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 三国志
著  者  名  吉 川 英 治
出  版  社  講 談 社
お す す め 中国後漢末期の物語。中国史上最も長く続いた漢王朝も、全国で反乱が勃発し、その終焉を迎えていた。そんなとき、各地で立ち上がった英雄たちの活躍をいきいきと描いた作品です。やがて漢は滅亡し、魏・蜀・呉の三国時代を迎え、魏が晋に乗っ取られやがて中国を統一するまで約100年間が8冊につまっています。

吉川英治はやがて蜀を建国する劉備・関羽・張飛の義兄弟の活躍を中心に物語を展開するので、魏の曹操や呉の孫堅父子が好きな方にはやや物足りないかも知れないが、董卓や呂布は劉備の敵役として颯爽と登場するので、私はこの物語を読んで呂布の大ファンとなりました。

物語は三兄弟の桃園の誓いからスタートします。反乱を鎮圧する義勇軍に参加、大悪党董卓を倒す連合軍に参加、ややしばらく放浪したあと曹操に攻められた国を助けた縁で一国一城の主になります。呂布に国を追い出され、曹操に庇護されるが、漢の皇帝に曹操討伐を命ぜられたのが発覚し、同じ劉氏を名乗る劉表の元へ逃れます。そこで大軍師諸葛亮を三顧の礼で迎え、蜀建国への足がかりをつかむことになります。

劉備が目障りになった曹操は劉備に大軍を送り込む。劉備の息子阿斗を趙雲が抱えて曹操軍を突破する話や張飛が殿に立ち劉備軍の逃亡を救う話はこのときの戦いの話で、この戦いで曹操は劉表の国を手に入れる。劉備は南へ逃れ、呉の孫権と和を結ぶ。曹操は孫権討伐軍を送り込む。これが赤壁の戦いと呼ばれる。この戦いで曹操は命からがら北へ逃れ、孫権は呉を固め、劉備は西に進みやがて蜀を手に入れる。これで天下は三分され、いよいよ魏・呉・蜀の時代となる。

魏と呉に楔を打ち込むような形で残されていた荊州の地で劉備の留守を預かっていた関羽がついに動き出す。北上して魏を討伐しようとするが、留守にした荊州を呉に奪われる。すぐに南下するが計略にはまり呉に捕らわれ処刑される。関羽の首は曹操に送られる。曹操は関羽の死に涙し、手厚く葬るが、まもなく跡を追うようにこの世を去る。曹操の跡を継いだ曹丕は漢の皇帝から禅譲される形で魏の皇帝となり、漢は滅亡する。劉備は義兄弟の死に怒り、呉討伐軍を編成するが、その際張飛が暗殺される。劉備軍は呉を追い詰めるが、呉は陸遜を指揮官として送り劉備を大敗させる。劉備は白帝城に逃げ込み、諸葛亮に蜀を託しこの世を去る。

ここから主役は諸葛亮に交代する。蜀の落ち目と見た南蛮王の孟獲が蜀の領土に侵攻するが、諸葛亮は自ら軍を南に向け、孟獲を七度捕らえ心服させる。諸葛亮は蜀二代皇帝劉禅に出師の表を掲げ、休むまもなく軍を北上させる。魏は二代皇帝曹叡が蜀を迎え撃つために挙兵する。蜀と魏は何度も戦うが、その中でも諸葛亮を苦しめたのが司馬懿。仲達という名前の方が有名な彼は魏で唯一諸葛亮と戦える人物だった。何度も敗れるが、最後は諸葛亮が陣没し、魏の窮地を救う。このとき、諸葛亮は死んだと思い追撃し、諸葛亮の木像を見てあわてて逃げ出したという話が「死せる孔明(諸葛亮)生ける仲達(司馬懿)を走らす」という有名な故事として残っている。諸葛亮没後、蜀は魏に降伏する。魏は司馬懿の孫、司馬炎に国を乗っ取られ、司馬炎は晋を建国する。晋は呉を滅ぼし、この物語は幕を閉じる。
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