青春学園中等部、男子テニス部が全国優勝を果たしてしばらく後。
テニス部元部長である大和が青学テニス部を訪ねてきた。

「みなさん、お久しぶりです。
全国優勝、おめでとう」

「大和部長!」
口々に声を上げて、三年生の部員達が、特徴的な丸いレンズのサングラスをかけた背の高い男に
駆け寄っていく。


「誰なんすか?あれ?」
「さあ。三年の先輩達が一年だった頃の部長じゃねえの?
俺、誰か知らねーし。」
グラサンを中心に出来た三年生達の輪を遠巻きに眺めながらリョーマと桃城は言葉を交わした。

「海堂、知ってるか?」
少し離れたところから同じく先輩達の様子を眺めていた海堂に桃城が声をかける。
海堂は黙って首を振った。


三人と同じく状況がよくわからない一、二年部員の間から小さなざわめきが起こる。
それに気付いた大石が、すばやく手塚と何か二言三言言葉を交わし、
「みんな、しばらく休憩だ」
と、声を張り上げた。


「お前達、こっちへ来い」
大和と呼ばれている男の側から少し離れて、手塚が桃城達を呼ぶ。
桃城が小走りに、海堂とリョーマは怪訝そうな表情も露に桃城の後ろにくっついてきた。


「あの〜、なんですか、手塚部長」
手塚が何か言う前に大和が言葉を発した。

「こんにちは。初めまして、ボクは手塚君達が一年だった頃、ここの部長を務めていた大和です。
桃城君…、ですね?君の活躍は高等部でも耳にしていますよ。
関東大会はあの氷帝にダブルスで勝ったのでしょう。凄いね。
しかもペアの相手はあの菊丸君ときた」
「ちょっと大和ぶちょー、それどーゆー意味ぃ!?」

菊丸が口を尖らせる。どうやら一年の時から今と変わらぬ奔放な…と言えば聞こえはいいが、
少々自分勝手が過ぎるキャラクターだったらしい。
休憩と言われたものの、三年とレギュラーが集まっているのが気になるのか、なんだなんだと
周りに集まりだしていた一、二年生部員の分もあわせて、どっと大きな笑い声が起きた。

「しっつれいしちゃうなあ〜もう。俺達、ちゃ〜んと全国優勝したってのに〜」
「あはは、菊丸君、申し訳ない。そうだね、君達はよく頑張りましたね。
僕の代では出来なかったことを成し遂げてくれてありがとう」
丁寧な大和の言葉に、菊丸は白い歯を見せて笑った。

「手塚君」
「はい」
「あの時、僕が言ったこと…覚えていますか?青学の柱になってもらうと言ったこと」


瞬間、リョーマは心臓を握り潰された気がした。抗えない力を持った五本の指が肋骨を砕き、
心臓を鷲掴んだかと思うとそのまま声を上げる間もなく一息に握り潰されたのだと思った。
酷い痛み、こなごなの肉隗になった心臓から血が噴き出して目鼻や口から音を立てて溢れる、
そう思った。そう思って、とっさに鼻に手をやるが、そこは濡れてはいなかったし、顔に触れた
指先の、どこにも血などついてはいなかった。



まだ続いている大和の話し声にぼんやりと意識が向かう。
心臓の音がうるさく耳の奥に響いて、それが邪魔で彼が何を言っているのかよくわからない。

「…手塚君は、立派にそれを果たしましたね。頑張りましたね…。君はほんとに頑張りましたね。
ありがとう」
「…いえ。」
手塚はそっと目線を下に落とすと、小さく首を振った。
大和は優しく労わるように手塚の肩を叩くと、桃城の少し後ろに離れて立っていた海堂と
リョーマのほうへ顔を向けた。

そして何事か海堂に言葉をかけていたようだが、リョーマの耳にはよく聞こえなかった。
自分は今テニスコートに立っているはずなのに、なぜか水の中にいるような感じがした。

