり教育の名の許に、詰め込み式のカリキュラムを実施した文科省の影響 で、土曜日は休みになっているが、私立であり、私立校連盟所属の青春学園は、土曜の 休みは生徒にとっては無縁なものだった。とはいえ、文科省の指導の許、隔週で土曜の 休みが実施されるようになっていた。そして今日、2月14日のバレンタインは、桃城やリョ ーマにとっては生憎登校日ということになる。こんな科白を吐けば、お祭り騒ぎと化した女 子から、チョコレートを贈られる可能性の男子にとっては、歓迎されない。けれど去年の秋 から校内で出回り、今では生徒間に浸透しつつある桃城の『秘密の恋人』説を耳にしても、桃城の告白回数は以前減少しない。不二や英二、データ収集が趣味の域から道楽に なっているとしか思えない乾などに言わせれば、桃城の告白回数は、以前よりは減少し たということになるが、生憎リョーマにはそう思えなかった。朝になったら桃城は女子から のチョコレート攻撃に合うだろうなと無責任に思っているリョーマは、自分もその対象に含 まれている自覚は皆無だった。 「俺、こんなグラスじゃ嫌なんだけど」 瀟洒なカクテルグラスなど、一体何処から調達してきたのかと思えば、やはり桃城が道 具一式、用意周到に持ち込んだとしか思えないリョーマだった。 ワイングラスは常備されている越前家でも、カクテルを作る人間が居ない以上、カクテ ルグラスは常備されていない。シェーカーなども当然ないから、一体いつ桃城が持ち込ん だのかと思う。 「越前〜〜〜」 「普通は、俺からのチョコとか、欲しがるもんじゃないの?」 「まぁ、お前も男だし」 先手必勝でチョコを渡されてしまったのが、何処か面白くない様子のリョーマに深い笑 みを漏らすと、桃城は背後から腕を回し、長い前髪を梳き上げていく。 「俺を浅ましい雌にしたあんたに言われても、嬉しくない」 桃城だけを受け入れるように慣らされた肉体は、今は桃城のカタチも匂も何もかもを記 憶している。頭ではなく肉の奥底で、幼い胎内の内側で、桃城という男を記憶している。 その浅ましさを、桃城は一体何処まで判っているのかと思えた。 「お前〜〜〜」 「何も知らなかった俺を女にして、あんたに抱かれる雌にして。今更じゃん」 この部屋で、緑が光の軌道を描いて飛ぶ季節。始めて桃城に抱かれた。キスしか仕掛 けてこなかった桃城の、莫迦みたいな慎重さに呆れながら、不安になっていたのだ、あ の時は。だから挑発せずにはいられなかった。耽溺してしまう性の深淵など、何一つ知ら なかった去年の初夏は。知ってしまえば、今は何一つ手離せない。 「この会話の流れからいくと、お前も俺にチョコを用意していたってことか?」 俺って心底愛されてるなぁと、前髪を梳く指先が、ゆっくり繊細な輪郭を辿り、頤に届く。 「さぁね。どうせあんたは、俺からじゃなくても、いやって程、貰えるんだろうし」 「お前が居るのに、貰ってどうする?チョコの数競って喜ぶ程、ガキじゃないぞ」 「どうだか」 「大体、一年女子の間で、お前がなんて呼ばれてるか知ってるか?」 「テニスの王子様」 流れ流れて、伝言ゲームのように、リョーマの耳に入ってきたその渾名を聴いた時。リョ ーマは心底眩暈を味わったのだ。 私設リョーマ様ファンクラブとか言い、いつもキャアキャア騒いでいる朋香辺りが付けた ものだろうと、判らないリョーマではなかったが、この際そんなものはどうでもいい。回り巡 りリョーマに届いたその渾名を聴いた時、リョーマが真っ先に思ったのは、そのネーミング センスをどうにかしてくれと、ポーカーフェイスを曝しながら、思ったことだった。 「女子の期待は、俺以上じゃないのか?」 「どーせ俺は、ダレかさんの秘密の恋人ですよ。