バンデルフォンの小麦畑で(前編)・あとがき

いろいろ捏造設定も多い話なので、それらのことについてなど。
雑誌のパッシュで出た情報ですが、11月発売の号に掲載されたホメロスの過去は話の中に反映しています。
12月発売の号に掲載されていた身長と体重は、そのデータを見る前に書き終えたのでそれについては反映
されていません。
なお、あとがきは本文中に、
この色、で書き足しています。





我がデルカダール王国の姫、マルティナ様が二十歳を迎える年、バンデルフォン王国第二王子との縁談が
この度めでたくまとまった。

私、ゲーム中のマルティナはだいたい24才くらいだと思ってて、(16年前に生まれたばかりの主人公を
抱えて走って逃げられるくらいだから、子どもといってもそこそこ体の大きな8才くらいだろうという計算)
で、ここでわざわざマルティナ20才と最初に書くのは、この話はゲーム中より少し手前の時期から始まり
ますよ、と言いたかったからなのですが、つ、伝わりましたでしょうか…!?(゜▽゜;
(伝わってなかったらほんとごめん(´▽`; ホメロスが32才から始まって36才でグレイグのところに行くと
いう話なんだこれ)
あと、バンデルフォンの王子と縁談がまとまっているのはホメロスにバンデルフォンに行ってもらうための
作劇上の都合です。
(作劇上の都合もあるし、そもそも他の国に適当な相手がいないこともある。クレイモランはシャールで
女性だし、サマディーのファーリス、ユグノアの主人公はまだ12才で子どもだし(´▽`;

まずはバンデルフォンへ姫が結婚のご挨拶に。一週間後、王子と共にデルカダールに戻って挙式の予定。

婿入りしてもらう場合って、もしかしたら王子がデルカダールにきてくれたらいいだけなのかもしれないけど、
そうするとホメロスとグレイグが出会わなくなってしまうので、バンデルフォン国民にマルティナの顔見せを
しに行きますよという体で姫と将軍にはバンデルフォンに行ってもらいました(´▽`;

護衛の騎士、お世話をする侍女、そして将軍の私を引き連れ姫はデルカダール城を出発する。街道を南へ、
見送りの民に手を振りながらデルカコスタまで。
手配していた観光地ソルティコや貿易港ダーハルーネの土産物もたんと積みこみ、王族専用の立派な船は
ゆっくりと陸地を離れた。

最初は、デルカダールからいちばん近い海に面した街、ということでソルティコから船に乗ってもらうつもり
でしたが、ゲームで確めてみたところ、デルカダールからソルティコまで行こうとすると、ナプガーナ密林を
通らなくてはならなくて。
さすがに一国の姫君に密林を通らせるのはまずかろうと、デルカコスタに変更。
あそこならデルカダールから石造りの道が続いているし、デルカダールにルーラしたとき船がいる場所でも
あるので発着は可能だろうと。
けど、ダーハルーネのような大きな港というわけでもないので、常に船の行き来があるというのではなく、
王族がどこかに行くときのみ特別にここに船を着ける…、みたいな感じで。
なお、ダーハルーネの土産というのは、最初、バンデルフォンの小麦が他の街でこんなふうに加工されて
役に立っているんですよとマルティナが義理の両親になるバンデルフォン王と王妃に見せてあげるために
用意した、みたいなシーンがあったんですけど、あまり本筋に関係ないのでカット。土産という言葉だけが
残りました。

穏やかな内海を、船は滑るように進んでいく。

神話の時代の勇者ローシュが邪悪の神とやらを倒してくれたおかげで、恐ろしい魔物の大群が大国を一夜に
して滅ぼす、などの大きな災厄は既に大昔のものとなった。
五つの大国の結束も固く、国と国との争いというものも私は本の中でしか知らない。
世界に起こる災いごとの規模は小さく、局地的なものとなった。だから私も、将軍そして軍師でありながら
魔物の大群や他の大国から国を守るために城の奥深く控えているのではなく、少数の賊や魔物から姫を
守るため外に出ることができる。概ね平和なのだ、今は。

ゲームの最終エンド後、時のオーブを割って過去に戻ったセニカが邪神ニズゼルファを倒し、ローシュの死も
回避した、という設定です。
この世界には魔王ウルノーガがいないので魔物の統率もとれてないし、さほど強くもない感じ。あと、あまり
治安が悪いと軍事の最高責任者のホメロスがほいほい国を離れられなくなってしまうので、という作劇上の
都合ももちろんあります(´▽`;
そういえばニズゼルファを倒したらバンデルフォンは建国されなくなっちゃうんだっけ?と思いましたが、あの
国はニズゼルファがいたせいで荒廃した世界の人々を救うためにネルセンが建国した…、とかだったから
だいじょうぶ建国されるはず。
しかしサマディーは倒せなかったニズゼルファを封印したあの星ありきの国なんですよね。星の番人だから。
けどそこは、自分が過去に戻ったせいで国がひとつなくなってしまうほど大きく未来が変わるのはよくないと
セニカがなんらかの理由をつけてサマディーが建国されるように仕向けてくれただろうと思いたい…(´▽`;

甲板に立って海上に目を配る私の、腰の下まで伸ばした髪を風がさらさらと撫ぜていく。この船旅は順調に
終わるだろう。

三日後の朝、何事もなくバンデルフォンの船着場に降り立った私たちは姫を含めた全員が全員、わあ、と
感嘆の声を漏らした。遠目からでもわかる、小麦畑の広大さ。
荒地の多いデルカダールは、開墾を進めたとはいえ自力でまかなえる食糧は潤沢というには程遠い。
羨ましいものだ。
だからこそ、この結婚でデルカダールとバンデルフォンの結びつきが強くなることには大きな意味がある。
絶対に、失敗があってはならない。

三日後というのはとくに根拠があるわけでもなく、だいたいそれくらいかなと。
そしてデルカダールという国は、城下町お金持ちゾーンの家で読めるこの国の歴史の本(デルカンとダール
兄弟のあれ)を読むと、不毛の土地だったけど開墾して豊かな土地になったらしいんですが、けどそれでも
フィールドをうろうろするとやはり平地が少ないなという印象なので、ぎりぎり自給自足が可能なくらい、じゃ
ないかなと思っています。
ちょっと気候が悪いともうアウト、みたいな… だからみんな小麦畑を見るとテンションがあがるのです。

迎えにきていた馬車に乗り、一路バンデルフォンの城へと向かう。道の両側に見える小麦畑では、今まさに
収穫の真っ最中だ。
風に揺れる黄金の穂先、きびきびと手を動かして働く者たち…、とても美しいと思った。

豪奢な城門をくぐると、そこには色とりどりの花、香り。これが、花の都と謳われるバンデルフォンの城。
侍女たちの馬車から押さえ切れなかった歓声が聞こえてくる。もう城内に入っているというのに、はしたない。
だが、気持ちは私にもよくわかった。

ゲーム中では廃墟が残るだけで在りし日のバンデルフォンのお城がどんな感じだったのかはわからないけど
花の都だそうだから、こういう、華のある雰囲気だったのではないかなあと。

バンデルフォンの王と王妃、そして姫の婚約者である第二王子は明るく気さくで、マルティナ様と私だけでなく
十数人いる護衛の者や侍女の全員を玉座の間に招き入れ、遠路はるばるよくきてくれたと歓待した。
これは破格の扱いだ。みな驚き、喜ぶ。旅の疲れも吹き飛んだ。

バンデルフォンは、食糧は潤沢、花と芸術を愛する国民性、ということで、王族の方々は皆さん明るくオープン
気さくなお人柄、ということにしています。余裕のある感じ、楽しいことが大好き、というイメージ。
そして身分関係なくフラットに接するような。
あと、建国者のネルセンはたぶん一般人だと思うんですよね。セレンと結婚して海底王国に行こうかなって
くらいだし。そういうの、どこかの国の王族なら無理だと思うので。だから代々、あまり威張らない、庶民に
精神的な距離が近い王様だったんじゃないかなと。

当初の予定通り、姫は王たちと昼食へ。護衛の者は今後の警備についてこの城の兵士と打ち合わせるため
兵舎へ、侍女たちは姫の滞在する部屋を整えるために、それぞれ案内の者に連れられ出て行った。

私と護衛の者たちは兵舎で、デルカダールの者は姫が城から出るとき以外は兵舎及び併設の食堂内にて
待機、ホメロス将軍のみ姫の供で城内を歩くことは許可されるがひとりで行動することはまかりならぬ、等々
取り決め、その後、では我々も昼食にしましょうか、と食堂へ促された。
自由に外に出られない私たちのために、ここの兵士たちがバンデルフォンの美味いものをいろいろ用意して
くれているのだそうだ。ありがたい話だ。

さすがにデルカダールの兵士が他国の城の中を自由にうろうろできたらまずかろうということで、こんな感じに
してみました。常に誰かバンデルフォンの兵士といっしょにいてくださいと。
作中ではホメロス以外のデルカダール兵士の描写はないけど、たぶんみんなバンデルフォン兵士といっしょに
美味しいもの食べたり時間のあるときはゲームとかして楽しくすごしてると思うよ(´▽`)

訓練用の中庭に面した食堂へと続く回廊、移動する部下たちの後ろについてそれとなく様子を窺う。並んで
歩くバンデルフォンの兵士たちとのやりとりはなごやかで、見て微笑ましい気持ちになる。これなら、一週間
うまくやれるだろう。