全身を水に包み込まれているような、あの外界との遮断感。鼓動が自分の耳を打つ感じ。


越前君、と呼ばれた気がした。
顔を上げるとずいぶん背の高い男が目の前に立っている。帽子の庇が邪魔で無意識にそれを
とった。
目に映る男の口が動いているので、自分に何か言っているのだろう。
その動きの切れ目切れ目で曖昧に頷く。
かくかくと首を動かす、そうするうちにその振動で少しずつ身を包む水が揺れて壊れてどこかへ
行ってしまった。
感覚が元に戻り、ようやく耳がはっきりと拾った言葉は。

「…君の活躍を楽しみにしていますよ。頑張って下さい」



「…どうも」
リョーマは硬く強張った喉からそれだけ押し出すのが精一杯だった。
そんな様子が、だいぶ歳の離れた先輩を前にして緊張しているようにでも大和には見えたの
だろうか、彼は、親しみを込めてぽんぽんとリョーマの頭を撫でた。


「じゃ、僕はこれで」
「えっ、もう帰ってしまうんですか?」
大石が、驚いたような声を上げる。

「はい。今日は、全国優勝を果たした後輩達におめでとうとお疲れ様を言いにきただけですから」
「…残念です」
「大石君、そんなに残念がってもらうとかえって僕は恐縮してしまいますよ。
それに、君達が引退して高等部との合同練習に参加するようになれば、嫌でも会えるじゃないですか」
「それはそうですけど」

「その時みんながどれだけ腕を上げたか、直接試合して確かめるのが楽しみです。
もちろん、僕だって練習は積んでいますよ?ここにいたときは手塚君に簡単にやられちゃいましたが、
今はもう昔みたいにはいかせないですからね?」
「大和先輩…、そんな」
「手塚君、謙遜は一般的には美徳ですけれど、過ぎるとよくない。
もう少し、いい意味での図太さのようなものが必要かもしれませんね」
「…はあ…」
「くす、君はほんとに昔から変わりませんねえ。なんだか懐かしいですね…」

手塚の困惑した様子に、大和は小さく笑った。
手塚はますます困った風に口をつぐむ。
そんな手塚を慈しむように一瞥してから、大和は部員全員に向き直った。

「それでは、僕はこれで。
みなさん、練習がキツク感じることがあるかもしれませんが、それでもやったことは少しずつでも
確実に身についているはずです。自分を信じて、頑張って下さい」
「はい!」
部員全員の返事に大和は嬉しそうに頷くと、踵を返して帰っていった。


「さあ、あと少し頑張ろうか!」
大石の張りのある声に、部員達はまたそれぞれの練習を再開した。


手塚は、ずっとリョーマのことが気になっていた。
大和が自分に言ったこと、あれを、リョーマはどう思っただろうか。
大和と向き合ったリョーマの様子が明らかに普段とは違っていたことが、どうにも手塚の
考えを悪いほうへと向かわせる。

すぐに彼を捕まえて話がしたいと思ったが、練習中部長が部員を連れて私用で消えるわけにも
いかない。
リョーマも、迷惑だろうと思った。

その日は運悪く、部活中、まだ大和がくる前に、竜崎からなんだか用があるらしいから練習が
終わったらすぐに生徒会のほうへ顔を出して欲しいという旨を告げられていた。

うまく、練習後に彼と話を…、いや、話をする約束を取り付けるだけでも出来るだろうか。
手塚は誰にもわからないように重たい溜息をひとつついた。





「越前はまだいるか?」
部活終了後、レギュラージャージのまま急いで生徒会に向かい、用を済ませてきて、ようやく
部室へと戻ってきた手塚はドアを開けるとこう言った。

「お、手塚、お疲れ様」
「お仕事ご苦労さん!大変だね、生徒会も兼任してると」
手塚の代わりに部誌をつけている大石と、その大石を待っていたらしい菊丸が顔を上げた。
ちらりと室内に目を走らせると、どうやらもうこの二人しかいないようだ。