でもまぁ」 憮然とした態が、不意に何か面白い悪戯を思い付いたように、桃城の腕の中で位置を 入れ替える。 「………お前、絶対今何か悪いこと思い付いたろ?」 嫌な予感がするぞと、桃城が白皙の貌を覗き込んだ時。リョーマは淫蕩な忍び笑いを漏 らした。 「自分の男がモテるの見るのは、悪い気はしないから」 いっそ俺と数競います?リョーマが笑えば桃城は心底脱力した。 「そんなフザケには、付き合わないからな」 それでは去年の初冬、リョーマが珍しくも出かけるから外で待ち合わせをしたいと言った あの時と、状況はまったく同じになる。 「あんたってば、似非フェミニストなんだから」 バレンタインは、女子の間じゃ一年に一度のお祭りじゃないの?リョーマは精悍な貌を 覗き込むようにクスクス笑うと、ほっそりした片腕を、桃城の首に絡めていく。 アメリカでは、バレンタインは女が男にプレゼントを贈る日だと、限定されてはいない。 大切な人に心を贈る日ではあるけれど、日本のように、お菓子業界の策略にはまり、女 が義理も本命も含め、男にチョコレートを贈る日ではなかった。けれど2月に入ってから、 何処となく騒がしい女子の奇行に、訊いてもいないのに、親切丁重に日本の正しいバレ ンタインとやらをリョーマに説明したのは、堀尾だった。 「それで、お前からのチョコは?」 腕に絡んでくる白い腕を眺め、眼前で面白そうに笑っている綺麗な面差しを凝視すると、桃城はリョーマの手に有るグラスを傾け、中身を口に含む。甘いカカオとテキーラの香り が口内に広がった。 「んっ………」 頤わ掬われ、口唇を塞がれる。薄く開いた口唇から流し込まれた甘いカクテルに、白い 喉元が緩やかな上下する。コクンと鳴る音が何処か淫靡で、桃城はリョーマの舌に自ら のソレを絡ませる。 「……全部……」 濡れた音を立て絡まる舌。甘いカクテルに悪酔いしそうになりながら、リョーマは残りを ねだった。 「口当たりいいから、いけるだろ」 「俺以外に、一体何人にこの手、使った分け?」 酒には慣れているリョーマも、カクテルは初めてに近く、目許を淡く染めながら、桃城を 見上げた。 「そりゃお前、口説くんなら『ビトウィーン・ザ・シーツ』とか、『ハンター』とかだろ」 「………サイテー」 『寝床に入って』とは、まったくストレートなカクテルの名前だと、リョーマは呆れた。 「だったら、それ作ってよ」 「今度な。今はお前の為に作ったこれを味わえって」 シルクストッキング。滑らかな絹のような肌触りのリョーマの肌。特にリョーマは足許が 綺麗だ。真冬でも黒いハーフパンツから覗く剥き出しの白い脚は、それだけで男なら魅了 されてしまうものだと、自覚がないから始末に悪い。 「ぅんっ………」 数回繰り返され、綺麗にリョーマに流し込まれた滑らかなカカオのカクテルは、口当たり は良いだろうが、ベースにテキーラが使用されている為、悪酔いしそうになる。 ピチャリと音を立て絡まる舌。桃城の指が、柔らかく背を上下するのに、リョーマの官能 は否応なく引き摺り出されていく。幾度となく角度を変え、互いの口唇を貪れば、滑らかな 舌触りと滑らかな味に、酔い尽くしそうになり、リョーマは目許を朱に染め、 「俺、絹の脚より、絹の夜の方が好み」 淫蕩に耽った笑みを覗かせると、リョーマは桃城の肩口に顔を埋め、続きをねだる。 桃城はリョーマの科白に、ガックリ肩を落した。 「朝練あるんだぞ」 言ってもどうせ無駄だろうが、言うことも必要だろう。 「桃城部長は、頑張って後輩指導して下さい」 そういえば、この会話はつい一週間前にもしたなと思い出す。スキー教室にいく当日の 朝、激しく睦いでしまった代償は大きく、リョーマは腰が疼いて仕方なかった。その時とま ったく同じ会話を繰り広げているあたり、お互いに対する学習機能は、習得されていない のかもしれない。 