手袋・後書き

(後書き、というか裏話的な。
ここはこれこれこういうことだったんだよ、みたいな、そういう書き手の意図は知りたくない、という方はご覧に
ならないでくださいね)

(アニキューDVD6巻の特典ドラマCDの内容に触れています。こちらも知りたくないという方はご注意!)

(本文の間に、
この色、で書き足しています)





クリスマスイブ、田中・西谷企画のプレゼント交換会が終わって、みな、三々五々、家路につく。

ひとりだけ、仮装していた旭は、人より着替えに時間がかかった。

CDの最後らへん、仮装した旭の後ろだけ残して照明を消すとか言ってたんで、部室にはそんなにいくつも
照明ないよな?だったらここは体育館かと思い、
なら旭は体育館で脱ぎ、また服を着て、(そのあいだ他のメンバーは先に部室に移動したりしつつ)、最後に
部室でジャージから制服に着替え…、という流れで時間がかかったものだと思ってこう書いたけど、
よくよく聞いたら最初のほうで部室って言ってた…(゜▽゜;
しまった、ひとりだけ脱いでいたぶん旭のほうが着替え速かったかも…
元ネタのCDの内容を知っていて、違和感を覚えた方いらしたらすいません… 私の頭の中ではこういう流れ
でした…(´▽`;


『悪いスガ、駅前の店で予約したケーキ、取りに行ってって頼まれてるんだ。それで、その、バスの時間が…』
と、大地に部室の鍵閉めをお願いされた俺も、まだ中で、荷物の整理をしながら、旭を待っている。

久しぶりに読み返してみて思ったけど、ここで初めて、このSSが菅原の一人称、とわかるのはあまり親切な
作りじゃなかったかな…(´▽`; (だって自分で導入部分読んでも、これ三人称かと思ったもの(;▽;)


俺がもらったバレーボール大のプレゼント、これはどう入れ方を工夫してみても、鞄に入りそうにないなあ…
仕方ない、これはまた明日、紙袋でも持ってきて…

春高予選は勝ち進んでいるという前提で書いてます。原作がどうなるかわからないのに負けた前提でSSを
書くのは縁起悪いかなあと(苦笑)
だから、クリスマスのあとも、年末ギリギリまで練習があるつもりでの、『また明日』、です。

あとスガさんがもらったこのプレゼント、これ持ってきた人は紙袋に入れて持ってきていたけど、プレゼント
交換のときに袋から出して、その袋はたたんでカバンに入れてそのまま持って帰った…、ということにして
います。
もうちょっと滞在してくれてたらスガさんもその人に、なんか紙袋とかないの?と尋ねて袋ももらったでしょう
けど、そうされると私が困るのでバスの時間があるからと帰っていただきました(笑)


「スガお待たせ、服、着た」
振り向くと、制服の上にぶ厚いダウンコートを着こみ、太い毛糸で編まれたマフラーを首にぐるりと巻いて、
もこもこに着ぶくれた旭が立っていた。

旭は筋肉質だしそこまで冷え性ではないと思うんですけど寒がりなほうがかわいいかなと思って(´▽`)

「えっあ、うん、先、出てて」
旭はうんと頷き、部室から出て行く。

背後から声をかけられて、あーびっくりした。ヤバイヤバイ、この、旭のために別に持ってきたプレゼント、
見られるとこだった。あぶないあぶない。

久しぶりに自分で読んで、なんでこの人びっくりしてるんだろう?と思った…(´▽`; (だめじゃん!(;▽;)
書いている自分は知ってる情報でも読んでいる方は知らない情報、の取り扱いについては常々気をつけな
ければ…と思ってますが出来てなかった…
スガさんが旭に対してなにか秘密を抱えていることはここまでのどこかでほのめかしておくべきだったな…
今後の課題だ…(´▽`;


交換会のために用意した、プレゼントのソックス。
もし、当たったのが旭だったら、これ、ソックスの中身、と、あとでもうひとつ、プレゼントを贈ろうと思っていた
けれど。

ソックスなのは元ネタのドラマCD通りです。
なんだその中身は他の人から入れてもらってねみたいな他力本願なプレゼント、そんなのが旭に当たったら
どうするつもりだったんだよ(´▽`; …ん?いや、もしかして…? と、思ったことがこのSSになりました(笑)


そううまくは、いかなかったな。

こっそり、他の人と差をつけるつもりだったしね…(´▽`;