「ホメロス将軍」
打ち合わせの席で中心になって場をまとめてくれていた兵士長の声だ。私は振り返った。
「はい、何か?」
上背のある兵士長がすぐ隣りに立ち、なぜか照れくさそうに頭をかく。
「あ、いえ、とくに何かというわけでは…、」
だったらなぜ呼び止めた。兵士長はもごもごと言葉を続ける。
「ただ、その、」
「はい」
「ホメロス様みずからおいでになるとは思っていなかったので… 驚きました。国のことはよろしいのですか?」
「大事なバンデルフォンの王子を迎えにあがるのです。できる限りのことをせよとの我が王からの仰せです」
愛する息子を遠い異国の婿にやる、その決断をしてくれた親の気持ちを考えたら、こちらも礼をもって尽くすのが
当然だろう。
「それは、ありがたいお話です」
「恐縮です」
「ところで、」
なんだ、まだ何かあるのか。
「ホメロス様の書かれた各種魔物への対処法、私も読みましたよ。ためになりました」

ゲーム中のデルカダールが軍事的な意味でも他国に対する発言権的な意味でもなんだか強そうなのは、
たぶん、魔物討伐のために軍を派遣してあちこちに貸しを作っているからだと思うのですが、けど作中の
世界は平和な世界でそういう要請は少ない。
しかしだからといって軍隊の代わりに他国に提供できるような特産品などもなさそうだ、というわけで、
ホメロスが本を書いてそれを他の国に売ったりしています。対人の戦術はさすがに軍事機密だろうけど、
魔物への対処法なら各国で共有してていい情報だろうし。

「あれは、クレイモランの古代図書館に文献を残してくれていた先人たちの仕事の賜物ですよ。私は書かれて
いる内容が今にも通じるか検証して、編纂し直しただけです」
だから巻末に参考文献を記してあるだろうが。
「ご謙遜を、あなたの知将ぶりは遠くここバンデルフォンまで聞こえてきていますよ」
「それは、もったいないお言葉を」
この男はいったい何の話がしたいんだろうか。滞在中はいろいろ密に連絡を取り合わねばならないのだから
そのために親睦を深めたくてしている雑談なのか。ならこちらからも何か言ったほうがいいのか。だったら早く
食堂に行って、

「あっ、」

気づいた。今、周囲に、私たちふたりの他、誰もいない。
一緒に兵舎を出たみなはもう行ってしまったのだ。

「ホメロス様、私はあなたに憧れていました。よかったら今夜、私の部屋であなたのその知識の一端にでも
触れさせていただけませんか」
「残念ですが、今夜はマルティナ姫の会食の供で城の外に出て、おりませぬ」
「なら戻ってきてからでも… 部屋に、美味い酒を用意して待っていますよ」
「いえ、私たちは城内を勝手に歩くわけには参りませんので…」
「なら、朝まで私の部屋で共にすごしましょう」

11月発売のパッシュで、ホメロスは社交界で他国の将に遅れをとらないように高級な香水をつけたりしてる、
という情報が出たのを見て、あっそれはきっと他国の将からセクハラとかされてるに違いない(゜▽゜) と思い
出してみましたそんな感じの人(´▽`)
兵士長の誘い方が性急すぎるなとは自分でも書いてて思ったけど、こういうひとりよがりなぐいぐいくる話の
通じなさそうな人っているよなと思いそのままに(苦笑)
この兵士長はあとで蹴り飛ばされることが決まっているので、この人を雇っているバンデルフォン王族の
イメージがあまり悪くならない範囲で感じの悪い人にしようと思っていました。じゃないと蹴られたときに
スカッとしないしな(´▽`)
蹴られたら恥じて出てこなくなったのでたぶん根は悪い人ではないんだ… 憧れのホメロス将軍に会えて
ちょっとテンションあがっただけで…(´▽`;
(たぶん、どっかでホメロスのこと見かけてたんだろうね。ホメロスも、ゲーム中のユグノア滅亡時のグレイグ
みたいに五大国会議のお供したりとかしてただろうし)
ところで、兵士長、って、10人くらいの兵士のグループをひとつ任されてる人、みたいなイメージで私は書いて
いますが、もしかしてもっと偉い人に使う役職だったりしたらごめんな!?(゜▽゜;
(スイマセン少なくとも将軍よりは下だろうからいいかなと思って…(´▽`;

朝、一緒に出ればなにも問題ないでしょうってこちらとしては大いに問題がある。だいたいお前と夜を共に
するために私はバンデルフォンにきているわけではない。
一介の兵士長風情が、無礼だとは思わないのか。そう言ってしたたか蹴り飛ばせたらどんなにか。
しかし私は、父親代わりの、大恩あるモーゼフ様から、姫とこの国のことをよろしく頼むと仰せつかっている。
揉めごとは避けたかった。

デルカダール王のことをモーゼフ様と名前で呼ぶのはそれだけ親しい間柄なのだということで。なお王の
名前は公式ガイドブックから。

「ホメロス様のこの髪… 日の光のもとで見てもとても美しいですが、夜、燭台の明かりのもとではどんなふうに
見えるのでしょうね…」
兵士長が手を伸ばして私の髪をするりと撫でた。三十年と少しの人生、こういうことが今まで一度もなかった

冒頭でも年齢のことには触れていますが、マルティナ20才だけだとまだ、この世界はホメロスが36才より少し
若いところから開始です!(゜▽゜; というアピールが足らんかなと思い、ここでも念押しで年齢のことに触れて
います(´▽`;

わけではない。自分の容姿が他人からどう見られどう扱いたいと思われるのか私にだってわかっている。
しかし、何度されても慣れるものではない。不愉快極まりない。

ゲーム中のホメロスはグレイグというライバルもいますし、出世のために自分の容姿を利用することにそこまで
抵抗はないというか、嫌だけどしかしグレイグとは違う容姿だからこそできることがあると割り切ってるところは
けっこうあるかもしれないなと思うのですが、けどこの作中のホメロスは出世争いをしてないので、それより少し
潔癖度が高い感じで書いています。
あとはグレイグに触れられても嫌ではないという対比…、に、うまくなってたなといま気づいた(笑)

ん、と小さくうめいて兵士長が目をすがめた。昼を過ぎて傾いた日が回廊の屋根から射しこんできたのだ。
「兵士長」
「な、なんですか」
「お話の途中ですが、船の積荷が城に到着している時間かと思います。食堂に向かう前に一度、様子を見に
行ってもよろしいですか?もし荷降ろしが済んでいるようであれば、その旨侍女たちに伝えたいのです」
「ああ、かまいませんよ。では、ご案内いたします」
そう言って兵士長は私の腰に手を当てた。こいつ、少しばかり顔がいいからって図に乗るのも大概にしろ。
「兵士長、そういうことは…、その、人の目のある場所では、あの、」
困りますので、と、私は恥らうふりをして顔を伏せた。わかっています、と兵士長はここぞとばかりに私の体を
引き寄せる。ああ忌々しい。

あんまりぴしゃりとはねつけると腹いせになにされるかわからないからね。まったく気がないわけではないと
いう振りだけはしておく感じ。

他国の将軍との醜聞はさすがによろしくないとわかるのか、兵士長は倉庫に辿り着く直前すっと離れる。
願わくば、もう二度と近寄ってきてほしくない。

あの兵士長、ホメロス将軍に気に入られたいあまりになにかバンデルフォンの情報をデルカダールに流して
いるのでは?と見られたりするかもしれないから、みたいな。

荷降ろしをしている人夫が目に入ったので声をかけてみると、まさにそれがデルカダールからの船の積荷で
しかもちょうど、作業を終えるところだった。
ざっと数えた感じ、過不足はなさそうだな。よし、侍女に知らせてあとは彼女たちの采配に任せよう。

誰か、伝言を頼めそうな、城内に戻りそうな使用人はいないだろうかと、荷物の間をすり抜け、辺りを見回す。
高く積まれた荷物の山の角を曲がった先、人がいる気配を感じて私はとっさに足を止め、見上げた。

「あ…」

海だ。

ここなー!(´▽`; グレイグがニメートルだって知る前でね… もし自分より25センチ大きい人に出会ったら、
たぶん第一印象は、デカイ、だよな… 目じゃなくて…(;▽;)
けどもう書いてしまったし、ふたりの身長を知る前に書かれたものですと注意書きつけてこのままで…(´▽`;

じっと見ていると、美しい海のような瞳がぱちぱちと、まぶたに覆われる。私ははっと我に返った。

「失礼、思わず、見とれて」
「あ、いえ」
と、海の目を持つ大柄な男が少し微笑んで首を振る。よかった、ほっと息をつく。

この話はもともとツイッターで私が呟いていた、セニカが過去に戻ってバンデルフォンが滅びなかった世界線
デルカダールで将軍やってるホメロスとバンデルフォンで小麦作ってるグレイグが出会う、という一連のツイが
元ネタで、で、そのとき、城の倉庫にきたホメロスが納品にきていたグレイグに会うって言ってて、それで私は
なんかもう説明した気になってしまったんですけど、
けどこれだけ読んだらここで出てきた人がグレイグだってぱっとわからないのでは…!?(゜▽゜;
ということに書き終わったあとに気づいてですね…(´▽`;
これに関してももう書いてしまったので、ここにこうしてこれグレイグなんですと書き足してそのままで…(´▽`;

「申し訳ない、不躾に… 私の暮らすデルカダールは岩と山の多い土地、あなたの目のような美しい色に
出会うことは少なくて、つい」
そうですか、と、男は笑った。
「幼い子どものころ、両親に連れられて一度だけ行ったソルティコの海を思い出しました」

