地面に落ちて、小さく跳ね上がったボール越しに、あなたが動くのが見えました。
仁王くん。
あなた今、死んでしまいそうなくらい辛いでしょうに…!なのに、なのにあなたは。
胸の中が、目元が、熱くなりました。

バウンドしたボールをあなたが体を起こし、すくいあげる瞬間、目が合った。
本当に、死んでしまいそうなくらい辛いでしょうに、それでもあなたはいつもと変わらない、人を食った顔で
笑っていましたね。

私は思わずふきだしてしまいました。 …泣きながら。

あはは。 あなたはほんと、どこまでも”あなた”を貫きますねえ。

…仁王くん。
私はあなたを、とても誇りに思いますよ。





ネットから落ちるボール越しに、柳生、お前が俺をじっと見ているのが見えた。
だから、
ええカッコしたくなったんじゃ。それなのに、笑っとったな、お前。

…目元をぬぐいながら。

それがなぜなのか、俺はわかるような気もするし、よくわからないような気もする。

まあ、
とりあえずあとで、お前あのとき俺を見て泣いとったじゃろ、とは柳生に言おう。



81話。顔の見えないふたりがこういう顔をしてればいいなと。 120802


「越前!」
「なんすか部長。部活のあと、部室で待ってろって言うから待ってたのになかなかこないし」
「他の人間が全員帰るのを待っていたからな」
「はぁ!?」
「そんなことはいいんだ」
「よくないでしょ」
「越前」
「さっさと終わらせてください」
「越前、昨日見たテレビ番組によると、左利きとスポーツ選手は長生きできないそうだ」
「…ああ」
「それを回避するには、毎日三十分間キスするといいらしい。だから越前、俺とキスしてくれ!」
「な、なんで!?!?」
「俺もお前も左利きでスポーツ選手。お互い早死にしたくはないだろう!!!」
「ちょっ!やめて!肩つか、まない、でッッ!」
「なぜ逃げる越前!」
「逃げるでしょフツー!!!」
「…越前」
「…なんですか」
「…越前は、俺が、早死にしてもいいと言うのか」
「誰もそんなこと言ってないじゃないですか…」
「左利きには優しくしないとだめだとも言っていた…。越前に冷たくされたら俺の寿命はますます短く…」
「俺だって今部長から優しくしてもらってませんが!?」
「…俺は負けない」
「え、突然なにを」
「ずっとお前に勝って、お前に勝ったまま死んでやる」
「うわっ!そういうイヤラシイ言い方するのやめてくださいよ!」
「そうなったら嫌だろう越前!」
「最初ちょっと困るなと思ったけど今だんだんどうでもよくなってきました」
「えっ」
「嘘ですよ」
「越前…!」
「こっちにこないでください」
「しかし」
「俺も見てましたよ。その番組。キスは、好きな人とじゃなきゃ効果ないんでしょ?」
「だ、そうだな」
「俺部長のこと好きじゃないし」
「えっ!!!」
「驚くとこですかそこ!?…ええと、あれは要するに気持ちいいことしてればカラダにいいって理由でしょ?」
「そう、だろうか」
「だったら、俺たちにはちょうどいいやり方があるでしょ?」
「キス以外でか?」
「いい加減そこから離れてください。…テニスですよ!テ・ニ・ス!」
「ああ!」
「せっかく帰りはふたりになったんだし、あの高架下のコートでちょっと打って帰りません?」
「そうだな」
「ふふ。そうと決まったら、さっさとココ出ますよ!部長!」



こないだのホンマでっかより。テニスしたら『スポーツ選手は早死に』に該当するような気がするけどはっきり覚えてない…(苦笑)。録画して
ればよかったー。 120310


「柳生!」
がらりと教室の戸が開いて柳生のクラスに仁王が入ってくる。
「なんですか?仁王く、んっ」
仁王はずかずかと柳生の席まで歩いてくると、立ち上がった柳生の後頭部に手を伸ばしわしづかみ自分の
ほうへと引き寄せてキスした。
クラスの女子が、キャー!と黄色い悲鳴をあげる。

柳生は慌てて仁王を振りほどいた。
「ちょっと!人前でこういうことするのはやめてくださいよ!」
仁王はにやりと笑って、言った。
「昨日のテレビで、左利きは長生きできんて言うてた」
「ええ?」
「けど、好きな相手と毎日キスしてればだいじょうぶなんじゃと」
「…意味が、よく」
「だからこれから、柳生は俺が死ぬまで毎日キスするんじゃ」
仁王は、柳生の手に手を伸ばすと、軽く力を入れ、少し笑って子供に言い聞かせるように
「わかったか?」
と言った。



「えー…、仁王くん」
「うん」
「とりあえず、それに対しての返答は……  別室で」
「ふふ、色よい返事を待っとるよ」
取っていた手を持ち上げ、そこにちゅっと口をつけると、仁王はまたずかずかと歩いて教室から出て行った。