銀色の雪の結晶の模様があしらわれた、白くて小さな袋。中には落ち着いた灰色の、毛糸の手袋。
西谷や清水みたいに、手の小さい人に当たったらどうするつもりだったの?と尋ねられたら、『旭に当たる気が
したんだ』、と、答えようと、そこまで考えてたのになあ。

うちの旭は、自分だけが二段構えでプレゼントをもらえるとかそんなこと微塵も思ってないし、旭に当たる気が
したんだと菅原さんが強く言い切ればそういうものなのかなスガすごいなあとなにも考えず納得する(苦笑)


まあいい、これは、もう、すぐやってくる、旭の誕生日に渡そう。これはクリスマスプレゼントだから、誕生日の
ぶんをまた別に、なにかもうひとつ、プラスして。

クリスマスプレゼントとしてあげるつもりだったものを誕生日プレゼントに流用するなんてたとえ旭がそのことを
知ることがなくてもうちの菅原さんはイヤだったので。


ああ、旭、着替え終わったし、早く行かなきゃ。あああ、あと、びっくりしたらちょっと喉が渇いてしまった。
坂ノ下の自動販売機でなんか買おう。
俺は、財布から小銭を出すとポケットに入れた。寒い中、いちいち財布を出すのはめんどうだからな。
四角い布を縫い付けただけの、ほとんど飾りのような大きくないポケットだけど、まあ、落ちはしないだろう。

旭が繋いだ手を自分のコートのポケットに入れるためにどっかに、菅原さんのコートのポケットは防寒の役に
立たない、ということを入れとく必要があったのでここにひょいっと。
コートのデザインはとくに決めてません。なんとなく、わりとかわいいめのダッフルコートかな、くらい。


急いで鞄に荷物を詰めこみ、部室を出て、鍵を回した。

ここらへんで手袋忘れたわけですね(´▽`;

「ごめん」
「ううん」

旭が、斜めに入った切りこみ型のコートのポケットから、これまたぶ厚い手袋を引っぱり出して、はめる。
外側がスエードで、内側がボアのやつ。見るからに、あたたかそうな。

旭のポケットの描写ってこれで伝わったかなあ?(´▽`;
原作単行本2巻カバー折り返し裏表紙側にいる及川のみたいな、あんな感じなのですが…!(苦笑)


鍵を鞄にしまって歩き出そうとすると、旭が言った。

「あれ、スガ、手袋しないの?」
「あ、うん、坂ノ下で飲みもの買おうと思って… そこでまた外すのもめんどうかなと…」
「ああ、そうなんだ」

たしかに、持ちにくかったり、滑ったりとかするよねえ、と、旭が笑う。

これは私がそうだからこう書いたんですけど、だがしかし…!(;▽;) (後述)

うん、それもあるんだけど、この、部室のドアの前の明るい場所で鞄を開けて、うっかり旭用のプレゼントが
本人に見えちゃってもイヤだしね。

スガさんが手袋を忘れて旭と手を繋ぐ…という流れにするのに、最初、スガさんが旭に部室に手袋を忘れたと
嘘をつく、という方向で書いてました。
手袋がないって言ったら旭はどうしてくれるのかな、という期待で。ほんのちょっとした出来心で。
しかしそれで書き進めてたらいざ旭が自分の手袋を片方貸すというところで私の中の菅原さんが、旭を騙して
寒い目にあわせて手を繋いで自分だけ嬉しい思いをするなんてもう舌を噛んで死にたい…!!!(;△;)
みたいな気持ちになってしまってにっちもさっちもいかなくなってしまったのでその展開はボツに。嘘じゃなく
ホントに忘れてもらうように変更。
クリスマスイブの話だからイブにアップしたかったのにアップできなかったのはそのせいなんだ(;▽;)


あ。

「雪だ」

気づけば、暗い空中に、白いものがちらほら。
話題を変えようと、少し大きくはっきりと、言葉にしてみる。

「わあ、ほんとだ!」

これがちょっと強く言うとすぐそっちに流されてしまう系の旭だよ(´▽`;

おお、旭、けっこう嬉しそう。

「降ると寒いからイヤだけどさ、けど、今日降るのはいいよねえ。ホワイトクリスマス」

うちの旭は女子力高いのでこういうロマンチックにはわりとすぐ食いつく(笑)

「ふふ、そうだね」
「けどやっぱり寒いな。行こ、俺もなにかあったかいの飲もっと」
「うん」

俺たちは並んで坂ノ下までおり、店の前の自動販売機で、俺は紅茶、旭はコーンポタージュを買った。

スガさんの紅茶はあれだ、Jワールドで14年の12月から15年の4月までやってたイベントの告知イラから。
午後の紅茶みたいな赤い缶を持っていたので、それで。旭のは適当におなか膨れそうなものを(苦笑)