パッシュ情報によるとホメロスは没落した名門貴族の家の出身らしいので、こういうこともあったかなと。

「ソルティコ… 美しい海だそうですね。そんな海の色に似ているだなんて、光栄です」
「本当に、ずっと見ていたいくらい綺麗ですよ。あ、そうだ、ところで」
「はい」
「あなたは、この城で働いているのですか?もしそうなら、少し、頼みたいことが」
「あ、いえ、違うのです」
ゆっくり首を振る男に、ああ二回も失礼を、と慌てて詫びると、男はいいんですよとまた首を振った。
「あなたは先ほど、デルカダールの方だと仰っていましたね。あと、その鎧… もしかして、マルティナ姫の」
「そうです、供の者です」
「俺は、姫をもてなすための料理に使われる、小麦粉を納めにきたんですよ」
「あ、なら、バンデルフォンで小麦を作っている…」
「はい、農家の者です」

あー、さっきの目のあたりではわかりにくかったから、どうかここでこれバンデルフォンで小麦作ってるグレイグ
だって気づいてくださいと祈るような気持ち… スミマセン…(´▽`;

「そうだったんですね… バンデルフォンの小麦… デルカダールでも人気です。パンが美味しく焼けると」
「ありがとうございます」
「私も大好きです」
「それは嬉しいですね」
あっそうだ、と、男は腰に下げた袋の中を探った。
「よかったらひとつ、いかがですか。今朝、焼いたものです」
男の武骨な手が丸いパンを差し出す。おいしそう。そういえば昼をまだ食べていなかった。しかし…

作中のホメロスは基本的に漢字で喋りますけどこのときは空腹で知能も低下していたのでおいしそうも
ひらがなです(笑)

「ホメロス将軍!」
兵士長が後ろから私の肩を強く掴む。
「そろそろ、戻りましょうか。お時間が」

兵士長、おジャマ虫な感じが出てればいいなあ(´▽`)

「わかりました、すみません」
私は胸苦しく男に頭を下げた。
「申し訳ない、行かなければ… お気持ちだけ、受け取らせてください、ありがとう」
「あ、いえ、」
「素性のわからない者からの食べものなど、将軍は口にせぬ!仕事が終わったのなら、早く帰れ!」

と、兵士長は言ってますけど、実は、なになに集落のグレイグさんが今日なにをどれだけ納品にきます、という
ことを城の倉庫で受け取りする人は把握してるので素性はちゃんとわかっています。兵士長が知らないだけ。
グレイグも、あっこの人わかってない人だ(´▽`; って思ってる(苦笑)

口にせぬ、それは確かに、そうだ。だが、わざわざ言わなくてもいいだろう。結局、食べることはなかったのだ。
どうかお気になさらないで、という男の声を背中で聞きながら、私は寂しくその場を去った。

食堂に入ると、大部分の者は既に昼食を終えていて、なので私は部下のひとりに侍女への伝言を頼んだ。
せっかくの美味しいごちそうだが、この兵士長と一緒だと美味しいものも美味しくなくなる。
私が食事をもそもそ食んでいると、使いにやった部下が戻ってきて、人手が足りないのでデルカダールの

もそもそとはむ、が、ほんとしょんぼりうんざりした感じで、自分としては気に入ってる(´▽`)

兵はみな荷運びにまわってほしいとのこと。兵士長と離れられるなら万々歳だ。私は速やかに食事を終え、
席を立った。

デルカダールとバンデルフォンの侍女たちの指示に従い、荷物を各部屋に運び終わったころ、姫から声が
かかる。そろそろ城を出発します、兵舎まで呼びに行くのは面倒だから私のそばにいて頂戴、と。よかった、
これはついている。

王妃も招いての国一番の大貴族との会食は大いに盛り上がり、夜遅くまで話は弾み、よかったら泊まって
いらして、という奥方からの提案を、姫も王妃も喜んで了承した。もちろん、お供の私も姫と一緒にだ。
使いの者が城へと走り、バンデルフォンの兵を呼ぶ。兵士長は屋敷の外で寝ずの番をすることになった。
ざまあみろ。
私は、姫と扉ひとつ隔てられた次の間の、簡素だがふかふかのベッドでひとりゆっくりと休むことができた。

マルティナの護衛はもちろんデルカダールの兵士の仕事なんですけど、彼らだけに任せてもしなにかケガでも
されたら大変なので、マルティナを守るデルカダールの兵士(ホメロス含む)をバンデルフォンの兵士が守る…
みたいな感じです。
姫だけじゃなく、ホメロスも兵士も侍女もみんなお客さんだからということで。あと、自国の王妃もいますしね。

夜が明け、朝食をいただいた後、城に戻る。今日はマルティナ様と私と、あとバンデルフォンの兵士の誰かを
ひとり伴って小麦畑の視察だ。

あーしまった、ホメロス、モノローグでは誰に対しても敬語にしてなかったのに、ここだけ、いただいた、と妙に
丁寧な口調になってしまってる(´▽`; スミマセン…

あの兵士長は急な夜勤で疲れているだろうから別の者がくるだろうと思っていたのに、少し仮眠を取ったのか
元気だった。残念だ。

それだけホメロスにご執心だからなんですけど、まあ彼はこのあと蹴られます。

私たちは馬車に乗り、城から離れた集落へ。集落の中心部に馬車を止めたら、そこからはのんびりと徒歩だ。

教会とかちょっとしたお店などが集落の真ん中に固まってるイメージです。個人の家は各々の畑のそばに
あって、集落の中に点在してる感じで…

バンデルフォンの国民とじかに触れ合いたいし、なにより、お城の中で食べてお喋りしてるばかりじゃ、体が
なまっちゃうわ、と、姫様たってのご希望で。
城の役人がデルカダールの姫の訪問を集落の者たちに知らせてくれていたおかげで、みな、私たちに愛想よく
挨拶してくれる。なので、こちらからも話しかけやすかった。ありがたい。

「ああ、このへんからが春まき小麦の畑なのね」
今、収穫の時期を迎えているのは、昨年の秋に種をまいた小麦。このへんは、今年の春に種をまいた小麦。
穂にはまだ、緑の色味が残っている。

3DSのフィールドグラフィックを見ると、実ってるのとまだ緑のと二種類の畑があるから時期をずらして種を
まいているんだと思いました。小麦について調べると、実際に秋まきと春まきがあったし。
なので、作中でもそういうことにしています。

(以下18/05/30追記。
先日ツイッターで、滋賀県は五月の終わりにもう小麦の収穫の時期を迎えていると知り、そのとき初めて、
本州めっちゃ早いやん!!!(゜□゜;
ということを知ったのであらためて明記しておきますね。私が参考にしたのは北海道ー!ヽ(;▽;)ノ
なぜ北海道かというと、まず、小麦、収穫時期、で調べてすぐ出てきたのが北海道のことだった、そして
バンデルフォンは雪国クレイモランとさほど緯度が変わらないし、広大だし、ほっかいどうはでっかいどうと
いうことで北海道と似たような気候かなあ、と、そのまま北海道の、
秋まき → 9月中旬〜下旬に種まき、7月末収穫 春まき → 4〜5月に種まき、8〜9月収穫
というのを参考にしたんですが、まさか本州とこんなに収穫時期が違うとは(゜▽゜;
(けどたしかに、収穫前の小麦に雨はよくない、ということを考えたら、そりゃ梅雨のある本州では梅雨に入る
前に収穫しないと、となりますよね(´▽`; そこは知ってたのにどうして気づかなんだヽ(;▽;)ノ
これはさすがにどこかに書いておかないと、本州や九州の小麦畑を見たことある人には、
あれ?この話の収穫、遅くね?(゜▽゜;
となると思うので重ねてもう一度。この話の小麦の種まき及び収穫時期は北海道に準拠です!ヽ(;▽;)ノ
調べたら、小麦の種まきと収穫は北のほうほど早く種をまき、遅く収穫で、
北の北海道が9月〜8月、南の九州が11月〜6月
だそうで… もうぜんぜんちゃうやん…(゜▽゜; あー!これだから南北に長い国はー!!!ヽ(;▽;)ノ
当時、本州のことについても調べればよかったんですけど、バンデルフォンは北海道と似た感じだろう、と
思いそこだけ合致してればいいと思ったし、まさか同じ国の北と南でこんなに収穫時期が違うとは思わな
かったんですよね…(´▽`; スミマセン…
(追記終わり))


「このへんは人も少ないようだし、ぐるりとひと回り歩いたら引き返しましょう」
「は、」

緑残る穂先から黄金の穂先へ。ちょうどその境目あたりにきたとき、ガサガサと小麦が揺れる音がした。
人が畑をかき分けて歩いてくるような音に似ているが、音のした方には誰もいない。

うわっ、と兵士長が声を上げた。キラーパンサーだ。キラーパンサーが飛びかかってきたのだ。
マルティナ様が素早く、自分と魔物の間に私を挟む形で私の背後に移動する。こういうときの姫の見極めは
確かだ。私はキラーパンサーの正面からドルマを放ち、怯んだところを剣で追撃。仕留めた。

マルティナは強いけど同時に立場をわきまえてもいるので、ちゃんと護衛が護衛しやすいように動きます。
あと、この世界の魔物の強さはだいたいゲーム中の異変前より少し弱い感じで。
襲撃役のモンスターは、攻略本で異変前にバンデルフォン地方に出るモンスターの中から選びました。
それからホメロスが使う呪文なんですけど、ゲームに準じてドルマしか使わせていません。
パッシュ情報で判明したクレイモランに留学していたことを考えると、魔法の知識はそうとうあるのだろうと
思うのですが、ゲーム中で使っていない魔法を使わせるとややこしくなるかなと…
そういえば襲ってくるのがモンスターではなく賊のパターンも考えていました。バンデルフォンの小麦を奪う
不毛の土地のデルカダールめ!みたいな感じで。
けどそれはさすがに今後の国と国とのつきあいがぎすぎすしそうだし、人を切るのもな…、とモンスターに。