「ねぇ?俺からのチョコはいらない?」 「いる」 「即答しないでよ」 「するだろ普通」 「本当はさ、俺が一番にあんたに渡したかったんだって、そこの所はちゃんと覚えといてよ」 「………お前…俺がやらなくて怒るなら未だしも、先に渡されたから怒るってのは、こぉ、 何か違くないか?」 「違わないよ。何処かの莫迦な女達より先に渡せる自信は有ったけど、あんた自身が敵 なんて思わなかった」 「………敵ってお前な…」 リョーマの余りと言えば余りの言い様に、桃城は肩口に顔を埋めている小作りな頭をク シャリと掻き乱す。少しだけ汗を含んだ柔らかい髪は、絹肌同様、桃城の指に馴染んでい る。その滑らかな髪と、熱を宿す肌の感触に、桃城も情欲に流されていく。 「俺が、あんたに一番に渡したかったの」 だからあんたが俺に渡すのは、二番目じゃなきゃダメじゃんと、リョーマは理不尽な理由 を並び立てると、部屋の隅に立て掛けてあるテニスバッグをとってきてと、桃城に言えば、 桃城はヤレヤレと溜め息を吐き出し、テニスバッグをベッドサイドに持ってきた。 「あんたがこんな詐欺師みたいなことするなんて思わなかったから、朝でいいと思ってし まっといたのに」 「なんか、とんでもない言われようだな俺は」 詐欺師、悪党、タラシは、リョーマが桃城を呼ぶ時のによく使われるものだけれど、今夜 は特多いぞと、桃城は肩を竦めた。 「コレ、覚えてる?秘密付きのチョコレート」 テニスバッグの外側のポケットから取り出された、小さい四角のチョコレートが5つ、リョ ーマの掌中に有る。 「正月に、あんたのクローゼットの奥に隠されてたテニスボール見た時にさ、俺の記憶も 間違って無かったって判った」 「越前……」 まさかリョーマが覚えているとは思わなかったというのが、桃城の正確な吐露のだろう。 驚いた顔が絶句し、眼前で悪戯が成功した子供のように、莞爾と笑っているリョーマを凝 視する。 「詐欺師なあんたは、会ったその場で、俺にプロポーズしたんだよね。あんたあの時から、悪い男の見本だったよ」 それは随分昔の記憶で、思い出したのはつい最近のことだ。そしてそれが間違ってい なかったと判ったのは、正月に桃城の部屋のクローゼットの奥に、隠されるように大事に しまってある、テニスボールを見た時だった。 薄汚れた軟式の白いテニスボール。そこに書かれていた、バランスの悪い辿々しい平 仮名の名前は、間違えなく自分が書いたものだと、あの時鮮明に、記憶が脳裏に流れ込 んできた。 「あげる」 それぞれ味の違う5つの小さいチョコレートは、今も昔も大きさも味も変わらない。ソレを 喫驚した顔をしている桃城の掌中を開き、転がすように上から落せば、バラバラと小さい チョコは、桃城の手に落ちる。 「懐かしいな……」 掌中に落ちた5つの小さい四角のチョコレートを眺め、青春学園付属の幼等部に、リョー マが初めて入園してきた時のことを、桃城は思い出していた。 淡い陽射に満開の桜。煙景というに似つかわしい春爛漫の中、桃城はリョーマに出会っ た。 白く小作りな顔立ちに華奢な躯は、何処からどう見ても、制服を間違えているとしか思 えなかった。艶やかな黒髪に縁取られた際立ち白い面差しは、まるで精巧に作られた人 形のように綺麗で、一目惚れした。その場で『結婚してくれ』とかプロボーズして、周囲の 大人達が微笑ましいと笑っていた。 「お前あの時、思い切りひっぱたいてくれたよな」 けれど見掛けの綺麗さとは裏腹に、勝ち気な性格は当時から健在だったのだろう。 リョーマは桃城の科白に躊躇いもなく、桃城の頬をひっぱたいた。 「あんたが、あんな莫迦、言うからでしょ?」 