というかあのイラスト、よく見たらスガさん手袋したまま紅茶の缶持ってたァァァ…!!!(゜▽゜;

まあそんなことは言わなければわからないことなんだけど、けどこのSSをご覧になった方に、
スガさんが買ってるのが紅茶なのはあの告知イラが元ネタなんだろうけど、けどあれ手袋してたよね…???
と、よけいな混乱をさせてしまっていたら大変申し訳ないのでここに記載しておきます。
すみません、私が手袋したままなの気づいてなかった(;▽;)
(気づいてたらもうちょっと書き方を考えたんだけど、(なるべく公式設定には寄り添いたいタイプの二次書き
だから)、ほんと気づいてなくて… スミマセン…(´▽`;


熱いプルタブをぷしゅりと起こし、口をつける。こごえた唇と指先が血流でじんじんした。
旭はおなかが空いていたのか、小さな缶をごくりとひと息に傾けた。大きく、喉が動く。

ああおいしかった、と、表情を緩めて、空になった缶をゴミ箱の中に落とす。金属と金属がぶつかる、かすかに
騒がしい音。

『かすかに』と『騒がしい』は矛盾するけど、あえてそうしています。
音の種類としては、騒がしい音、だけど、その音はあまり大きくは聞こえない、みたいなイメージ。


「スガも、ここで飲んでく?」

待ってるよ?と、優しく尋ねてくれる旭に、俺は笑って首を振る。

旭はごくふつうに尋ねているだけなのですが菅原さんの主観ではそう聞こえる(苦笑)

「いい。量も多いし、歩きながら飲む」
「そう?」
「うん、あ、だから、俺、今日はこっち通って帰るよ」

と、旭の家の方向を指す。旭が、ああ、と、納得した顔になった。
坂ノ下以外、ゴミを捨てられる場所がこの周辺にはあまりない。
けれど、旭の家に向かう道すがらにひとつ、自動販売機があるのだ。その隣りには、ゴミ箱が設置されている。

まあ、口実なんだけどさ。旭と一緒にいるための。

手を繋ぐのに空き缶はジャマ、しかしスガさんにポイ捨てさせるのも…、かといって空き缶をカバンに入れるのも
アレだし…、けど手に持っていたはずのものがいつの間にか消えてるなんてそんなの話として論外だし…
ということでこういうカタチに。
仙台の親戚の家の周辺を思い出しながら書いてたんですけど、住宅街ってゴミ箱ないよね?(´▽`;


立ち止まっているとたちどころに体温が奪われてしまうので俺たちは歩き出した。
熱い紅茶の缶を両手で握りしめ、ちびりちびり飲みこむ。
雪の降り方が、少し強くなった。
せっかく旭と一緒なんだからもっとゆっくりしたいのに、寒くてどうしても、言葉少なに、急ぎ足になってしまう。

せっかく今日、旭とふたりきりなのに。

そしてもう、紅茶も、指をあたためてはくれなくなった。自動販売機の明かりも、見えてきた。
ぬるくなってしまったそれをごくごくと飲み干し、ぺこりと潰す。

「ちょっと待っててね」

空き缶をゴミ箱に放りこみ、俺は旭にくるりと背を向け、鞄を開けた。寒い寒い。手袋手袋。

背中を向けるのは中を見られたら困るから。

…ん?

あれ?

ない?

明るく輝く自動販売機の正面に移動して鞄の中をまさぐる。やっぱり、ない。

部室で荷物、出したり入れたりしてたから…!

スガさんに当たったプレゼントがちょっと大きめのものだったおかげでうまく忘れたと嘘をつく展開からほんとに
忘れた展開にもっていくことができましたよかったー(´▽`;


「どうしたの?」
「あ、あさひ」

斜め後ろから旭が手元を覗きこむ気配に、慌てて鞄を閉める。

プレゼントが見つかったら困るからね(´▽`;