「ホメロス、まだいるわ!」
私たちを取り囲むようにガサガサ、ガサガサ、音が移動する。その円は、小さくこそならないものの少しずつ、
少しずつ横にずれていく。ちっ、足場の悪い小麦畑の中に入らざるを得なくするつもりだな。
キラーパンサーの黄色い毛皮が金の穂先に紛れてわかりにくいが、おそらく三頭は確実にいる。

マルティナ様は、懇意にしているユグノアの王妃からあの国の習わしを聞いてみずから霊山ドゥーランダでの
修行を願い出る剛の者だ。国に戻ってからも鍛錬を欠かさない。そのへんの並みの兵士よりずっと強い。

マルティナはゲーム中でドゥルダに行ったとき、自分は我流で強くなってしまったからきちんと基礎から
教わってみたかった、みたいなことを言っていたと思うので、ならばと修行に行ってもらいました(´▽`)
あと、ウルノーガがいる世界で経験した、自分の強さで人々を守りたいと思った記憶がわりと色濃く残っている
イメージ。

だけれど今はバンデルフォンの王子を婿に迎える他国の姫として、きちんとしたドレスに身を包んでいるのだ。
今日は歩くからと服も靴も簡素で動きやすいものを選んではいるが、しかし戦うにせよ逃げるため走るにせよ
いずれにしてもこの格好では分が悪い。

作中の服装の描写に関してはもう一貫して、詳しく描写しない、ということにしています。
(だってきっとボロが出る…(;▽;)
ご想像にお任せします。お好きな服を着せてあげてください…(´▽`;

油断していた。王族の血はやはり特別なのか魔物に狙われやすいと古文書で目にしたことは、あったのに。
せめてここにもうひとり、兵がいたなら…

捏造です。マルティナ一行を襲撃してもらわないといけないのでそういうことにしておいてください(´▽`;

そのとき、

ウオオオオオとものすごい雄叫びが聞こえて誰かが走ってきた。雄叫びのした方向にいたキラーパンサーが
そちらに走る。が、高い断末魔をあげて、一刀両断された。斧で。

グレイグの武器はなににしよう?農家だからなあ… くわ?すき?あっそういえばこの時代ならかまどに薪
だろうからきっと薪割り用の斧があるな!斧だ!ゲーム中でもグレイグは斧だしちょうどいい!(゜▽゜) という
ことで斧になりました。

あ、あれは、

昨日の。

「リタリフォン!ご婦人を!」

リタリフォンはデルカダールに属するものなのか、それともグレイグ個人に属するものなのか、と考えて、
やっぱりグレイグだよな、と思ったのでバンデルフォンでグレイグといっしょに暮らしてもらっています。
あと、これ封神演義をご存知の方にわかってもらいたいんだけど、私、初めてリタリフォンを見たとき、あっ
これ封神で言うところの黒麒麟みたいなキャラやろ!(゜▽゜) と思って活躍を楽しみにしていたんですが
(だって黒麒麟かっこええやん)、けど、あまり活躍もしないままグレイグがパーティーメンバーに加わって
しまい、リタリフォンともそれきりになってしまったので活躍するところを私が見たかった(´▽`;

男が叫ぶと、漆黒の馬が風のように走ってきて姫を狙っていた魔物を弾き飛ばした。荷馬車か農耕具から
外したばかりなのか、手綱を付けただけの馬にマルティナ様はドレスの裾を翻してひらりと飛び乗ると、

なにやらPS4版は馬で魔物を弾き飛ばせるらしいのでちょっと入れてみた(´▽`)
(なお3DS版は接触したらそのまま戦闘だよ(苦笑))
あと手綱だけというのは鞍も鐙もないってことです。それでも飛び乗れるマルティナかっこいいー!(゜▽゜)
みたいなシーンにしたかった… (マルティナ好きなんですよ…(´▽`)

「ありがとう!応援を呼んできます!」
と、一目散に駆け出した。

「及ばずながら、加勢いたします」
「ありがたい、と言いたいところですが、民を守るのが私たちの務め。姫を逃がしてくれただけで十分です。
あなたは離れてください」
「しかし相手は、そうさせてはくれないみたいですよ」
つい先ほど三対一になったのに、いつの間にか馬に蹴られたものが戻り、さらに二頭増えて、今、五頭の
魔物に周りを取り囲まれている。

収穫前の小麦が自分たちを隠してくれることをわかっているのだろう、キラーパンサーは姿勢を低くまるで
小麦の海に潜るようにして私たちのそばをゆっくりと回っている。

キラーパンサーの跳躍力はだいたいわかる。ひと飛びで獲物の喉をかき切るためにはこの程度の間合いを
取っているだろうという推測はできる。

本を書いているくらいだしな(´▽`)

だから、その辺にドルマなりなんなり呪文を浴びせてやれば、あぶり出せるはずだ。しかしそうするとせっかく
実った小麦が吹っ飛んでしまう。

描写入れられなかったんですけど、ひとつの畑の三分の一くらいはだめになった感じです(´▽`;

私たちに攻撃をしかけてくることもなくただぐるぐると回っているだけのキラーパンサーは賢い。小麦を駄目に
したくなくてこちらが火や氷の呪文を使いたがらないのをわかっているのだ。
このまま私たちが疲弊するのを待ち、こちらの緊張が切れたところですかさず飛びかかってくる腹だ。

そんな私の心の内を読み取ったように、男が言った。
「ここは俺の畑です!好きにしてください!」
しかし、と、私がそう思うのも心得ていますとでもいうように、

このへんはまあ、双頭時代も阿吽であってほしいし、今もそういう感じであってほしいなってことで!(゜▽゜)

「人の命のほうが大事です!」
と続ける。
「わかった、ドルマ!」
キラーパンサーの気配に呪文をぶつけた。当たりだ。ギャアと喚いて飛び出すのを男が斧でばっさりと薙ぐ。
驚いた。私が呪文を放つ呼吸に合わせて既に動き出していたのか。

このへんも。息が合っている感じにしたかった。このあと、デルカダールにこないかって誘うのもあるし。

「あと四匹!」
男が叫ぶ。ドルマ!手応えあり!あとは男に任せていい!私は振り向きざま背後にいたもう一頭に呪文を
ぶつけみずからの手で叩き切った。次は兵士長の近くにいる一頭!呪文で足をやられたのか鳴き声をあげ
その場に動かなくなる。兵士長がすかさず駆け寄りとどめを刺した。

兵士長にもちょっとはいいとこあげないとね。デルカダールからきた兵士たちの相手を任されてるんだし、彼も
それなりには有能なんですよと。けどまあこのあとすぐ、邪魔!って言われちゃうんだけど(笑)

最後の一頭はもう駄目だと思うだろう、なら呪文でいぶし出される前に仕掛けようと思うはずだ、私の背後に
まわってな。

背中に気配、読み通りだ。このまま振り返って真っ二つにしてやる!
と、剣を振りかぶったら兵士長がホメロス様!危ない!と、私とキラーパンサーの間に割って入ってきた。

私が突然襲われたとでも思ったのだろうか。庇うつもりかもしれないが、邪魔だ!
まずい、このままでは兵士長を真っ二つにしてしまう。

そのとき、男が兵士長をすごい勢いで蹴り飛ばした。兵士長は吹っ飛んだ。
そして男は勢いづいた私の剣を斧で受け止める。斧は砕けた。
剣を弾かれ両腕をあげたままよろと後ずさりそうになる私に伸びてきた男の左腕が私の胴に巻きついてきて
留め、留めるだけでなくそのまま引き倒した。私は、仰向けに倒れている男の上に腹ばいで乗る格好になる。

男の心臓の響きが伝わる。一瞬、視界が暗くなる。キラーパンサーが飛び越えていったんだ。まさに、つい
先ほどまで、私の頭のあったところを。

あっ暗くなったのは上を飛んでったキラーパンサーの影でです(゜▽゜;

なら着地と共にまたすぐ飛びかかってくるはず。私はころりと左に半回転して男の上から地面の上に降りると
ふんと腹筋に力を入れて起き上がり強く地面を蹴った。下から、宙に浮いているキラーパンサーの喉笛に剣を
突き立てる。終わった。

「兵士長!ホメロス!」

いちおう兵士長を立てて先に呼んでます。

マルティナ様の声だ。剣を鞘に納めて顔を上げると、姫が馬に乗った兵士を数人連れてこちらに駆けてくるのが
見えた。
「巡回中の兵士と出会ったから連れてきたわ!けど… もう終わったみたいね。大丈夫?ケガはない?」
「はい、あの者の助けで、全員無事です。魔物もすべて倒しました」
「そう、よかったわ…」
マルティナ様が馬から降りてほっと胸を撫で下ろす。私は男の姿を探した。男は自分が蹴り飛ばした兵士長を
助け起こしているところだった。兵士長は蹴られたところを痛そうにさすってはいたもののしっかり自分の足で
立っていたので、まあ無事だと言っても嘘にはならないだろう。

姫は後ろの兵士たちを振り返ると、詳しいことはまた自分たちから報告をするが、魔物が出たここら一帯、
巡回の兵士を増やしてほしいことだけ至急王にお伝えしてくれと頼んだ。兵士が駆け出す。
「残りの皆さんはこのへんの警戒をお願いします。私たちを助けてくれた人と話がしたいの」
兵たちは、はっ、と短く返答し、周囲に散っていった。

