10月19日(3日目)

 5時起床。食事はパンとジュース。イタリアのホテルでは気をつけなければならないことがある。エレベーターの使い方を知らないと恥をかくのだ。私達の部屋は4階にある。初日にホテルに到着した日は、エレベーターにのったとき4階を押した。次の日の朝、レストランに行こうとしてエレベーターにのったとき1階を押した。1階に着いたので降りたら、4階と同じように部屋が並んでいた。もう一度エレベーターにのってボタンを見たら、4・3・2・1・Tとなっていた。何の意味かは分らないけれど、フロントはT階なのである。つまり私達が泊まっている部屋は、日本でいえば5階だったのである。
 7時15分、ホテルを出発した。目的地はポンペイ。途中、トイレタイムの為、お店に立ち寄った。トイレの前にはおじさんが立っていて、手を出している。チップとして500リラを支払ってトイレに入った。バスの中で食べる為にお菓子を購入した。3500リラを支払った。チップはサービスにのみ支払うものなので、物を買うだけの行為にはチップはいらない。
 カメオの店に到着した。実際に作業をしているところを見学した。店員さんに勧められた青色のカメオを購入した。このお店は日本円を使うことができるというので、34500円を支払った。店を出ると太ったおじさんが近づいて来た。「シェンエン」「シェンエン」と右手にヴァイオリンの形をしたオルゴールを持ち、左手に日本の千円札を持っている。どうやら彼は我々にオルゴールを1000円で売りたいようだ。同じツアーの人がお土産にと購入すると、彼は満足そうに「ドモ、アリガト」と答えていた。
 バスはイタリア半島を南下する。右手にアッピア街道が見える。「すべての道はローマに通ず」の古代ローマ時代に造られた道路で、道沿いに大きな松が並んでいるので、道がどこにあるのか一目瞭然である。ヴェスヴィオ火山が左手に見えてくる。ポンペイを埋没させた火山だ。11時ポンペイに到着した。
 古代ローマの都市を21世紀にこの目で見ることができた。ポンペイの街に入るため、門に向かう道路がある。紀元前に造られた街なのに、道路は歩道と車道に分かれている。車道は馬車の車輪のあとがわだちとなって残っている。門をくぐると古代ローマの都市が広がっていた。ポンペイの街を守るように、大型の犬が歩いている。建物はほとんどが2階建てだったが、火山灰が降り積もって2階が落ちてしまっている。よく見ると部屋の奥の方に階段がある。部屋の両壁に四角い穴があいている。2メートルくらいの高さにあるその穴に木の柱を通し、2階の床を支えていたそうである。天井が残っているのは浴場や狭い家だ。浴場の天井は水滴が落ちてこないように円柱型になっており、火山灰の重みを和らげる効果があったという。浴場の床はモザイクで装飾されている。
 脱衣所に人の形をした白いものがあった。ポンペイの遺跡を発掘する為に、灰を除去しているとき、不審な空洞があるのに気付いた調査員が、空洞に石膏を流してみたという。灰を除去してみると、石膏は人の形になっていた。ヴェスヴィオ火山の噴火で、大量の灰が市民を襲い、灰の中で大勢の人が亡くなった。灰の中の遺体が風化して、空洞だけが残って、当時の市民の苦しみを記録していたのである。浴場の通路に水道管が通っている。当時の水道管は鉛を使っていたので、ローマ市民は鉛中毒に冒されたという。
 売春婦の宿に案内してくれた。29歳にして初めて来たと言ったら、他のツアー客に笑われてしまった。売春婦の宿はすぐに見つかるようになっている。道路に男性のシンボルのマークがあり、そのマークが売春婦の宿の方角に向いている。宿が近くなると建物の壁に男性のシンボルのマークが付いていて、もうすこしだよと教えてくれる。宿に入ると真ん中の通路をはさんで2畳くらいの部屋が右と左に8部屋くらいある。部屋の入り口には女性の絵が書いてあり、男性は絵を見て女性を選ぶことができる。部屋の中は1畳くらいの石のベッドがあるだけ。女性は早く終わらせて次の客を呼びたいので、男性を石のベッドに寝かせ、自分は上に乗るという。男性は背中が痛くてすぐに出て行ってしまうそうだ。
 ポンペイで一番お金持ちの家にきた。家というよりは公園のような広さだ。周りに奴隷部屋があり、中央の広い部分が来客をもてなす部屋になっている。残念ながら2階は落ちてなくなってしまっていた。凱旋門を通って中央広場を見学し、ポンペイの遺跡をあとにする。昼食は遺跡のそばのレストラン。スパゲティ・イカの下足とイカリング。ペプシは6000リラだった。
 午後からはナポリ市内を見学した。ナポリ市内は治安が悪く危険なので、バスの車窓からの見学となった。札幌市のように市電が道路の中央部を走っている。運転手のステファーノさんは空いているためか、ずっと市電の線路の上を走っていた。マンションとマンションの間をロープで繋いで、そこに洗濯物を干している光景が見られた。下は道路で車が走っているから、洗濯物が落ちたらどうするのだろう。ナポリは洗濯物を干す光景が有名なところらしい。海沿いでバスを停め、カメラだけを持って降りた。ナポリ市内を背景に写真を撮ってもらった。またすぐにバスに乗り込んで出発した。高台からサンタ・ルチア港と卵城を眺め、ナポリをあとにした。
18時15分、ローマのホテルに到着した。部屋で少し横になり、それからローマの夜景を見る為にホテルを出発した。20時にレストランに到着し、席に案内された。ローマの夜景はオプションで、8名が参加した。食事はタコとパスタと魚料理でした。ローマの夜景はとても地味。ネオンがなく、自然につくられた夜景だ。白とオレンジの灯りが不規則に点々としており、真っ暗なところは遺跡か森だと思われる。函館の夜景も綺麗だが、ローマの夜景には視点が定まらないほどの広さを感じた。
 22時にホテルに戻った。明日からは毎日ホテルが変わるので、荷物を整理してから寝ることにした。洋服をたたんで、お土産をスーツケースにしまい床についた。



ポンペイの町並み