勝ち気で負けず嫌いな性格は幼稚園当時から変わらず、男の身の上で、入園した先で の勘違い甚だしい科白に、リョーマは女の子のように綺麗な顔立ちでひっぱたいたのだ から、周囲は大騒ぎだった。けれどひっぱたかれた桃城は、怒るかと思えばマジマジとリ ョーマを眺め、気に入ったと言ったと腕を差し出したのだ。 「大体、あんたあんな昔から、小生意気なのが好みだったんだ」 「お前が、好みだったんだよ」 人形みたいな造形的な美しさを持っていたくせに、ひっぱたかれた時。相手は血の通う 人形だと理解した気がした。 「俺の初恋、だったんだぞ」 瞬きを忘れ、ジィと凝視してくる眼差しに苦笑し、桃城の口唇が白い瞼に落ちる。時間は もう完全に深夜の領域に差し掛かっているというのに、生温く灯ってしまった肉の熱さは、 もう抑えられない所まできていた。 桃城はやんわり、リョーマの躯を横たえていけば、リョーマはクスクス笑いながら、乱れ きったシーツの上に抵抗もなく横になる。元々リョーマから挑発したことだ。抵抗などある 筈もなく、横たえられ、桃城が伸し掛かってきた時。桃城が羞しげもなく『絹の脚』と称した 伸びやかなほっそりした綺麗な脚を、緩やかに開き、リョーマはたった一人の男をねだっ た。 「俺はね、あんたからの『絹の夜』が欲しい」 「だったら、食わせてくれよ」 リョーマから渡された小さい小さいチョコレートの包みを解くと、リョーマの口唇に咥えさ せる。リョーマの白い腕が、ねだるように桃城の首に回った。 「ぅん…んっ…んんっ…」 薄く開かれた口唇に挟み込んだチョコを、重ねた口唇で互いの温度で溶かしていく。 小さいけれど硬質なチョコは、桃城がリョーマの口唇に押し込んで、狭い口内で貪るよう に舌で転がして行くうちに、溶け出して行く。 「んんっ…ん………ッ!」 片手でリョーマの小作りな頭を固定し、片手で撓う薄い背を往復していた桃城の腕は、 不意に下へと伸び、双丘を揉んだかと思えば、前触れなくそれは秘花の奥へと潜り込ん だ。不意打ちを食らった状態のリョーマは、陶然と交睫していた瞼を見開いた途端。内部 に潜り込んだ 二本の指を威勢よく締め付けてしまい、らしくない羞恥で白磁の貌を紅潮 させた。 「お前の中、未だぬかるんでるぞ」 紅潮するリョーマを眺めながら、桃城の口唇は首筋を舐め上げ、敏感な耳朶へと這い回 る。その合間にも、リョーマの胎内に潜り込んだ指先は淫猥な蠢きを繰り返し、浅く深く緩 急を付け、リョーマの胎内の柔襞を玩弄する。 「あんたの所為…」 胎内で蠢く桃城の節だった指の動きをダイレクトに感じ、リョーマの吐息は急速に色付 いて行く。胎内がぬかるんでいるとすれば、それは他の誰でもない、桃城の所為だ。 「…ぁん…あんたが俺の中で、イッたからでしょ」 グチャリと、濡れた淫猥な音が下から聞こえてくる淫らさに、リョーマは羞恥で顔を歪め ながら、それでも敏感な部分を刺激され、薄い背が快楽に撓う。白い喉元が淡い照明に 曝される様は、ひどく姚冶だ。 「なぁ?俺が最初にチョコやったの気にいらないんなら、気に入るようにしてやろうか?」 悪い男の見本のような笑みを浮かべながら。桃城が真上からリョーマを見下ろせば、色 素の薄い蒼眸はトロンと蜜を浮かべ、不思議そうに桃城を見上げている。 羞恥に塗れながら肌を重ねてしまえば、リョーマは娼婦の放埒さで乱れ堕ちて行く。 それが今は無防備すぎる姿を曝しているのに、桃城は柔らかく苦笑する。 「お前の欲しがった絹の夜を、やるよ」 誰でもなく、たった一人の愛しい大切な存在の為に。 桃城はリョーマの内側に穿った指を引き抜くと、枕元に散らばったチョコを一つ手にとった。 「やっ…やぁぁぁん…桃先輩…桃先輩…そんな…そんなの…」 薄く細い背が、乱れきったシーツの上で綺麗に撓いながら、開いた下肢が小刻みに顫 えるている。