マルティナ様が貸してもらった馬を引いて男の元へと歩み寄る。私もあとをついていった。
「あの、」
という姫の呼びかけに、兵士長の体についた小麦の切れ端を払ってやっていた男が顔を上げる。兵士長は
すまなかったと男の背を押し、姫と向き合うように促した。

さすがにちゃんとスイマセンと言うくらいの分別は兵士長にもあるよ(´▽`;

「はい」
男は片膝をつく。その様はまるで歴戦の騎士のよう。

このへんはデルカダールで騎士やってたころの記憶がグレイグにはうっすらあるということで。

ああ、これは、デルカダールの盾の伝説。
「私はデルカダールの第一王女マルティナです。あなたの、お名前を聞いてもよろしいかしら」

マルティナに兄弟はいないのでわざわざ第一王女って言わなくてもいいかなと思ったんだけど、この
バンデルフォンの農民が他国の王女の兄弟事情まで知っているとは限らないし、あと、それとなくあなたが
助けた人物は重要人物ですよと、ありがとうと言う前に伝える意図。あなたはすごいことをしたのだと、言外に。

「は、グレイグ、と申します」
「グレイグさん、今、私たち三人が生きているのはあなたのおかげです。本当にありがとう」
「滅相もございません」
「あなたにお礼をしたいけれど、私たちは急ぎ城に戻りこの状況を王に報告しなければなりません。今夕、
使いの者をよこします。あなたのおうちは、あちらかしら?」
姫は、ここから一番近い家を指した。
「はい」
「わかりました、それから、」
「はい」
「この馬、リタリフォン… だったかしら?とても強く、立派な、賢い馬ね。巡回中の兵士に気づいてそちらに
私を導いてくれたのはこのリタリフォンです。本当に感謝しています」

あーリタリフォンを賢くカッコよく書くの楽しかったー!(´▽`)

姫がたてがみを撫でる。馬は嬉しそうに鼻を鳴らした。
「さあ、立って、顔を上げてください」
立ち上がった男の手に、姫が手綱を握らせる。
「グレイグさん、それではまた。兵士長、ホメロス、行きましょう」
「は」
私と兵士長は、あなたの勇気に心から感謝しますと一礼して、姫のあとを追った。

私たち三人は先ほどの兵士たちの馬を借り、急ぎ城に戻り、王に事態の報告をした。
王は既に巡回の兵士の数と回数を増やすよう命を出しており、兵士長もそちらの仕事に借り出されていった。

「ホメロス、身なりを整えたら私たちの昼食の席に同席して頂戴。あの人へのお礼を一緒に考えてほしいの」
「はい」
「昼食のあとは出かけます。街の中で目立ちたくないの。鎧は着けないで、軽装できて」
「は、はい」

街?軽装?、と、姫の命令はなんだかよくわからなかったが、私はとりあえず言われたように身なりを整えて
急いで姫のところに戻る。通された部屋では姫と王と王妃がこれはデルカダールの盾だと喜んでいる。
マルティナ様は自分の身に伝説と同じことが起こったと興奮しているし、王と王妃は自分たちの先祖が受けた
恩を返すことができたと嬉しそう。魔物が出たことへの対処もひと通り終えているからか、楽しげに、ここは
伝説にのっとって盾を贈るべきか、いやいや農家に盾があっても邪魔なばかりでは?と、話を弾ませている。
「姫、それでしたら斧はいかがでしょう」
「斧?どうして?」
「戦いの最中、あの者の持っていた斧が壊れてしまいました」
正確には壊してしまいました、なのだが、まあ、そこは伏せておいても問題ないだろう。
「あら、そうだったのね。なら斧にしましょう。盾と斧。防具と武器でちょうど対になるわ」
姫にかけてと促されたので、私は席に着いた。
なら、記念の斧の贈呈はデルカダール王家にお任せするとして、私たちは何をいたしましょう、と、王と王妃が
考えこむ。
そこに、城の役人が入ってきて、王に書類を手渡していった。
「王、そちらは?」
「これか?これは、姫を助けてくれたグレイグという者のことで、わかることはぜんぶ書いて持ってこいと言って
作らせた書類だ」
どんなお礼なら彼が喜ぶか、それを考えるためにはなにより本人のことを知らねばな、という理由らしい。

あの男は、国の記録によると、六歳のころに両親を亡くし、それ以降は親戚や近所に住む者たちの世話に
なりながら成人を迎え、今はひとりで親の残した小麦畑の面倒を見ながら暮らしているそうだった。

両親がいないのは、もし両親がいたらたぶん親のためにさっさと身を固めただろうなと思ったので作劇上の
都合でいなくなってもらいましたグレイグごめんな!(゜▽゜;

王は、ふむ、とひとつ頷き、
「ならば、バンデルフォン王家としては、あの者の親戚と、それから同じ集落の者たちの小麦、これを今年は
倍の値段で買い上げることにしよう」

なんとなくで決めたことですが、バンデルフォンの小麦農家は税として小麦を納めるのではなく、自分で
売ってお金に替えているイメージです。どこに売るかは自分で決めていい、自由度の高い国。
ただ、個人で販路を持っている人はあまりおらず、みんなだいたい国に買ってもらう感じです。
あっ!いま気づいたけどこの王様のセリフだと、グレイグの周りの人たちは高く小麦を買ってもらうことに
なったけど、グレイグはお値段据え置きみたいに見えるな!グレイグの名前が出てないし!(゜▽゜;
ごめんなさいグレイグもちゃんと高く買ってもらっています(´▽`;

それはまた、太っ腹な。私が驚いたことに気づいたのか、王は笑って言った。
「ははは、もともと今年は、王子と姫の結婚を国民みなが祝ってくれた礼として、すべての小麦を例年より少し
高めの値段で買い上げるつもりだったのだし、その額が少々増えたところで問題はない」
ちゃんと、そのための用意はしてある、と。

それでは、斧はデルカダールが用意する。しかし、挙式やそれに関係する予定は変更できないので、それらが
ひと段落ついてから、改めて。
その間に、バンデルフォンからのお礼をする、ということで話はまとまり、私たちは急いで昼食を済ませ、姫は
私を連れて部屋を出た。

「ふふ、結婚して初めて夫と一緒にする仕事が、夫の国の国民を称えるためにどんな斧を作るか考えることだ
なんて胸が躍るわね」
姫は幸せそうに笑う。私も姫のそんな顔を見て嬉しくなった。

話のメインはあくまでホメロスとグレイグなので王子の描写はほとんどしていませんが、ちゃんと仲が良くて
結婚したんだよいう雰囲気だけちらっと…(´▽`)
カットしちゃったけど、花と芸術の国の王子らしく柔和で上品で優しい、マルティナ様が武闘家として修行
したがる剛の者だしちょうどバランスはとれているんだろう、みたいにホメロスが思うところもありました。
この話のマルティナとホメロスは肉体派と頭脳派でそこまでそりが合うわけではないんですけど、けど
ホメロスはマルティナの気高さや強さを、マルティナはホメロスの賢さや仕事熱心さを互いに尊敬し合って
います。
マルティナが子どものころホメロスがクレイモランに行っていたり、ホメロスが戻ってきてからはマルティナが
ドゥルダに行ってたりで、(ユグノアの王子は六年間修行に行かされるそうですけど、さすがにマルティナは
そこまで本格的ではなく二年くらい)子どものころはあまりいっしょにおらず、ふたりの距離感としては兄妹と
いうより年の近い叔父と姪みたいな感じ。
あとこれはとくに話を書く上で決めていたことではないけど、もしかしたらマルティナはメダ女に通っていた
時期もあるのかもしれません。なんといってもお母さんの母校ですしね。

「けどね」
「はい」
「その前に急いで用意しなければならないものがあるわ。ホメロス、あなたも力を貸してね」
真剣な目の姫にこちらも背筋を伸ばしながら、私たちはあと侍女をふたり伴って街へ出た。

そうして着いたところは、小さいが上品な店構えの仕立て屋。
「こういうことは、こっそりしないとね。あなたたちもここでのことは他言無用よ」
こういうこと、とは、どういうことだろうか?よくわからないが、私と侍女たちは神妙な顔で頷いた。

姫の言う、こういうこと、とは、自分の恩人のために服をあつらえることだった。そして明日の夜に城で催される
宴に彼を招きたいのだと。
明日の宴はこの国の名門貴族や大商人を集めて大々的に姫を紹介するためのもの。その席に招待して彼の
手柄を褒め称えようというのだ。彼にとっても悪い話ではないだろう。
なるほど、姫が私についてこいというのはこういう理由か。一緒に戦って、間近で見た私に彼の体型を説明
しろというのだな。侍女は、事情を把握してもらってこまごまとした連絡、世話などにあたってもらうためか。

この店は似たような依頼が多いらしく、姫の言いたいこともよく汲んでくれ、話はとんとんと進んだ。
せっかくだから、ここではあまり見ないような、デルカダール風の、まるでデルカダールの将軍が着ているような
力強くて、なおかつ華のある雰囲気の衣装にしましょう、色はこう、形はこう、大きさはこういう感じで…、と、

服の描写はあまりしないことにしていますが、これだけはふわっと、ゲーム中のマーシャルセットみたいな…
というイメージで書いてます。けどお好きなようにご想像していただいてかまいません(´▽`)
グレイグのデルカダールメイルのようなイメージで、全身黒に差し色で金と赤、みたいな服もかっこいいかなと
思います。

