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「硯と文房諸宝 」(中国の水墨世界5)    

     任道斌・関乃平 著 / 井垣清明 訳  露満堂
          本体2500円+税








唐 箕形石硯 上海博物館蔵
縦18.9cm×横13cm×高さ4cm
新石器時代 北首嶺双格石研 陜西省宝鶏市出土 中国歴史博物館蔵
縦17.8cm×横14cm

文房四宝に関する解説には、愛好

家による愛好家のためのものが多

く、客観性を欠いたいわゆる「おた

く」的になりがちである。本書はそう  
いう点に配慮し、できるだけ系統

的・網羅的に 硯と文房諸具につい

て解説している。硯についての記述

が約半分。読み物としても面白く、

楽しみながら歴史的な知識を得る

ことができる。豊富な図版も魅力

的。鑑賞品として、また実用の道具

としての文房書具の魅力満載の一

冊。
      
 B5判・110頁


     芸術新聞社『墨』157号
      (平成14年7.8月号)
       「今月の7冊」より
 

本書は中国美術学院編纂、任道斌・関乃平監修

の「中国の水墨世界シリーズ(全五冊)の五、

最新刊。1997年西湖のほとりで開催された「第

一回国際水墨画教学研討会」の成功を受けて、

「中国水墨画初級教材」として企画、刊行された

のが本シリーズである。他の4冊も全て日本語

版が出版されており題名は次の通り。

「中国絵画の流れ」「書道と篆刻の魅力」「花鳥

画の魅力と技法」「山水画の魅力と技法」

中国の書画、文学と文房具は、古来、切り離せ

ない密接な関係を持つ。硯を代表とする文房文

化は現代に至るまで、重要な部門であり、関連

書籍も数多く出版される。本書は初級教材とし

て企画されており、硯の歴史を中心として、豊

富な図版(149)と簡潔な解説、余裕を持ったレ

イアウトによって読みやすさ、見やすさに心配り

がなされている。解説の中には中国文化に造

詣の深い書家井垣清明氏による訳者註が随所

に挿入されており、更に理解を助ける。その内

容は「初級」に止まらない深さがある。

修美社 「修美」 No.79 (2002.7) より





漢 双鳩蓋三足石硯故宮博物院蔵
直径14.8cm×高さ15.7cm