その間には桃城の顔が深く埋まり、喘ぐように悸いている秘花の奥を、音を 立て舌が這い回っている。 「やっ……やだぁ…」 ヒクンと、リョーマの細い頤が反り返り、淡い照明に白すぎる喉元を曝すけ出す。その淫 靡さに、リョーマは気付いていないだろう。 「お前本当、ココこうされるの、弱いのな」 リョーマはいつも桃城とのセックスに於いて、最初こそ処女の羞じらいを見せても、その 羞恥が長く続くことはない。大抵は娼婦の奔放さで妖冶な気配さえ漂わせ乱れるが、桃 城を受け入れる為のその部分を、直接愛撫されるのを嫌がるのは、関係が始まった時か ら変わらないものだった。 今もそうだ。喘ぐように小刻みに顫える細腰を抱き上げられ固定され、桃城の眼前に花 蕾を曝しているのを、リョーマは極端に嫌がる。それがただ嫌なのではなく、感じ過ぎてし まうからダメなのだと、桃城は知っていた。 「ヒァアッ…!」 桃城の腕が、逃げる細腰をしっかり固定し、上向きに持ち上げるようにすれば、リョーマ は激しく身動ぎ、躯は逃げを打つ。桃城の胴を挟み込みながら、乱れたシーツの上を泳ぐ 下肢が、せめてもの抵抗とばかりに無自覚なのだろう、閉ざされる。けれど其処は桃城が 居る為、当然閉じることなど適わない。 「やっ…やぁあ…おね…おねがい…そこ…そこは…」 「ダメ」 「やだぁっ…!」 顫える双丘を左右に開かれ、先刻も桃城を受け入れ、綻んだままの最奥は、爛れた熱 に浮かされ充血しきっているのが、リョーマには生々しい程だ。そこを再び桃城の舌にし ゃぶるように舐め回されれば、リョーマはひとたまりもなかった。 淫猥な音を立てしゃぶり吸われる其処に、フト何かが押し当てられるの感じ、リョーマは ビクンと慄え上がる。 「なっ……何?」 それは瞬時にドロリと溶けていく感触が有った。 「なんだと思う?」 桃城はヒクヒクと喘ぐように爛れていく小さい肉の入り口にソレを押し当て、クルクルと円 を描くように動かすと、それは急速に形を失っていく。 「変態…あんたサイテー!」 「食わせてくれって、俺は言ったぞ」 普段リョーマに対しては莫迦みたいに慎重で過保護な桃城が、情事の最中だけ時折見 せる意地悪い仕草や言動に、リョーマは極端に弱かった。それを桃城自身心得ているか ら尚更始末に悪い。 「お前ってさ、こぅ、Mの素質あるよな。時折ヤバイし」 「そんなの……!」 知らないと叫ぶ反駁は、嫋々の嬌声に掻き消えて行く。 桃城にしゃぶり尽くされ、内側から熱くなっている小さい肉の入り口は、呆気なく熱を宿し、硬質なチョコさえ簡単に溶かしていく。その溶け出す感触と同時に、角の剥がれ落ちた それを、桃城が胎内にゆっくり潜り込ませていくのが判り、リョーマは顫え上がった。 「嫌…!やだぁ…桃先輩…」 リョーマの意思を無視して、否応なくズルリとした感触で胎内に潜り込んできたチョコは、 胎内の温度によりアッと言う間に揮発するように溶け出していく。その何とも言えない感 触に、リョーマは歔り欷いた。 「んくっ…くふぅぅ…やぁん……」 「リョーマ」 「変…態…サイテ…」 嗚咽に紛れる悪態は、けれど何処までも甘さが付き纏う。 「お前の脚って、本当絹の脚、だよな」 クツクツ笑うと、桃城は埋めた花蕾から、ゆっくり双丘に向かい舌を這わせ、それはやが て上向きに持ち上げ固定している白い内股に移動する。 「あっ…あっ…あぁん…やぁ…」 音を立て這い回る舌。両腕で細腰を固定していた片腕は腰から抜かれ、薄い翳りの中 央で痛い程熱を孕み、先端から愛液を滴らせているリョーマの幼い肉茎に伸びた。 「ヒァ……!」 瞬間、リョーマは尖った悲鳴を上げ、のけ反った。薄い背が幾度となく撓い、嫌々と頭が 振り乱れる。 