姫は私の説明を時折まじえながら店主に話し、それでは明日の午後二時までにお願いします、と店を出た。

次は靴屋に寄って靴選び。うまい具合に姫が思い描いていたものに近い雰囲気のものがあり、万一合わないと
大変だからと大きさの違う靴を計三足買った。

ロトゼタシアの平均身長わかんないけど、さすがに二メートルの人は既製品なさそうだ…(´▽`; けどそれを
知る前に書いたものなので許してください…(;▽;)

そして最後は最初の夜に訪れた貴族の屋敷に。事前に使者を行かせていたのか奥方はすべて心得たように
靴を預かってくれた。明日できあがる服もこちらで受け取ってくれるそうだ。

「じゃああなたたち、明日はここでグレイグさんの身支度をお願いするわね」

マルティナがホメロスにもいっしょに行ってと言うのは、いちど会ったことのあるホメロスもいたほうがグレイグも
安心でしょう、ということで。
最初は、服とか用意するとこでなんだか楽しそうなホメロスを見て、あっホメロスはグレイグのこと好きなんだな
将軍の上に立つ姫としてこの友情を応援せねば、みたいなことを思うところがあったんですが、けどやることは
仕立て屋に行って注文するだけだから入れるところがなかった(´▽`;

姫の言いつけは、私たちは明日の午後からここで待機、城から彼の家に向かった使者が彼をここに連れてくる
から着替えさせて城までお連れして、というもの。
私は広間の警備があるからその打ち合わせのために夕方までには城に戻っていないといけないが、侍女に
案内を頼めば大丈夫だろう。馬車に乗って移動するだけなのだし。

城の兵舎に戻ると、魔物の件でバンデルフォンの兵士が忙しそうにしていたのでその手伝いをしたり、城内の
兵士が少なくなることで最初に決めていた警備の予定が白紙になってしまいその打ち合わせをし直したり、と
気忙しく、将軍にあてがわれた兵舎の中の小さな個室のベッドに入ってようやく私は、ほっとひと息つくことが
できた。

最初は他のデルカダール兵みんなといっしょに大部屋だったんですけど、けどそうするとどうやって兵士長から
身を守るか考えないといけないのでさくっと個室にしました…(´▽`;
なお姫の警護というか城の警護はふつうにバンデルフォンの兵士がやってくれてるので、城の中にいるときは
そこまでマルティナの警護をがちがちにやる必要はないです。ホメロスも寝る(苦笑)
あときっと連れてきている侍女も全員よく仕込まれてて強いと思う。

あらためて、またあの男に会うのだと思うと、どういうふうに接すればいいのかよくわからないな。
美しい海のような目の色の、騎士のように強い男。
あの男のおかげで、私は、自分の国の王家の縁戚となる国の兵士長を死なせるという致命的な失態を
免れたし、なにより、マルティナ様と私の命を助けてもらった。

どうしよう

ただ、他国の、自分がお仕えする姫を守ってもらった騎士、という立場ではなく、もっと、こう、私的な範囲でも

あっちょっとここわかりにくかったかな… 他国の、というのは、グレイグから見たホメロスのことです。これは
ホメロス自身がグレイグから見た自分のことを、他国の騎士、としているシーン。

親しくなりたいと、私は感じている

ありがとうと言って、これきりになりたくない

そういえば、兵士長はバツが悪くなったのか私のそばに近寄らなくなったな。はは、彼が兵士長を蹴っ飛ばした
ところは痛快だった。ありがとう、

グレイグ

初めて心の中で呟いた彼の名前は、まるでずっと前から知っていたように、私の体の深いところまで馴染んだ。

だからというわけではないけど、以降、ホメロスのモノローグはグレイグって呼び捨てになります。
もうこの時点でホメロスはグレイグのことすごく気に入ってるんです。

翌日の午後、私は、昨日の侍女ふたりに加えてバンデルフォンの侍女もふたり伴い、城を出る。
彼を連れて城の中を歩くためには城の侍女の協力が欠かせないからな。

書いてないけど、侍女も兵士同様、単独で城の中をうろうろできません。だから昨日のふたりとペアになって
動いてもらうバンデルフォンの侍女ふたりを連れていっています。

屋敷に着くと服は既にできていて、大きさを調整するためのお針子がひとり、服と一緒に客用の寝室で私たちを
待っていた。

お針子さんは性別を決めていません。お好きなほうでどうぞ(´▽`)

「仕上がりを確認させてくれ」
お針子が大きなトランクから服を出し、ベッドの上に広げる。私たちを案内してきた奥方、侍女たちから歓声が
あがった。
「これは… 素晴らしいわね!」
奥方がうっとりと言う。
「マルティナ姫とホメロス将軍がこれを見立てた殿方… さぞ男らしく逞しい方なのでしょうね」
「はい。騎士のように立派な男性です」

グレイグ気に入ってるからめっちゃ褒めるホメロス(笑)

侍女たちからも小さくどよめきがあがる。
さて、ただ待っているだけでは退屈だからお茶でも用意させましょうか、と、奥方が使用人を呼ぼうとしたとき、
いらっしゃいました、と屋敷の侍女が入ってきた。
「わかりました、こちらまでご案内して」

カットしたけど、グレイグを招待するのは収穫で忙しい時期なので、王様がちゃんと手伝いの人を手配して
グレイグの畑に行かせてる、ということになっています。

侍女に連れられて部屋に入ってきたグレイグは、私の顔を見て信じられないものを見た、というような顔で
驚いていた。服を着替えるだけ、と言われてきた場所に、およそ着替えることには関係のなさそうな兵士の
私がいたからだろう。

たぶんグレイグには騎士や将軍、兵士の区別がよくわからないだろうなってことで、国に仕えて国のために
戦う人の総称、みたいな感じでこのときのホメロスは自分のことを、兵士、と言っています。
下では騎士と言っていますが、どっちかが誤字というわけではないです。

「あ、あなたは、」
「お会いするのはこれが三度目なのに、まだ名乗っていませんでしたね。デルカダール王家に仕える騎士、
ホメロスと申します」

自分から自分のことを将軍ですって言うのはなんかちょっと恥ずかしかったホメロス(´▽`;

「あ、お、覚えて…」
「美味しそうなパンをいただき損ねてしまいましたからね」
グレイグがくすっと笑った。よかった、少しでも緊張がほぐれてくれればいいのだが。
「俺も、あなたの黄金に輝く小麦畑のように美しい金の髪は目に焼きついていますよ。だからあのときもすぐに
あなただとわかったし、おそらく連れているご婦人は、マルティナ姫様だろうと思ったのです」
「それは… あ、ありがとうございます」
彼の、真心こもった褒め言葉になんと返事をしていいかわからず、礼しか言えなかった。

兵士長と同じこと言われてもぜんぜん嫌じゃないどころか嬉しいホメロスこれ書きたかったー(´▽`)
あとグレイグがホメロスの金髪をステキだなと感じるのは、そのへんうっすらと記憶があるというか…
故郷を滅ぼされてデルカダールにきたグレイグは、ホメロスの金髪に故郷の小麦畑を見てかなり救われたと
思うので…

そんな私の動揺を奥方は察したのか、
「さ、お話はまたあとでいくらでもできますわ。今は先に、服を合わせてしまいましょう」
と、言ってくれる。
そして、用意が整うまで私は出ていますわね、と部屋から出て行った。

褒められたホメロスがほんとに動揺してしまって、うまく話を進められなかったので奥方様に察しのいい人に
なってもらった…(´▽`; 奥方様ありがとう…

侍女たちがてきぱきとグレイグの着ている服を脱がせる。こういうことには不慣れなのか、顔が、耳まで赤い。
魔物相手には鬼神のような強さを見せるのに。かわいいな。

ふたりがわりとすぐにお互いを好きになるのはまあ以前のことがあるからということでよろしく(´▽`)
こういう仲のいい友達がいたけどこじれて失ってしまった、とかそこまで具体的には覚えてないけど、かつて
こういう人を好ましく思っていた、くらいはほんのりある感じ。

彼のために姫があつらえた服はほとんど直しの必要がないくらいぴったりだった。お針子はグレイグに腕を
あげさせたり屈ませたり、ひと通り動いてもらった後、数ヶ所縫い縮め、今後、グレイグ様からのお直しは
いつでも承るようにマルティナ様から仰せつかっています、なにかございましたらここに、と、店の名前と場所が
書かれた小さなカードを残して、それでは失礼しますと退出していった。

名刺… この世界にあるかな…? と思ったので、カードで。
言葉といえば、この世界は英語がないはずの世界なので、英語はなるべく使わないようにしています。けど
このカードのように英語のほうが通りがいいかなってところだけ、最小限。
(そもそもキャンプとか言うてる世界でそんなこと気にするのもあれかなという気もするけど、気になってしまう
性分なんだ…(´▽`;

靴は、一番大きなものがぴったりだった。これ以上大きなものはなかったので、私はほっと胸を撫で下ろした。

服を着て、靴を履いて、仕上げに髪を撫でつけられたグレイグは、本当に将軍のよう。
本人の前で声をあげるのは憚られると口をつぐんではいるが、侍女たちの目は輝き、頬は紅潮している。

姿見の前に連れて行かれたグレイグは驚き顔。私は後ろに立って、言った。

「よくお似合いですよ」
「俺がこんな格好を、しているなんて… 生涯、忘れられないでしょう。ありがとうございます、ホメロス将軍」
「グレイグさん、デルカダールの恩人から将軍などと仰々しく呼ばれるのは面映い。ホメロス、と呼んでください」

