作品と解説 24                                         もくじへ
 
      
 壺中日月長
  こちゅうじつげつながし
                         232cm×54cm                 
   壺中、日月長し。宋の妙源の『虚堂録』
にある語で、「足るを知って道に親しむ楽し
み」をいう。古来、人口に膾炙した言葉だ
が、意味は良いとして、画数の少ない字
が並ぶので、いざ作品に書こうとすると難
物である。                  
 
   
は、武威漢簡にみる心持ち右下がり
の字を使った。右肩下がりの感じを強調し
てみた。                     

   
は、磚文をイメージした。加熱に
より直線も微妙にゆらぐ、その揺らぎを取
  り入れようとした。               
  
   
は、袁安碑(92年)などにみる篆体
を使い他の四字との調和、統一感を考えた。

   
は、西狭頌(171年)にみる、隷書と
は言え篆体の名ごりを残すものを用いた。
右下に余韻を響かせようとしたが、如何であ
ったか。                    
  
 

 
 一字が50cm四方位になるので、長い
羊毛筆を使った。墨もちが良いように考え
た。                       
 隷書ではあるが、漢代金文にみる「く
ずれた篆書」の要素と、右肩下がりの親
近感と、おおらかさ、等々、欲張った意図
を、細かくてのびやか運筆でまとめようとし
たのだが、結局やはり変てこなものになっ
てしまった。                   
  それでも、白の面積が多く、明るい印象
を与えたせいか、展覧会場では人気作の
一つであった。                

1990年、第25回北城書社展出品
          
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