同上。こっちは左利きと右利きなのでガチでやばい(泣笑)。でも柳生は人前じゃなければいいからだいじょうぶだよ(笑) 120310


「…と、いう訳で、皆さん、裕太くんをはじめ左利きのプレイヤーには極力ストレスをかけないように留意して
下さい。
よろしくお願いしますね」

はーい、と元気な返事が返ってくるルドルフテニス部室。
ミーティング終了。
みな、コートに向かう。そんな、中、

「…あのー…、観月さん?」
「なんですか裕太くん」
「…そこまで、しなくても…
俺べつに左利きだからって、そんなに苦労は…」
「だから、知らず知らずに負担が蓄積していくのが怖いんです!あなたは黙って言うことを聞いてなさい!」
「はっ、はァ…」

「9年ですよ9年!もしもそんなに早くあなたに先立たれてごらんなさい!」
「観月さ」
「そんなことになったら、あなたのお兄さんがあまりにもかわいそうですからね!!!」

「…あ、
アニキですか…?」
「ええ」
「アニキの、ため、だけ…?」
「ええ!」


「………」
「………」
「………」
「…僕もですよッッ!」
「ありがとう、ございます!」

ぱっ、と裕太の顔がうれしそうにかがやく。

「さっ!れ、練習に行きますよ!裕太くん!」
「はいっ!」



同上。素直に言えない上に最後には言わされちゃう観月(苦笑)。だいじょうぶ、裕太はきっとそんなキミに癒されてるはずだ! 120310


越前、誕生日おめでとう。

お前の誕生日のクリスマス、イブ。
街のあちらこちらでイルミネーションがきらめいている。
催しもの会場はもちろんの事、個人宅や会社社屋なども。
日が落ちる時刻に合わせて待ち合わせ、そのきらきらする光を一緒に見に行こう。
もちろん、寒空の下お前を待たせる事がないように、俺は三十分早く来る。
白い息を吐き出しながら待っている俺を見たお前は、ぱっと目を輝かせて走ってくる。
こらこら、人のいる中、そんなに走ったら危ないぞ越前。
俺は内心苦笑しつつも、
でも嬉しくて嬉しくて仕方ない。

俺達は並んで催しもの会場へと向かう。
会場へ伸びる大通り、そこの街路樹にも電飾が取り付けられ、明るくなっているのは夕方のニュースで見て
知っている。
ニュースなどきっと見ない越前は、きっとこの事を知らないだろう。
…まだ、会場に到着する前なのに。
目の前に、きらきらと明るい光のトンネルが現われた時、あいつはどんな顔をするだろうか。
きっと、輝かんばかりに嬉しそうな顔をして、部長、と俺を見上げるに違いない。

木々を彩るイルミネーションにうっとりしているお前の顔を眺めながらトンネルを抜けると、そこはもう会場だ。
巨大なクリスマスツリー、会場を真っ直ぐ貫く通りには光のアーチが遠くまでずらりと続いている。
建物の壁面を利用したスクリーンには、美しい映像が次々に映し出されている。
そして、会場のそこここに、動物や鳥の形をした光の像が。

わあ…、と、お前は小さく感嘆の声を上げる。
俺は、それを見て、聞いて、とても嬉しく思う。

会場は、すごい人だ。
人波に流されかけたお前は、きゅっと、控えめに俺のコートの袖口をつかむ。
馬鹿だな。そんな遠慮はしなくていい。
俺は越前に優しく微笑みかける。
そして、袖口をつかんでいる手をそっとはずして、その越前の小さな手を、俺の大きな手の中に握りこんだ。
越前は、びっくりして。
次の瞬間、恥ずかしそうに目を伏せる。
しかし、
嫌ではないのだ、恥ずかしいけど、でもそれ以上にこうされて嬉しいのだ、
というように、越前は小さな体をすり、と、猫が甘えてくるみたいに、俺に寄せてくるのだ。

えっ、越前…!!!!!!!!

俺は、握った手に思わずぎゅうううと力が入ってしまいそうになるのを必死でこらえる。

会場は、やはりすごい人だ。
手を繋いでいるだけでは、まだ、人波から越前を守れない。
俺は、押されて越前がぎゅっとこちらに近づいてきた時、繋いでいた手を離してぐっと越前の肩を抱き、俺の
胸元へと引き寄せた。
びくっと体を硬くする越前。
しかし、硬さはすぐに緩み、越前はぴたり、すっぽりと、俺の中におさまった。
安心しきっている、という、体で。
心の底から俺を信頼しているというその様子が、俺は嬉しくて嬉しくて仕方ない。

俺と越前はぴったりとくっついたまま、会場をまわって、そして…

そして…








…と、色々と計画を立てていたのに。
どうして、どうしてアメリカに行ってしまったんだ、越前…ッッ!(号泣)



