作品と解説 15

禳盗刻石之一


 

(50cm×69.5cm)



禳盗とは、お墓の盗掘除けの願文です。
文意は次の通りです。


およそ我が墓を発(あば)こうとする者は、

その子孫を根だやしにするぞ。

たとえ故意でなくとも、

その子孫を根だやしにするぞ。

決して人に売り渡してはならぬぞ・・・

(清明試訳)



この刻石は、1980年に山東省金郷県で発見されました。
その拓本を、私は1994年に山東省済寧「漢碑館」で購入しました。
刻石は前漢から後漢初期にかけてのもののようですが、
製作年代は未確定です。

買った拓本を臨書したのがこの作品で、
1995年夏の北城書社展に出品しました。
タテに界線が入り、素朴な隷書で書かれています。
字の大小も一定していませんが、
1行5字詰めになっています。


昔から墓盗人は絶えない様ですが、

このおまじないの効果があったかどうかは定かではありません。

何せ、肝心のお墓は無くて、盗掘禁止の刻石だけが残ったのですから。

この刻石については、2000年9月に小論を雑誌に載せました。

ところが、その後1年かそこらで、

その雑誌の発行責任者が急逝してしまいました。

雑誌も廃刊になりました。

何とも無情なことです。

死者のご冥福を祈ります。




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