「俺に電話?手塚から?
…わかった。繋げ。それと、部屋に熱い紅茶を頼む」
「…俺だ」
「跡部か。手塚だ」
「わかってるよ。一体何の用だ」
「今日、練習試合をするとお前からのメールに書いてあったから…」
「はあ?それでわざわざ?ドイツから?手塚、お前も心配性だな」
「で、試合はどうだった?」
「くじ引きで相手を決めて、全てシングルスで。
タイブレークはなし、6-6までいったら引き分け。そういうルールでやった」
「くじ引き?」
「ああ。結果は…、ま、お前らんとこはちゃんと強化合宿をこなしました…って感じ、だな。きっちり結果は
出してたぜ」
「跡部、越前は誰と試合したんだ?」
「俺だ」
「そうか。で、越前はどうだった」
「あぁん?ま、それなりに」
「なんだそれは!」
「なんだそれはとはなんだ!それが人にものを聞く態度か!」
「…すまん。で、越前はどうだった」
「…お前があんまりヤツにこだわるから…
どれほどのものかと楽しみにしていたが…。ま、俺が手を抜いてやってやっと引き分け、だ」
「…引き分け…」
「ヤツが強いことは認める。お前がこだわるのもわからなくはない。だが、俺が本気を出せば100パーセント
勝てる」
「……そうか」
「っくしゅっ!」
「大丈夫か?」
「…たく、人が風呂入ってるときに電話なんかかけてくるから…!」
「すまん」
「じゃあもう切っていいか?
詳しい試合の結果なら、不二なり、お前んとこのデータマンなりが教えてくれるだろ?じゃ…」
「跡部」
「なんだよ」
「俺は、越前と直接試合をしたお前の話が聞きたいんだ」
「なんで」
「越前のことを詳しく知りたいからだ」
「なんだそれは……」
「知りたいんだ。頼む」
「……………手塚…、お前………
いや、まあいい…
越前についてはさっき言った通りだ。俺にも、お前にもまだまだ及ばねえよ。
お前が仮に100なら、越前はやっとその半分の50ってところだ」
「…そうか」
「試合の最初は俺のスマッシュにラケットを落としてばかりだったが、最後は根性出してたぜ」
「ふ…、そうか…」
「そこで嬉しそうにされると頭にくるな」
「ラケットを落としていたということは、お前のあのグリップに当てるスマッシュを続けて受けていたという
ことか?」
「お前な、人の話無視するなよ」
「無視などしていないが」
「…もう、いい…、そうだ、そのスマッシュだ」
「まさか、越前に怪我をさせてはいないだろうな?」
「させてねえよ!俺がそんなヘマするわけねえだろ!馬鹿!」
「…ば」
「ああ、馬鹿だな!そんなに越前のことが気になるなら本人に電話して聞いてみればいいだろうが!」
「…それは…」
「…本人に聞きにくいのなら、俺よりもっとずっと一緒にいる青学の誰かに聞いてみりゃいいじゃねえか」
「…それも…」
「…なんだよそれ。誰もお前に話してくれねえってのか?あー、まあ、その気持ちわからなくもねえな…
電話してる相手のことはそっちのけで、越前のことばかり気にして話せ話せと言われりゃあ、あはは、
そりゃむっとこないほうが変だ」
「………」
「手塚?」
「…すまん、申し訳ない」
「…ま、あまりにもあからさま過ぎて俺は面白いけどな。…もう、いいか?
寒いんだ。」
「ああ…、いろいろと無理を言ってすまなかったな、跡部」
「早く肩を治してもう一度俺と試合しろ。今度こそ、完全にぶっつぶしてやるよ」
「…楽しみにしている。ありがとう」
「じゃあな」
プツ。
(03/12/25)
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