「わ、忘れてきた。手袋」
「えっ」

どうしよう、もう、ちょっと戻って取ってくるとか言える、距離じゃない。

寒い。むき出しの手の甲に雪が触れる。
ああ、おろおろとここで立ち止まっているわけにはいかない。歩いていないと、風邪をひいてしまう。

「スガ、」
「仕方がないから、このまま帰るよ。戻るより、帰ったほうが早いだろうし」
「あ、うん、」
「ごめん待たせて。行こう」

俺は両手をポケットに突っこんで歩き出した。
小さな、薄い布一枚。あまり防寒の役には立たなさそうだけど、ないよりは。

「スガ、ちょっと待って」
「え?」

俺の曲げたひじを、旭が掴む。
引き止められて、振り返ると、旭が自分の左手の手袋を外して、ハイこれ、と、俺によこした。

「え、けど、」

これじゃ旭が、と言うのを旭が声を出して遮る。

「いいから、とりあえずそれ、はめてはめて」

早く、と、珍しく旭が強い調子で急かす。俺はかじかむ右手で急いで左手に旭の手袋をかぶせた。

珍しく強い調子で急かしているのは単に寒いからで怒ってるからとかではないです(苦笑)

ああ…

大きい、そしてすごく、あったかい。

アニメの町内会の試合で手と手とパチンとタッチするところを見た感じ、たしかだいぶ手の大きさに差があった
はず。


思わずほっと息をつく俺に、旭が尋ねた。

「ちゃんとはめた?」
「う、うん」

じゃあ、と、旭は少し笑って俺の右側、真横にぴたりとくっついて、立つ。

「こっちの手は、いっしょにここに入ってて?」

えっ。

俺の右手は旭の左手に包みこまれて旭のふかふかのダウンコートのポケットに、すっぽり収まっている。

「えっ…」
「ちょっと恥ずかしいかもしれないけど、けどもう、暗いし、今、誰もいないしさ」

ぽかんと右手の入ったポケットを凝視する俺の頭の上から、これならふたりともあったかいでしょ、と、
あたたかい旭の声が降ってくる。

旭はごくふつうに言っているだけなのですが菅原さんの主観では以下略(苦笑)

「あっ、うん、ソウデスネ…」
「うちの近くまできたら、右のも貸すね」

それでいい?と、旭が返事を促すように、俺の手をきゅっと握った。

旭の手、あったかい…

じゃなくて。

俺、今、旭と手を、

手を繋いでるのか。

あー!!!!!

恥ずかしさが爆発するみたいにこみ上げて、顔が熱い。上向けない。息も出来ない。

「スガ…?」
「…なんなの…、これ…、神なの…?、さっきのは、仮装じゃなかったの…?」

さっきの仮装というのはドラマCDで出てきた旭のキリストコスのこと。
私は見てないんですけど、たしか本誌か増刊に掲載された番外編かなんかにそんなネタがあったんですよね?


あははは!と、旭が大きな声で笑った。

「これくらいのことで、神とか」
「いや、だってさー…」

嬉しくて、死にそうだから、今。

クリスマス、雪降る中、旭と、手を繋いでいるなんてさ。

けど、それは言えないから。

「この寒い中、手袋忘れたときの絶望といったら…、まさに地獄に仏だよ…、あ、神じゃなくなっちゃった」
「ははは」

喋っているうちに、照れくさいのも落ち着いて。

「あったかい。ありがとな、旭」

旭を見上げてにかっと笑うと、旭もほっとしたように笑った。

「よかったそう言ってもらえて。スガ黙ってるから、嫌なのかと…」
「そんなことない!」

思わず大きな声が出てしまった。旭がびっくりして目を丸くする。

「あ、ごめん、大きな声出して…。嫌なんてこと、ないから!すごく、嬉しいから!あったかいから!」
「あ、うん、なら、よかった」
「うん、ありがとう」

俺はぎゅっと旭の左手を握った。旭も、俺の右手をぎゅっと握り返してくれる。
それから、俺の手を引いて。

「じゃ、行こうか」
「うん!」

なんだか、もう、まったく寒くない気がした。雪も冷たい氷の粒じゃなくて、ただ、綺麗なだけのものに見えた。

ああ、家になんか、永遠に辿り着かなければいいのに。

旭となら遭難してもいい…

けど、足を前へ前へと動かしているんだから、そういうわけにもいかず。

あの角を曲がって少し行けば、旭の家、というところまで、きて、しまって。

学校と旭の家の位置関係については、ほぼ横に一直線の並びかなと思ってます。
旭の家から、小高い場所にある神社へあがって坂ノ下の前におりるコースが小説版で出てきた近道なんじゃ
ないかなと。
上り下りがめんどくさいときは神社方面へは行かず坂ノ下の前の坂道をそのまま下って、平坦な道を通って
神社をコの字型に迂回して帰る。このSSは迂回コースを通って帰っているイメージです。
コの字の書き始めが学校だとするなら、『あの角』は、コの字のふたつある角のうち、下の角にあたります。