「すまない、越前は…」
「おチビなら、桃と一緒に帰ったんじゃないの?結構前に着替えて一緒に出てったよ?」
「…そうか」
「おチビになんか用あったの?」
「いや…、ああ、まあ…」
「別にいいじゃん、明日も会うんだし」
「…ああ。そうだな」

「着替えたらどうだ、手塚。
ちょうどお前が着替え終わる頃に、これ、書き終わるし。
一緒に出よう」
鍵当番である大石が手塚を促す。
手塚は頷くとジャージを脱ぎ始めた。

「じゃ〜ね〜手塚、また明日〜」
「手塚、またな」
「ああ…、また明日」



手塚は二人と別れて駅へと歩き出す。
そして二人が近くにいなくなる時間を見計らって学校前に戻ってくると、そこからバスに
飛び乗った。

以前、桃城達と一緒に、リョーマの猫を連れてきたから彼の家のある場所は知っていた。



リョーマは、自分が学校を出るだいぶ前に桃城と自転車で帰ったようだから、まだ帰って
いないということはたぶんないだろう。
インターフォンの前に立って、しばし考えをめぐらせた手塚は、思い切ってボタンを押した。

「はい、どちら様ですか?」
母親にしては、ずいぶん若々しい女性の声だ。

「すみません、手塚と申します。
あの…、え…リョーマ君はいらっしゃるでしょうか?」

「リョーマさんですか?少し待ってて下さいね」
通信が途絶える。
と同時に、かすかに『リョーマさーん…』と、リョーマを呼ぶ声が聞こえた。

少し間を置いて、小さな物音が聞こえてきた。階段を下りる音だろうか。
手塚はいくぶんか表情を固くして、玄関の引き戸を注視した。

「…部長」
ガラリと引き戸が開いて、まだ制服のままのリョーマが姿を現す。

「越前」
「なんすか、こんな時間に」
「すまない、…少しお前と話がしたいんだが、構わないだろうか?」
「…いいすけど、別に。
でも、部屋汚いっすよ?」
「俺は、いい。
…すまない、突然」

「………
入って下さい」


玄関で一言お邪魔しますと言って靴を脱ぎ、リョーマの後について階段を上がる。
先に立ってドアを開けたリョーマは散らかった衣服を足で大雑把に脇に寄せて通り道を作り、
そして床に無造作に置かれたゲーム機を乱暴にラックの中に突っ込んだ。
主人のピリピリと不機嫌そうな気配を敏感に察したのか、ベッドの上でくつろいでいた猫は
体を起こし、するりと手塚の足元を撫でて出て行ってしまった。
綺麗な猫の立てる小さく軽やかな足音が、よりいっそう険悪な雰囲気を際立たせるような
気が、手塚はした。


「どうぞ、部長」
「すまない」
「適当に場所見つけて座ってくださいよ」
そう言ってリョーマはどさりとベッドに腰を下ろした。
手塚も、床の上にテニスバッグを置き、ゆっくりと腰を下ろしてリョーマを見上げた。


「で、なんすか。話って」
「…今日の、部活中のことなんだが」
「何かありましたっけ?部長がわざわざ俺んちにきて話すようなこと」
突き放すようなリョーマの口ぶりに、手塚は少し狼狽の色を見せ、口篭もった。

「…、大和部長が…」
「ああ、部長がまだ一年だったころ部長だった人ですよね。
優しそうな先輩じゃないすか」
普段、部員にあのような優しい言葉をかけない手塚への皮肉だろうか、リョーマの言い方には
僅かに毒が含まれているように思えた。

「…大和部長が…、お前に、声をかけたとき…、その時のお前の様子が、少し、いつもと
違ったから、それが、気になって…」

「違うでしょ」
「え」
「あの人が俺に声をかけたときじゃなくて、あの人があなたに声をかけたときの間違いなんじゃ
ないっすか?」
「越前」
「遠回しな言い方、俺、大嫌いっす」
「…あ、あ」
「ついでに、誰かから貰ったものを、そのまま他の誰かに使い回すような真似も、
俺、気に入らないんすけど?」