すごく積極的なホメロス(笑)
ところで、さっきホメロスは自分のこと将軍って言ってないのにここでグレイグは将軍って言ってる、やばい
間違えた!(゜□゜; と思って泡ふいたけど、けど読み返したら兵士長がちゃんと、将軍は口にせぬ!って
グレイグの前で言ってくれてた!あー!ありがとう兵士長ー!!!ヽ(;▽;)ノ
(蹴っ飛ばしてごめんね(´▽`;

「えっ、しかし」
「私があなたに、そう呼ばれたいのです」
「なら、俺のこともグレイグ、と呼んでくれますか」

グレイグはこのときまだ、自分もホメロスのことが好きだから自分もホメロスから名前で呼ばれたいというよりも
自分は将軍を呼び捨てにするのに自分だけさん付けで呼ばれるわけにはいかんなという感じなのですが、

「わかりました、グレイグ」
「そこはわかりました、じゃなくて」

けどこのへんはグレイグもけっこうホメロスのこと好きそうな感じだよな… 笑って、そこはタメ語にしてください
言うてるんやから…(´▽`;

グレイグが笑う、だから私も笑って答えた。
「わかった、グレイグ」
グレイグが私の返答に満足そうに大きな目を細める。
「ありがとう、…ホメロス」

このとき侍女の皆さんはさすがにプロとしてポーカーフェイスだろうけど、けどきっと内心では将軍と英雄で
いったいなにが始まったんだって思ってるし、城に戻ったら四人でその話をしてたよ(´▽`)

扉を叩く音がして、そろそろよろしい?と奥方の声。私は侍女に頷いた。侍女が扉を開ける。入ってきた奥方は
まあ!と目を見開いた。

ここも、ほっといたらいつまでも将軍と英雄がいちゃこらしてそうだったので奥方様に助けてもらった…(´▽`;

「とてもよくお似合いですわ」
「あっ、ど、どうも恐れ入ります」
グレイグはかしこまってぺこりと頭を下げた。
「ふふ、あなたはデルカダールとこの国を救ってくれた英雄よ。どうぞくつろいでらして」
奥方が優しく微笑むのに、グレイグはまた恐縮して肩をすくめた。

デルカダールで将軍やってたグレイグならきっとこういうときも落ち着いているんでしょうけど、この世界の
グレイグはずっと小麦畑で働いてるグレイグなので、将軍ぽさは控えめにしています。

「グレイグ」
「はい、あ、うん」
「はは、いちいち言い直さなくていいぞ。…私も支度があるので城に戻らねばならん。あとは、」
侍女に案内してもらってくれ、と言おうとしたら途端に水をかけられた子犬のような心細そうな顔になるので、

あとから思ったけど、子犬が水をかけられてそれを目撃するシチュエーションってどんなシチュエーションだ…
(´▽`; 追い払われるとかそんなんかな… 通り雨にあったとかのほうがよかったかな…

「…別行動のつもりだったが、一緒に行くか?」
と、苦笑すると、グレイグは嬉しそうに頷いた。

この作中のグレイグは、少し、デルカダールにきたばかりでホメロスに頼ってばかりだった(と思われる)
少年のころのイメージで書いてもいます。ちょっと甘えん坊みたいな。大人なんだけどね。

「では、奥様、失礼いたします」
「私も楽しかったわ。では、またあとで、お城でね」

と、言うからお城で会うシーン入れようと思ったけど入れるスキなかった…(´▽`; またあとでって言ったのに
出てこないじゃんと思われたならそういうわけです。また城で奥方となにかあるかもとミスリードしたみたいに
なっちゃったかな… だとしたら申し訳ない…(;▽;)
けど他にいい別れのセリフがないというか、奥方があとで城に行くのは事実だからこれがいちばん自然で…
スイマセン…(´▽`;

「はい」
「さ、誰にも見られないようにこっそり行くわよ」
どうしてですか?とグレイグが首を傾げる。
「英雄の登場は劇的なほうが人々の心に残るわ。強く、深く、鮮烈にね」
私たちは人目を避けて馬車に乗りこみ、屋敷をあとにした。

あちこちで姿を目撃されて、あれは…?と噂になってしまったら、お披露目のときインパクトがなくなるから
なるべく人目につくなよ、ということです。
別に、人々の心に残ったからどうというわけでもないというか、残ることがこの先の話の展開に関係あるか
といったらないんですが、まあバンデルフォンの人たちはお祭りとかイベントとか派手で美しいことが好きな
国民性なんだよということで(´▽`)
ところで、バンデルフォンの王子世代はまだ生まれてるか生まれてないか微妙なところですが、この奥方や
王様、王妃様はバンデルフォンが滅びたとき確実に死んでる人たちなんですよね… 書いてるときはあまり
意識してなかったけど、そう思うとちょっと悲しい。

城に到着し、私が鎧を着けるため兵舎のほうに行こうとすると、グレイグがまたしても不安そうな顔をするので
それではと四人いるうちの侍女たちふたりに、話し相手としてそばにいてやってくれと頼んだ。
わかりました、ではグレイグ様、控え室にご案内します、と、侍女に追い立てられるようにグレイグは行った。
私も急いで身支度をせねば。

追い立てられた(´▽`; 侍女強い…(;▽;)

鎧を着け、今夜の宴の護衛の任について確認する。ホメロス将軍は名目上は姫の護衛として広間に入るが、
実際の護衛は他の兵たちに任せてグレイグの相手をしてやってほしいと姫からお達しがあったと聞く。
よかった、それならグレイグも安心だろう。

ゲーム中、大樹でホメロスがデルカダール王(中身ウル様)に切られたときのムービーで、マルティナがはっと
息を飲んだところが私はすごく印象に残っていて。ゲーム中ではとくに描写はなかったけど、マルティナにも
ホメロスとの思い出がなかったわけじゃないんだろうなと。
だからこの作中のマルティナはホメロスが幸せ掴みそうな気配を感じたら協力的になるんです。

広間に招待客が集まり、王と王妃、王子と姫が入場し、いよいよ宴だというとき、バンデルフォン王が、今夜は
我が息子の妻となるマルティナ姫の他にもうひとり、皆様にご紹介したい人がいます、と広間の橋から端まで
通るような大きな声で高らかに宣言した。

このへん、王様なのに皆様、はどうなんだろうか?もっと偉そうに、皆の者、とかのほうがいいのかな?と
思ったんですけど、まあこういうふうに王様が動いたのでそのままで。
これがあったので、バンデルフォンの人たちはオープンでフラットということになりました。

もうお聞き及びの方もいらっしゃるかもしれませんが、と前置きして、広間の大扉の横にいる兵士たちに頷く。
扉が開く。グレイグの堂々とした佇まいに広間中の人間の視線が集中した。
「デルカダール王国と、そして我がバンデルフォンの恩人、英雄、グレイグです」
グレイグは一礼して、王の元まで進み、恭しく膝をついた。

以前将軍やってましたしね。グレイグ自身もなんとなく染みついてるものがある感じ。

王や王妃、王子やマルティナ様が口々にグレイグに礼を述べ、まるで伝説のデルカダールの盾の話のようだと
褒め称え、心よりの感謝の印として褒美をとらせましょう、というのを私は壁際でじっと眺めていた。

ゲーム中、自分の差し出した手を無視して王や国民からの賞賛を受けるグレイグを苦しい思いで見る、あの
シーンとの対比のつもりで書きました。
そういうことがあったというはっきりした記憶はないけど、なんだかなにか感じるものがある。だけど今はもう
賞賛を受ける彼を見てもなんとも思わない、自分はなにかを乗り越えたのだ… そんな感覚がふわっとある
みたいなホメロスです。

王が、では皆様、最後にもう一度この英雄に拍手を、と言い、大きな拍手が巻き起こる。
グレイグは深く頭を下げて浴びるように拍手を聞いていた。王はグレイグのそばに歩み寄り、さあ、と立つように
促す。
それを合図に使用人たちがいっせいに酒の入ったグラスを客に配った。王は全員に酒が行き渡ったことを確め、
それでは我が息子とマルティナ姫の結婚と、その恩人の英雄グレイグに、乾杯!と、グラスを高く掲げた。

グラスも杯に置きかえられるなと思ったけど、乾杯と字がかぶってややこしいなと思ってグラスにしました。

華々しく宴が始まり、グレイグはいそいそと私のところにやってくる。緊張した、と。
「とてもそうは見えなかった。立派だったぞ」
「とんでもない、一緒にいてくれた侍女さんがあれこれ作法を教えてくれたからどうにか格好がついただけだ」
「そうか、でも、かっこよかった」

グレイグの自覚としては侍女が教えてくれたから、なんですけど、まあ教えられなくても過去の経験でなんとか
なったと思うよ(´▽`)
それにしてもほんと、この話のホメロスはグレイグが好きなこと隠しもしねえな(゜▽゜;
最終的にデルカダールを捨ててバンデルフォンのグレイグの元に走るんだからもちろん思いを寄せてくれないと
困るんですけど、困るからととくにセーブもしなかったらこうなってしまった(´▽`;
あと、この話はどちらかというとグレイグの救済なんですよね。ホメロスの救済というよりも。
ゲーム中の主人公は、グレイグが二回とも友情を失うことに関してなにもできなくて。それが辛くて。だから、
セニカが過去に戻って、また一からやり直すとなったとき、グレイグのところにホメロスを行かせてあげたいと
思ったんです。今度こそ最後まで友達でいられたらいいねと。
だから多少、グレイグのことが好きすぎるホメロスになっても、けどこれグレイグの救済だからいいよね(´▽`)
と思ってたんですが、けどちょっと盛りすぎたかなという気もしている(苦笑)
まあホメロスもグレイグのこと好きじゃなかったら絶対こういうこと言わないし間違ってないよきっと!(゜▽゜;