「旭の手、あったかいから、離したくない…」

本当は、旭とずっといたいから、離したくないのだけれど。言えないから、あくまで、あったかいから、なのだと。

「俺もだよ、スガ」

驚いて、言葉が出なかった。じっと、旭の表情を見つめる。

「誰かと手を繋ぐなんて、子どものころ以来だけど、いいな。あったかくて、たまにはこういうのも」
「…うん」

そういう、意味かあ…

うちの旭は妹がいる設定なので、誰かの手をひくとかそういうことをさほど抵抗なく出来てしまう子。

落胆が顔に出ないよう、俺は努めて明るい顔を作って、そうだね、と笑う。

「けどいつまでもこうしてると風邪ひくな。スガ、手はこのままにして、ちょっと待ってて」

するり、と、旭の手だけがポケットから抜けていく。

ああ…

言われたようにポケットに手を入れたまま待っていると、旭が右の手袋も取って、ハイ、と差し出した。

「ありがとう、旭」
「ううん」
「じゃあごめん、借りるね。明日返す」
「うん」

両手が、旭の手袋で、とてもあたたかい。

旭が、むき出しになった両手を、ずぼっとポケットに入れる。

「じゃあまた明日。気をつけて」
「うん、旭も」
「俺は大丈夫だよ、もう、すぐそこだしさ」
「けど手袋ないし、転んだらいたい」
「まだ積もってないし、転んだりしないよ」

あ、

思い出した、

プレゼントの、手袋、

あれを、

今、

けど、

なんて言って?

「ふふ、スガはすぐそうやって俺の心配ばかりするんだから!じゃ、また明日!」

迷った一瞬の間、旭は笑って手を振って、踵を返して、行ってしまった。

「あ…」

残っているのは、旭の手袋の、ぬくもりだけ。

「ごめんな、旭…」

なにか適当な理由でもつけて、渡してしまえばよかったかな。

旭の姿は、もう暗闇に見えない。

「…帰るか」

立ち止まっていると、寒い。雪が顔に触れると、痛い。

「あさひ…」

歩きながら、手袋をはめた手を、ぎゅっぎゅっと、握ってみる。顔は寒いけど、手はとてもあたたかい。

「まだ旭が…、握ってくれているみたいだ…」

嬉しいな。

ふふっと、こごえた頬が緩む。胸の中が、ぽっと、明るくなる。

旭が、手袋を忘れた俺の手を、握って、あたためてくれたなんて。

「ふふ」

嬉しい。

嬉しくなって、少し、駆けたくなってしまう。俺は両手を、ぎゅっと握りしめた。足が、大きく前に出る。

「ふふっ」

全力疾走は、あぶない。けど、少し早足になるくらいなら。

弾むように、スタスタ、雪の中を歩く。

「あさひ」

ごめんな、この手袋、借りてしまって。少しの間とはいえ、寒い思いを、させてしまって。

「けど、」

思い出す、旭が手を握ってくれたこと。そして今、感じている、旭の手袋のあたたかさ。

だからごめん、俺は、俺はやっぱり、

「うれしい」

言葉に出して、呟いて、俺はひときわ強く地面を蹴った。少しだけ走って、立ち止まって、空を見上げる。
雪が、とても綺麗だ。

ああ神様、ごめんなさい!けど、ありがとう!!!

旭と別れてからのくだり、冗長かなーと思ったけど菅原さんがこう思ったからそのままいっちゃった!(´▽`;
神様ごめんなさいというのは、旭に寒い思いさせたのに手袋貸してもらったの嬉しいって思ってごめんなさいの
ごめんなさいです。
けど寒い思いさせて申し訳ないけどそれでもやっぱり嬉しいから神様ありがとう、なのです。

旭に寒い思いをさせたくないのならプレゼント用の手袋を自分用に買ってたヤツとかなんとか言って使えば
いいじゃんという感じかもですが、スガさんも、まさか旭がああいうことをするとは思ってなかったってことで、
ひとつよろしくお願いします(´▽`;

ここらへんも当時だいぶ迷ったような… 旭かわいい大好き、の菅原さんならここで本当は旭にプレゼントする
つもりだったと白状しちゃうかな、白状してこれはめて帰ってって言うかな、と思ったけど、そうすると旭が、
えっ?(゜△゜;
となるので、(だったら手を繋ごうとしたときにそれは俺によこして旭のしてるの貸してよって屈託なく言うんじゃ
ないのスガなら、どうして黙ってされるままに手を繋がせていたの、とか思って)、そうするとスガさん説明に
困って話が終わらないので、スガさんがどうしようと考えてる間に旭には帰ってもらいました(苦笑)


(15/04/11)

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