やはり、と手塚は思った。
誰にも知られないように秘密裏に行ったリョーマとのテニス。
その後のリョーマのテニスを見て、自分のしたことは彼になんらかのいい影響を与えたのだと
思えた。そう思えたことから、きっとリョーマはあの時のことを、大切にしている…とまでは
いかなくても、それなりに重要なことだったと位置付けてくれているだろうと思っていた。
そしてそれは自分が氷帝の跡部に負けたとき、はっきりとわかった。
彼は、自分が言ったことを、大事にしてくれた。大事にしてくれていた。
リョーマの試合を見て、そう思った。彼がそうしてくれていたことが嬉しかった。誇らしかった。


…しかし、大事にしていればいたぶんだけ、今日のあれは堪えただろうとも、思う。
彼以外の誰にも知られないように、彼だけに、手渡したもの。
彼は、その意を汲んで、大事なものなのだとわかってくれた。そして大事にしてくれていた。

そんな風に大切に大切に渡されたもの、彼はきっとそれが自分のためだけに作られたものだと
思って大事に持っていたのに、実はそれが量産品だったなんて。


「越前…、すまない…」
「なんで謝るんすか?あれ、代々部長が次の部長に言ってるとか、そういうヤツなんでしょ?
だったらいいじゃないですか。もう、どうでも」
「えち…」
手塚が呆気にとられて何も言えないでいるのを面白そうに眺めながら、『あ、でも桃先輩や
海堂先輩をすっ飛ばしてそんなこと言っていいんですか部長?』と意地悪くリョーマは笑った。

「違うんだ、越前。あれは…」
「だったらなんだって言うんですか」
畳みかけるように強い口調で問い質す。

「俺は、部長を凄いと思ってる。だから、いい気分でしたよ、俺はこの人にここまで言わせたんだって」
「越前…」
リョーマは、ベッドの上に置いた両手を握り締めて手塚から顔を背けている。
きつく眉根を寄せた、怒っているような、苦しんでいるような、顔で。


「越前、俺は、今のお前と同じ歳に、大和部長から、俺がお前に言ったことと同じことを言われた。
言われたとき、俺はとても嬉しかった。
だから、お前にも、その言葉を使った」
リョーマは何も答えない。

「すまない、お前が、」
「部長はそれを凄く大事にしてたから俺にも言ったってことっすか?」
唐突にリョーマが口を開いた。
「…あ?ああ…」

リョーマはベッドから立ち上がると、いきなり立ち上がったリョーマに驚いたのか、少し
呆けた表情で自分を見上げてくる手塚の正面に立った。
「越前…?」
リョーマは屈みこんで、左手で手塚の肩を強く押した。
相手が何をするつもりなのか全くわからず、だからどう対処していいかもわからない手塚は
何も言わずリョーマが押すままに仰向けに体を床に倒していった。
手塚が倒れていくのと共に、リョーマは手塚の上に覆い被さる。
白いカッターシャツの胸の上に、リョーマは額をつけ、両手で手塚のシャツをきつく握り締めた。

「越前…?」
鳩尾のあたりにかかる、布越しとはいえ熱いリョーマの息が気にかかって、手塚はリョーマの
肩に手をかけた。
「…アンタの中の大和部長を引きずり出して殺してやりたい…!!」
「!」
手塚は驚いて、ビクリと体を震わせた。

「……悔しい…!」
リョーマは、低く、低く押し殺した声で、そう言った。

「越前…」
「悔しい。俺…を負かしたアンタが、あの人なしには出来上がらなかったのかと思うと…!
アンタの…、一部を、あの人が作ってるのかと思うと…!!」
手塚は、手を置いたリョーマの肩が小さく震えたのを感じた。

