テニス部の二年で集まってどこか遊びに行こうという事になって。
だけど集合場所がいまいちわからなくて、梅雨の晴れ間の日曜日、俺はそこまで一緒に
連れてってもらうべく大きな駅前の片隅で大石を待っている。
「キミ、待ち合わせ、してるのかな〜?」
テカった中年のおじさんが俺に声をかけてきた。はは〜ん。
「うん。してるよ?」
小首を傾げてニッコリと返事をする。
おじさんはほっとしたように口元をだらしなく緩めた。
「…エージくん、だよね?」
ありゃ。名前、俺と一緒なの?ぐーぜん。
「…うん」
俺は少しだけ目を細めてちょっとだけ口角を上げて笑う。そうするとそれなりに色っぽく見える
ことは知ってる。
「よかった…。じゃ」
「あ、おーいし!」
駅の改札から出てきた坊主頭に俺は駆け寄る。
「おーいし〜」
「え、英二??」
体をくっつけて腕を絡ませた。
振り返ると、哀れなおじさんがぽかんとしている。
「バイバイ!俺はおじさんのエージくんじゃないよ!」
ひらひらと手を振って俺は大石の腕を引いて歩き出した。
「英二、なんだ、あれは」
大石が柔らかく腕を解いて後ろを指す。
「さあ?俺といいことしたかったんじゃないの?面白いからからかってやった」
「…英二!」
「…なんだよ」
「そんなことするんじゃない!逆恨みされて…、付け狙われるようなことになったらどうするんだ!
何かあってからじゃ遅いんだぞ!!」
「こんなとこで立ち止まって怒鳴らないでよ!
いいじゃん…。どうせあんなおじさんにそんな度胸ないよ…」
「英二…、そういう問題じゃないだろ…」
大石の目は真剣だった。なんだか自分がものすごく悪いことした気になってくる。
悪いのはあのおじさんであって、俺じゃないのに。
「………わかったよ。
もう、しない」
「…そうしてくれ」
「あはは、まじめだにゃ〜、大石は」
「英二は不真面目だな」
「…む」
「心配だよ」
「大石…。
大石………
ごめん」
「………うん。
じゃ、行こうか」
大石はいつもの穏やかな顔になると俺の腕を引いた。
(03/06/10)
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