「真田」

「幸村。
何か用か?」
「練習メニューのことで、ちょっと話したいんだ。部活のあと、構わない?」
「構わない」
「よかった。じゃあ、またあとでね、真田」


さなだ


「あ…」

「ん、なに?やっぱり都合が悪い?」
「あ、いや…」

「真田、どうしたの?
いつもはきはき喋るお前が、口篭もるなんて珍しい」
「ああ、その…」

「今、ここでは、言えない事?」
「いや、そういうわけでは…」

「俺に、言えない事?」
「いや…」

「だったら、話してよ真田」

「幸村、お、お前の」
「うん。
俺の?」
「お前の…
お前が、俺を、『真田』と呼ぶときのその、発音が、どこか独特だな…、と…」

「…そうかな?」

「『だ』の音が、どこか鼻にかかったような…、どこか少し、甘ったるいような、響きが…」

「……んー
ふふ、きらい?」
「何を言っている!
好きに決まって…
あ…」

「ありがとう。嬉しいよ、真田」

「いや、つまらない事を…
すまない。」

「ううん。嬉しいよ。とても。
ありがとう。お礼に、ずっと側にいて呼んであげる。
………真田」



(04/05/08)

ブラウザバックでお戻り下さい