リョーマ誕生日おめでとう! 手塚がキモチワルイのはこのサイトではいつもの事なので許してください!(笑) 081224


「柳生、誕生日おめでとう。誕生日プレゼントに、俺をあげる。俺を、柳生の好きにして、ええよ」

「仁王くんが?私のものに?」

「ああ。俺を柳生のモノにして」

「おや?そんなの、もうとっくになっているものだと思っていましたが」

「!」

「ふふふ。どうすればあなたをやり込め黙らせる事が出来るかなんて、さすがにもう、わかっていますよ」



柳生誕生日おめでとう! 081019


「手塚、こっちだよ」

不二と出かけた帰り道、地下鉄の駅構内、両側にポスターがずらりと並んでいる長い通路を歩いていた時、
ふと、あるポスターのある文字が目に入った。
俺は、それに釘付けになる。

『キスに強いメガネ』

キ…
キスに、強い…?

キスに強いというのは
顔を近づけた時に万が一こちらのメガネが相手の顔に当たっても痛くないとか、たとえば柔らかく曲がるとか
素材そのものが痛くない素材だとかそんな素材どんなものか全く見当もつかないが
また、激しく顔の向きを変えてもうっかりずれたり外れたり落ちたりしない、とか
ああでもどんなに動いても微動だにしないメガネより激しさに応じて乱れたメガネの方がアイツは興奮するだ
ろうかどちらだ
それをいうなら触れても痛くも痒くもないメガネより多少は痛みを伴うほうが興奮するたちなんだろうかアイツ

痛いけどそれでもそうしたかったからもしくはそうされたかったからとアイツに言われたら俺は
嬉しい、いやとても嬉しい、かもしれない
どうしよう俺は早急にこのメガネを購入するべきだろうかいつ何が起こるかわからないのだし
いやそれとも一度してみて痛いのはイヤと言われてからにするべきか
いやそれとも普通のメガネと痛くないメガネどちらも普段から用意しておくべきだろうか痛いのはイヤと言わ
れたらそれではと痛くないメガネをかけてやればアイツは喜ぶだろうか
しかしとりあえず、まず、このメガネがどういうものか調べに行く必要が
いやそれよりも、アイツの嗜好を把握するほうが先なの

「手塚」

か?

「っえっ、な、んだ。不二」

「…確かに、このフォントだと、濁点が小さくて、キス、に見えるけど」
「?」
「よく見てごらん、キスじゃなくて、キズ、だよ」





不二はなんでもお見通し(笑)
すいません、手塚が変態的すぎました。 081007


「リョーマさん、私ちょっとあっちを見てくるから」
「うん、じゃ俺はその辺ぶらぶらしてる」

今日は、菜々子さんのお供でホームセンターに来ている。

彼女が買い物を済ませる間、俺は広い店内をうろうろすることにした。

そういえば、部長の特技だったか趣味だったかが、木工細工なんだっけ?よく覚えてないけど。
じゃあ部長は、こういうところによく来るのかな。

と、そこで。ふと。

『安全メガネ』

…店内の広い通路の中央、ワゴンが出ていて、そこに何かが山盛り積んであって、ワゴンの真ん中に
『安全メガネ』
と書かれた紙が下げられたポールが立っている。

安全メガネ…

安全な、メガネ…

って、それは、なんだ?


…ああ。
切断や研磨等の作業中に、飛び散った微細な破片が目に入らないように、目を覆う、つるからフレームから
何から、全体が透明なプラスチックで出来た、あの。


安全メガネ…

なら手塚部長は、『危険なメガネ』だな。

それとも、『アブないメガネ』?

ははっ。

内心、噴き出したところで、菜々子さんからお呼びがかかった。





うちの手塚はほら、リョーマに対して色々と変態的だからさ!(笑) 081007


昼休み、仁王の教室を訪れた柳生。
見ると、仁王が椅子に座って自分のズボンをなにやら弄くっている。

「仁王くん、何しているんですか?」
「柳生」
仁王は顔を上げ、逆に柳生は仁王の手元までかがむ。
「…なんですか?糊…?」
「ああ、これはな…」

仁王は説明した。
電車の中で座って寝ていてふと目を覚ますとズボンの上に誰かが化粧の途中で零したと思われる日焼け
止めがぽたぽたと。
以前、自分の姉もそんな目にあった事があって、そして彼女の経験から『乾燥するまで待ってはがせ。ヘタ
に擦るととれない』と知っていたので、乾くまで待ってそれで今とっている… と。

「…それは災難でしたね」
でも私達みたいな若い男子が座席を陣取るのはあまり感心しませんねと柳生は微笑して釘を刺す。
確かに、真田に知られたら制裁ものだ、と仁王も苦笑する。
次からはせんよその時はたまたま疲れてただけ、と言う仁王に柳生は今度は含みのない笑みで頷いた。



「……あーあ。どうせ白く濁った液体をぶっかけられるなら、俺は柳生にかけられたかった」
「仁王くん」
「ん?」
「私は日焼け止めを使いませんけど…?」





いや、そういう意味ではなくて(by仁王) 080802

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