「グレイグ、何か、食べるものを取ってこようか?酒は?」
私は、テーブルの上に並べられた料理の数々を目線で指し示した。
「この日のために用意したダーハルーネの焼き菓子もあるぞ」

メダ女の給食にダーハルーネからの直送ケーキとかあるけど、冷蔵庫なさそうなのにどうやって?って、私は
あれがすごく不思議でな…(´▽`; (ヒャドで凍らせでもするのか??)
なのでここでは焼き菓子にしています(苦笑)。保存がきくようにしっかり焼いてるタイプ。

「いや、いい、もう、胸がいっぱいで… 何も食べられそうにない… 水がほしい… 喉がカラカラだ…」
「わかった、もらってこよう」
水の入ったグラスを持ってきてグレイグに渡すと、ホメロスは?とグレイグが尋ねる。
「私は仕事中だからな」
「え、そうなのか」
グレイグは少し思案して、水を飲み干し空のグラスを使用人に渡すとテーブルに行って、料理をいくらか皿に
のせて戻ってきた。
「人に酔ったかもしれない。少し、外の空気に当たりたい」
「そうなのか?」
ぜんぜんそうは見えないが… しかし、本人がそう言うのならそうなんだろう。私は、客人の気分がすぐれない
ので少し外の風に当たりに出る、と近くにいた兵士に告げ、テラスに出た。

間違えた。バルコニーだこれ(゜▽゜; 私はここ二階のイメージで書いてたんですけど、けど調べたら二階より
上はテラスじゃなくバルコニーみたいで…
だけどもうアップしちゃったし、たしか本文中のどこにも大広間は二階ですって書いてなかったはずだし、もう
ここは一階ということで、いいです!ヽ(;▽;)ノ

宴も佳境を過ぎればここも酔っ払いで混み合うのだろうが、今はまだ誰もいない。私たちはなんとなく人目から
逃れるように、テラスの手すりにではなく、扉のすぐ横の壁にもたれた。

「はい」

将軍で、ホメロスの幼馴染のグレイグなら、ここは、「ほら」とか、「食べろ」とかなんでしょうけど、このときは
まだそこまで親しくないし、なんといってもホメロスはデルカダールのえらいさんだ…、ということでグレイグも
少し遠慮気味というか丁寧なんですけど、けどちょっとらしくなかったかなー(´▽`; いっそ、「どうぞ」のほうが
よかったか…(;▽;)

グレイグが、皿を差し出す。食べろ、ということらしい。
「今なら誰もいない」
そうだな。
「ありがとう、では、少しだけ」
菓子をひとつと、果物を数切れ。

ここでお菓子と果物なのにはとくに意味はなく、ただ、指でつまんでさっと食べられるもの、というだけでこう
したんですが、12月発売のパッシュで判明したホメロスの好物フルーツサンドと大きくかけ離れなかったから
ちょうどよかった(´▽`)

グレイグが残りのものを口に運ぶ間、私たちは少し話をした。年が同じであること、親がいないこと。ひとりで
仕事をして、生きていること。

「グレイグ、あの、私は思ったんだが、」
うん、と、グレイグが頷く。
「デルカダールに、こないか…?」
グレイグが、目を丸くひらいた。
「グレイグの戦いぶり、グレイグみたいな騎士が私の隣りにいてくれたらと思った。だめか…?」
グレイグはゆっくりと、首を横に振った。
「俺には、両親の残した畑がある。小麦を作るのも、性に合ってる。ホメロスが俺を求めてくれるのは嬉しいが」
「、そうか」
そうだな、グレイグ、お前はもう、バンデルフォンの英雄だものな。
「悪かった、突然。忘れてくれ」

あーここ、ホメロスのセリフ、ホメロスのモノローグ、そしてまたホメロスのセリフ、だから、モノローグのあと
どっちが喋ってるのかわかりにくかったなあ(゜▽゜; 悪かったグレイグ、とか名前入れとけばよかった。
ここ、ホメロスの忘れてくれにグレイグが間髪入れずに忘れないと返すのがいいのに、えっこれどっちが
どっちに言ったセリフ??となっちゃったらよくない… 次からは気をつけます…(´▽`;

「忘れない」
「えっ」
「嬉しかった」
グレイグが笑う。なら、ならば。
「ならばグレイグ、これからも、」
私は壁から離れてグレイグの正面に立った。右手の手袋を取る。
「遠いデルカダールの地に、あなたを思う人間がいると、友がいると、思っていてくれるか?」
私はグレイグに手を差し出した。
その瞬間、なぜだかよくわからないけれどひどく胸が、痛く締めつけられる気がした。違う、本当に痛い。これは
なんだ。
手を出していたくない。ひっこめたい。出した手を引けば楽になれる。なぜこんなことを私は思う。

このへんは以前差し出した手を無視された苦痛がにわかに甦って…、みたいな感じですね。
ところでここ、ひっこめたい、を、ひっこめない、と誤字するミスがありましてですね…
ひっこめない、だったらひっこめたいのにひっこめないぞとがんばってるみたいでぜんぜん意味が違う!(゜▽゜;
気づいたからよかったけど、気づかなかったらえらいことになってた…
だってここ前半のクライマックスやで…ヽ(;▽;)ノ
以降、とりあえず話のキモの部分だけは何度も見直そうと思いました… あーこわいこわい…(´▽`;

しかし私がそうする前に、私の恐れと不安と苦痛で冷たくなった手が、
「もちろんだホメロス、喜んで」
グレイグのあたたかくて大きな手に包まれ、ぎゅっと握られる。はたはた、と、涙が零れ落ちた。私の目から。
「ホメロス、」
「ありがとう」
私は、ずっとずっとずっと、ずっと前から、グレイグにこうしてほしかった気がする。
「ありがとう、グレイグ、嬉しい」
「そうか、よかった」

ここはもうホメロスが勝手に泣いたし勝手にこうしてほしかったって言ったしありがとう嬉しいって言ったから
そのままそれで行きました(´▽`;
あとグレイグは目の前の大人の男性が突然泣き出して驚く気持ちがないわけじゃないんですけど、けど
それ以上に、なぜ自分がこんなことを思うのかよくわからないけど自分は今度は失敗しなかったよかった、
みたいな感覚があるので、(なのでグレイグの「そうか、よかった」のよかった、にはそれも含まれてます)、
はたから見た感じではふつうに、泣いたことを受け入れた、みたいになってます。
それから、ホメロスのずっとずっと、は、もう三行くらいずっとを並べてもいいかなと最初は思ったんですけど、
やったらくどかったんでやめました(苦笑)

と、グレイグは私の手に左の手も重ねようとした。が、手がふさがっているのを忘れてしまったのか、彼の手から
皿とフォークが滑り落ち、かん高い音を立てて割れてしまった。
「あ!」
テラスの扉が開く。どうやらご婦人方がグレイグを探していたようだ。引きずられるように連れて行かれる。
私もさっと目元をぬぐって、音が聞こえたのかやってきた使用人に皿の片付けを頼み、広間に戻った。

皿を持たせたのは握手を他に誰もいないふたりだけの場所でさせたかったからなんですが、ふたりを中に
戻すのにも使えたからほんと皿ありがとうな!(´▽`) 割れたけど!(;▽;)

取り囲まれるグレイグを助けに行ったほうがいいかと思ったが、グレイグお前はここバンデルフォンで生きて
いくと決めたのだ。せっかくの機会なのだからがんばって顔を売っておくといい。

この話は最終的にホメロスが押しかけ女房してくる話なので、将来のためにグレイグの収入も増やして
おかないとねということで(笑)

私はしばらくにやにやと英雄の様子を眺めていたが、さすがにこれ以上は彼も疲れてボロを出しそうだと
思ったので姫と示し合わせ、姫がお呼びだと言ってご婦人方の輪の中から連れ出した。

姫がお呼びだと嘘をついて彼を助けてもいいですか?いいわよ、みたいなやりとり。こういう口裏あわせは
ちゃんとしとかないとうっかりばれたとき面倒だからな(´▽`;

「疲れたか?」
「疲れた」
「もう、帰るか?」
「そうしたいかな」
「わかった」

はい、前半をたたみに入りましたよ!(゜▽゜)
握手のシーンがクライマックスで、あとは手紙書くよと言って別れて前半終了と決めてたんでさくっとそこに
到達させました(´▽`;

私は近くにいた使用人に控え室の侍女たちを呼ぶよう頼み、グレイグを王やマルティナ様のところに連れて
行き、帰宅したいとの旨を伝える。
王たちは名残惜しそうにしていたが、それでも快くグレイグを送り出した。
私はグレイグと一緒に広間を出、侍女たちがくるのを待った。

「帰りたいが、ホメロスとはまだいたい」

言い方ストレートやな!(゜▽゜; けど、二回も失ってればまあ仕方ないかな、こうなるのも。
あと先述したように、ホメロスに甘えてた少年時代のイメージも加味されています。だから素直。

「なら、宴に戻るか?」
「それは…」
「はは」
困った顔で眉を寄せるグレイグに私は笑ってまた、右手を差し出す。
「手紙を書くよ」
「なら、俺もホメロスに書く」
そう言ってグレイグは、今度は両手で私の手をしっかりと握った。もう、涙は出なかった。
ただ、あたたかかった。

双方ともに離れがたいことは離れがたいんだけど、ホメロスのほうは差し出した手を受け入れてもらった
ことでもうだいぶ満たされているので別れもすんなり(´▽`)

それでは後編のあとがきに続く!





(17/12/25)

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