「リョーマ」 「いや…声…ダメ…」 リョーマは情事の最中の桃城の低音にも極端に弱い。まして情事の最中しか呼ぶことを 許していない名前を呼ばれれば、それは尚更だ。 「リョーマ」 ダメと言いつつ悦がられれば、牡の嗜虐を煽情されるのは、当然の原理だろう。それで なくても情事の最中のリョーマには、日常的な面で見せる小生意気さとは相反する、被虐 美が付き纏うから尚更だ。 桃城はリョーマの肉茎を愛撫しながら、舌を下肢の付け根に移動させ、薄い皮膚を吸い 上げ、殊更リョーマの弱い低音の甘い声で名前を呼んだ。 「ぁぁん…!」 柔らかく薄い下肢の付け値を吸い上げられれば、簡単に跡が残る。桃城は情事の跡を、最中りのる部分でリョーマには残さない。桃城が残すとしたら、それはいつも左右の下 肢の付け値と決まっていた。 「あっ…!あぁん…!いや…いや…だめぇ…イッちゃ…」 下肢の付け値を幾度か愛撫され、それはリョーマ自身に愛撫が移る。反り返る根元を抑 え込まれ吸い上げられれば、達せない射精感だけが無慈悲に与えられることになる。 「だめぇ……!」 グッと反り返る白い喉元と薄い背。キュッとシーツを握り締める細い指先の仕草が、桃城 には淫靡に映った。思う様玩弄し、喘ぎを絞りとる程啼かせたくなる、牡の嗜虐を煽情し てしまう被虐が、リョーマには滲んでいる。 桃城は痛い程昂まっているリョーマ自身を指と舌で玩弄し、それは再び喘ぐ秘花に移動 する。そこは含ませたチョコが溶け出し、処女の破爪の血のようにぬめっている。 去年の初夏、リョーマをこの部屋で犯した時、リョーマは破爪の血を流しながら痛みを怺 え、自分を受け入れていたのだと思えば、桃城には愛しさしか湧かなかった。 本来自ら濡れ、異物を受け入れる機能のない場所に、リョーマは牡を穿たれたのだ。 痛くない筈がない。けれどリョーマは決して痛いとは言わず、呻きに痛みを紛らせ、桃城を 賢明に受け入れていた。その時流したリョーマの血と、リョーマの内部から溶け出すチョコ は、何処か似ていた。 「リョーマ……」 桃城は花蕾から顔を上げると、細腰を抱き上げ、痛い程高まっている自身を押し当てる。 「桃……先…輩…」 ゆっくり押し当てられた桃城の熱に、リョーマは生温い官能に耽溺する姚冶な貌を見せ、はんなり笑った。力の抜け落ちているほっそりした腕が、桃城の腕に触れたのと、桃城 が幼い胎内に自身を穿ったのは、同時だった。 室内に、嫋々の甘い嬌声が響いては消えた。 「………無理させちまったな…」 ぐったりと力の抜けきった躯は、今は身動き一つせず、桃城の腕に収まっている。少し ばかりの疲労を滲ませている綺麗な貌は、けれど何処か満ちた表情をして、穏やかな寝 息を貪っているのに、桃城はホッと安堵との吐息を吐き出した。 「なぁ?」 疲れきって眠る綺麗な綺麗な貌に、桃城は語り掛けるように口を開く。白い瞼に乱れか かる前髪を、愛しげに撫でる仕草に、薄い肩が擽ったそうに揺れる。 「俺の初恋は、本気でお前なんだぞ?」 幼い時出会ったあの時から今まで。忘れていられたのが不思議な程、桃城にはリョー マだけだった。 「初恋は実らないっていうけど、実ることも有るしな」 自分達がこうして居るように。 「お前はきっと、哀しむかもしれないけどな。俺はお前の先を行くよ」 だからお前もお前の道を歩いてほしいと、桃城は穏やかに眠るリョーマの口唇に、己の それを緩やかに重ねると、無防備な躯を抱き寄せ、眠りに落ちた。 朝までのほんの一時の狭間を番った絹の夜は、けれど明ければ頭痛ものの騒動が待 ち構えているのを、二人は未だ知らない。
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