作品と解説 23 もくじへ 窒欲澄心(欲をふさぎ、心を澄ます) 178×94×2 |
||||
この正月は、春秋展と日書学展と二つの展覧会が続きました。 ご来臨、ご高覧いただき、誠にありがたく、深くお礼申し上げます。 残務の処理やら何やらで、このHPに手が回りかねて、入稿が遅 れてすみませんでした。ご容赦下さい。 この作品は、日書学展(上野の東京都美術館)に出品したもので、 賛否なかばする評をいただきました。高評の中には社交辞令もあ るでしょうが、ほめ言葉はやはり快いものです。しかし、私はけなし 言葉を大切にしています。 作品に対して、「十年早いよ」とか、「書に遊ぶな!書を哲学しろ! などの叱正を受けました。すぐにその通りに実行することはできま せんが、「良薬は口に苦し」です。心に銘じておきます。 さて、この「窒欲澄心」は、会場で「何と読むのでしょう?」と何人か に聞かれました。「欲をふさぎ、心をすます」と読みます。酸素、窒素 のチツをふさぎと読みます。 中林梧竹(1827〜1913)の『梧竹堂書話』に「一を抱き朴を守り、慾 を窒ぎ神を澄ます。これ錬心の法なり」とあります。 窒欲は、『易経』の損の象に「君子をもって忿(いかり)を懲し欲を窒 ぐ」とあり、君子は忿怒と欲情を抑制すべきであるとのことです。 どこぞの為政者にも捧げたい言葉です。 澄心は、『准南子』泰族訓に「心を澄まし意を清め、もって之を存す」 とあり、古来よく使われる言葉です。元の趙子昴にも「心を澄し慮を 静にす」の一句があります。 この二句を対句にして、大きく書いてみました。篆書と隷書と二通り 書きましたが、何となく伸びやかに見える方を出品しました。 一つの試作品ですが、また考え直してみる所存です。(2月17日) |