「越前、それは…、どういう、意味、なんだ…?」
自分の両手の中の小柄な肩を、宥めるように小さく撫でながら、手塚は聞いてみる。

「知りません」
「…なんだ、それは。」
思わず、首だけ起こしてリョーマのつむじをしげしげと見詰めてしまう。

「知らないものは知らないっす。
でも、アンタのテニスの…、それも大事な部分に、あの人がいるのかと思うと…
なんかムカついて…
部長が…、大事にしてたものを、俺にくれたのはわかったけど…
部長の…、大事なものを俺がもらえたってのは、嫌じゃないけど…
…、部長、俺、嬉しかったんすよ、ああ言われて。ほんとに心の底から嬉しいと思ったのは
跡部と部長の試合のあとですけど…。嬉しかった、震えるくらい。
…部長も、あの人にそう言われたとき、そうだったのかと思うと、ものすごく腹が立つ…!
憎い、あの人のことが。できるなら、アンタの中から跡形もなく消してやりたい…」
「……越前」
「でも…、そんなこと出来ない…。それが、悔しいっす…
それだけです」
いい加減起こしているのが辛くなって今にもぷるぷる震えだしそうになっている首を、手塚は
すとんと床に落とし、溜息をついた。

「…越前。ひとつ聞くが…
お前、俺が好きなのか?」
「…好き……?
ああ、俺の言ってること、取りようによっちゃ、そう取れるか……」
「…越前?」
「好きっていうのとは…、違います。あ、嫌いなわけじゃないすよ?
ただ、今部長が聞いた意味での好きじゃない、ってことで」
「…そうか」

「…………でも、必要だとは…思う。
それは、部長全部かもしれないし、部長のテニスだけかもしれません」
リョーマはことさら『必要』を強調した、はっきりとした口調で言った。

「それから、部長の心が俺以外の誰かで占められるのも、イヤ」
「越前…。やっぱり、それは…」
「でも好きじゃないっすよ」
リョーマはなぜか嬉しそうな笑い声混じりでそう言う。

「…そうじゃない、もっと別の…だと、思う。
でも、はっきり『こういう気持ち』とは、言えない。今は。
もしかしたら、ずっとわからないかもしれない」

「…構わん」

「そっすか…」

「…越前、俺が、お前を呼び出した時…
俺も、俺も…、お前の父親に嫉妬していたのかもしれない」
「…どういうことっすか?」

「…悔しいと、思ったのかもしれない…
お前が、青学テニス部を、見てくれないことが…
父親だけを見据えていることが嫌だったのかもしれない…
俺を、見て…欲しかったのかもしれない…、父親じゃなく、俺を」
「えっ!」
リョーマは手塚を押し倒してからずっとくっつけっぱなしだった顔をがばと起こした。
「部長が俺のこと好きなんじゃないすか!」

「…え。」
自分の言ったことの内容になのか、それともただ単にいきなり起き上がったリョーマに驚いた
だけなのか、手塚は目を見開くとそのまま固まってしまった。
リョーマはそんな手塚を見てクスクス笑うと、今度は頬を手塚のシャツにくっつけた。

「…いいですよ。俺そういうの気にしませんから。
でもまさか自分が当事者になるとは思ってませんでしたけど!」
くっくっと喉の奥でリョーマが笑う。その振動がくすぐったくて、手塚は言った。

「くすぐったい…。とりあえず体を離してくれないか」
「ああ、ハイ」

リョーマは、素直に体を離して起き上がった。
手塚も体を起こして座りなおす。
向かい合って座って目が合った途端、リョーマはふきだしてしまった。

「…え、越前…!」
「だって…」
「俺は、お前を…」
「俺を?」


「……はっきりとは言えない。…お前と同じだ。
でも、ひどくお前に拘っているとは思う。お前にも、お前のテニスにも。
できるなら、自分と同じ場所にいて欲しいと思う」
「…………。」
「気に入らないか?」
「…いいえ。」

「それでいいすよ、部長」

今は、まだ。





(02/12/03)

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