臨書をする際は、常に新しい気持ちで書くことにしている。幾度となく学んだ古典や既知の文字にしても、初対面の思いで臨む。
 巍々霊山、四言句が並んでいるので16文字を2行に書くのが妥当か。A案。
 巍々とバクバクとあり、対になるから32字3行もよいかと思う。B案。
 
ところが「縉紳」の次の字が判然としない。
 藤原楚水、萩信雄は「踵」とする。陸増祥、汪キンなどに従うようだ。谷村憙斎解説『名品叢刊』(二玄社)では、「口」とあり、樋口銅牛と同様、不明としている。西川寧は、戦前の『書道』誌で「珪」とした。有正書局『最初精拓爨龍顔碑』では、王カンが「圭」としている。拓本や他の影印を見ても「珪」に見える。
 何枚か書いたがお清書のようで、何かが今一つ足りないようだ。思い切って「巍々バクバク」の四字とする。C案。
 A、B、Cをそれぞれ何枚か書いたが、帯に短し襷(たすき)に長し、さて、どうするか。

●純羊毫一掃千軍二号、二層夾戔、唐墨・和墨磨り合わせ
ギギバクバク作品解説↓
 拙作は、呉大澂を念頭に置いて書いたものです。呉大澂は古文字学者ですので、規範的な小篆よりもう少し古い時代の金文に近いものになりました。
 また、金文で曲線を増やし、字粒をやや小作りにすることによって余白をとり、多数の漢字が並ぶ息苦しさを避けようとしたとも言えましょうか。五年前の作ですから不満も・・・。
『墨』116号所載
(1995年10月、芸術新聞社
白楽天詩 作品解説↓
『墨』10月臨時増刊「古典の上手な学び方」所載(1995年10月、芸術新聞社)

作品と解説 
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