私は色白である。毎朝5時に起きて畑を作っているが、畑仕事ではあまり日焼けしない。なぜなら、虫に食われないように長袖長ズボンを履いているし、空を見ながら畑仕事をしているわけではない。土を見ながら仕事をしているし、首にはタオルを巻いている。畑仕事は昼までしかやらないので、一番お天道様が高い時間は、家の中にいる。したがって私は、美白の女王「鈴木その子」より白かった。こんな私が、顔だけ茶色になったのには、それなりの理由がある。
私は母とキク(妻)と3人で暮らしている。子供たちは立派に成長し、もう浜益にはいない。しかし、休みになると必ず遊びに来る孫がいるので、1年の半分は4人で暮らしている。
小学校の夏休みが始まった。文夫(三男)がまっちゃん(文夫の長男)を連れて浜益に来た。5人で晩御飯を食べ、床に着く。文夫は2階で寝る。母は佛間で寝る。まっちゃんは1階の和室で、私とキクの真ん中に蒲団を敷いて寝る。翌日、文夫はまっちゃんを置いて札幌に帰っていった。4人の生活が始まった。朝起きて畑仕事に行く。草をむしり、肥料をまいていると、まっちゃんが手伝いに来る。手伝いといっても、手には虫網を持ち、肩には虫かごをぶら下げている。今日食べる分の野菜を収穫して家に戻る。まっちゃんはバッタでも追いかけているのかなかなか帰ってこない。キクが朝御飯の支度をしているとまっちゃんはお腹が空いたのか帰ってきた。食事が終わるとまっちゃんはすぐに虫網を持って出て行った。正午のサイレンが鳴るとまっちゃんは帰ってくる。4人で食事をする。食事の後、まっちゃんを連れて海へ行くのが夏休みの日課なのだ。
海まで徒歩で10分。海水浴場に着くと、さっさと服を脱いで海に飛び込んでいく。痩せているくせに、海に入っている時間が長いし、潜っている時間も長い。私はハラハラしながら海を眺めている。こんなことが夏休みの間ずっと続くので、私の顔は日に焼けてしまったのだ。
お盆になると親戚が私の家に集まってくる。文夫も来る。私には孫が10人いるが、私たち夫婦の真ん中に蒲団を敷いて寝るのはまっちゃんだけである。他の孫たちは親といっしょに寝る。お墓参りが終わるとみんな帰っていく。文夫もまっちゃんを置いて札幌に帰る。お盆が終わると、まっちゃんは夏休みの宿題を片付け始める。自由研究は昆虫採集だから、もうほとんど完成している。夏休みが終わるころ、文夫が浜益に来てまっちゃんを連れて札幌に帰る。その頃には私の顔は真っ赤になっているのだ。
孫が遊びに来るととても疲れる。でも、早く冬休みが来ないかと、カレンダーを眺めながら心待ちにしている。今度は何をご馳走してあげようか…