「大石!
ねえ、今度の大石の誕生日、うちに来ない?
ちょうどその前の日に知り合いからいいお肉いただく事になってるんだよ。
焼肉しよ!」
「英二… でも、ご家族の方は?」
「連休を利用してみんな旅行。俺は部活があるから家にいるけどね」
「でも… 申し訳ないよ」
「いいのいいの!
もううちの許可はとってあるよん!
みんないないし、遠慮なくどうぞって」
「ありがとう。
でも俺ばかり悪いな… みんなは…」
「あ、みんなには言わないで」
「?」
「お肉、そんなにないから」
「あ… うん、わかった」
「…あの時の焼肉はなんだか地獄絵図になっちゃったけど」
「ははは…
俺、気がついたら気絶しててよく覚えてないよ」
「ははははは。
だからさ、今度うちでゆっくり大石の焼肉に対するこだわりを俺に教えてよ。
あ、タレとかも自作してみる?
前の晩からうち、来る?」
「タレを自分で、か… いいねえ。
よし!じゃ前日に一緒に買い物に行って、漬け込むタレを作ったり… 色々試してみようか!」
「やった!
大石の事だから…
当然、タレにもこだわりがあるんでしょ?」
「もちろん」
「それも俺に教えて」
「もちろんだよ、英二!
誘ってくれてありがとう!いい誕生日になりそうだよ!」
「いえいえどういたしまして。
誕生日はおいしい焼肉、一緒に食べようね!」
大石お誕生日おめでとう! 080430
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「不二」
「なに?エージ」
「これ」
「ん?」
「誕生日プレゼント」
「ありがとう!覚えててくれたんだ」
「うん」
「開けていい?」
「うん」
「…え…っ 英二、こんな高いもの……」
「いいの」
「だけど」
「いいんだって。だって、四年分だから」
「でも…」
「俺、いつも不二の誕生日は本当の誕生日じゃないからって誤魔化して何もしてこなかったから…!
だから」
「…英二、僕ら出会ってお互いの誕生日を知って、それから…
まだ四年、経ってないよ…?」
「あ」
「かわいい。英二。英二可愛い。ありがとう。大好き」
そう言って、不二は菊丸の頭を胸に抱きかかえ、心ゆくまで撫でまわした。
「本当に、大好きだよ。英二」
「えへへ… 不二が喜んでくれて、俺も嬉しっ!」
不二誕生日おめでとう! 080229
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部活からの帰り道、不二と菊丸は暗い道を並んで歩いている。
ぽつぽつと続けていたお喋りがふと途切れたとき、不二がじっと菊丸の目を覗き込んで言った。
「英二は… 大石のこと、好き。だよね?」
菊丸は、返事をしないままじっと不二の目を見て。
「不二は… タカさんのこと、好き。だよね?」
ふたりは同時に小さく笑みを零す。
「…気づいてた?」
「うん。たぶんそうだろうなって思ってた。
けどさっき不二からああいう質問してこられるまでははっきりわかんなかったよ。
ああいうこと、あんな顔で言われて、ああ、やっぱり、って」
「そうなんだ。僕は確信してた。
英二… わかりやすいしね」
「ははは。だって、ああやって周りに見せつけとかないととられちゃいそうで」
「そっか」
「だけどこれで」
「ふたりは」
「同じ秘密を抱えた共犯者だね」
「いつでも」
「いつまでも」
「絶対に味方、するから」
うちの36はこんな感じ。人に言い難い思いを抱えてるトモダチ。 071215
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「おチビー!」
「なんすか菊丸先輩」
「明日!ヒマ!?」
「ヒマすけど」
「よかった!明日手塚の誕生日だから!」
「ハァ」
「ちょうど日曜だし、おチビ手塚んちにプレゼント持ってって」
「なんで俺が」
「いいから!なんでもいいから!」
「なんでもいいって言われても」
「おチビのぞうきん一歩手前の使用済み使い古しタオルとかでもいいから!」
「イヤですよ!
そんなのプレゼントしたら俺の人間性が疑われるじゃないですか!」
「お願いだよおチビー」
「……。
まあ、タオルは却下するとして…
いいですよ。菊丸先輩がそこまで言うなら…」
「ありがとう!おチビ大好き!」
「抱きつかないで」
「で何時ごろ行く?
俺のほうから手塚に伝えとくから!」
「…えーと、じゃあ、二時ごろ…?」
「わかった!その時間絶対家にいるように言っとくね!」
「はい」
夜。越前家。食堂。夕食前。
(とは言ったものの…
何をあげたらいいのか…)
(まだ使ってない新品のタオルでも綺麗に包んでそれで誤魔化すかな…)
(消耗品だし、いくらあっても困らないし)
ふと。夕食の仕度中の菜々子の手元に目がとまる。
「奈々子さん。何?そのでっかいタネ」
「これ?アボカドよ。サラダに入れようと思って」
菜々子は黄緑色の果肉から取り外した大きな丸い種を指でつまんでリョーマに見せた。
「…奈々子さん、それ、俺にくれる?」
次の日の昼。手塚家玄関。
「昨日、菊丸から聞いた。
わざわざ俺のために、すまない」
「いいえ。いいんですよ」
「さあ、上がってくれ」
「いや、ここで失礼しますんで」
「でも」
「プレゼントの用意しなきゃいけないんで、ちょっと玄関先お借りしますね」
「用意?」
「ハイ」
リョーマは持ってきた紙袋の中から昨夜菜々子からもらった丸い種と出かける前適当に寺の地面から
すくってきた土の入ったビニール袋と三日前食べたプリンのガラス製の空き容器、半分くらい水の入っ
た500ミリペットボトルを取り出した。
「…何するんだ、それで」
「…すぐ済みますから」
リョーマは容器の半分くらい土を入れるとそこに種を置き、また上から土を入れて種の上にかぶせた。
そしてペットボトルから水を注ぐ。
「…はい」
「…越前、これは」
「…今日の、記念に。
大きく育てて下さいね。
部長、お誕生日おめでとうございます」
にっこり笑って両手で差し出す。
「越前、ありがとう…!」
(アボカドって、今植えていいんだっけ?
そんなの知らないけど…)
いいのだ。
育たなかったときのこの人のうろたえる顔が見たい。
涙を流さんばかりの手塚に、リョーマはまたにっこりと笑った。
ヒドイ話!(笑)
菊は大石と手塚が仲良くしたら嫌なので手塚の関心がリョーマに行くように一生懸命リョーマをけしかけます。
リョーマはそれをわかってる。なおかつ手塚をからかうのは面白いので誘いにのったわけです。
なんにしても、手塚誕生日おめでとう!一日はやいけど! 071006
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