10月21日(5日目)

 4時30分起床。前日お湯が出なくてお風呂に入れなかったので早く起きて入浴した。7時5分、スーツケースを廊下に出し、ロビーに向かった。朝食はパンとチーズとベーコン。天気予報は雷を伴う雨だったが、外は曇り。このままの天気であることを願い、8時にホテルを出発した。11時15分、ヴェネツィア新市街に到着した。トイレチップは1000リラ。イタリア南部は500リラだったから、イタリアは北に行くほど物価が高くなるようだ。フェリー乗り場でヴェネツィアのガイドをしてくれるシルビアさんと合流した。日本語が堪能で、背の高い女性だ。そこからフェリーでヴェネツィア旧市街に向かった。フェリーからはヴェネツィアの町並みを見ることが出来た。港には巨大なフェリーが停泊しており、水の都の片鱗がうかがえた。フェリーから丸屋根の美しい教会が見えてきた。ジェズアーティ教会という建物で、思わず椅子から立ち上がり、外に出て写真を撮った。揺れながらピントを合わせたのでうまく写っているだろうか?ジェズアーティ教会を通り過ぎるとお目当てのサン・マルコ寺院が見えてきた。
 フェリーが岸に到着し、昼食を食べるため旧市街地を歩きレストランに向かった。昼はボンゴレと魚とデザート。飲み物はオレンジジュースとコーラで15000リラだった。
 サン・マルコ広場に向かった。太陽の光に照らされたサン・マルコ寺院はヴェネツィアの栄華を放出するかのように、明るく輝いていた。寺院のとなりには総督官邸がある。ヴェネツィア共和国時代に大統領が執務を行っていた建物である。中に入ると黄金の階段があり、天井は金箔で覆われていた。階段を上っていくと謁見の間があり、大統領が異国の使者と面会していたという。宮殿の牢獄に向かった。牢獄に連行される途中にある溜息(ためいき)橋は、これから牢屋に入れられる囚人が橋の途中にあるこの小窓から外を眺め、溜息をもらすので命名されたそうだ。牢獄は地下2階くらいまであって、軽微な犯罪者は地下1階、政治犯など重罪の者は地下2階に閉じ込められる。地下1階は少し太陽の光に照らされるが、地下2階は真っ暗闇で精神的に耐えられないという。
 総督官邸を出てサン・マルコ広場に戻ると、先ほどまで大勢の人がいた広場中央に誰もいない。ベンチにも誰も座っていない。サン・マルコ寺院の周りだけごった返している。広場は浸水していた。ベンチに座っていた人達は、水の来ないところに移動していた。サン・マルコ寺院の周りは板を使って橋がつくられている。観光客はその上を歩いて広場を移動していた。なかには勇敢な人もいて、靴を脱いでズボンをめくって自由に行動している人もいた。やがて徐々に水も無くなり元の姿に戻っていった。
 広場は再び大勢の人でごった返す。建物の屋根に避難していた平和の象徴のハトが群れをなして広場に戻ってきた。日本の観光地でも見かける風景だが、ハトの餌を売る店があって、そこで餌を買った人はハトの群れに囲まれる。袋を開いた途端、頭や肩にハトが群がってきていた。
 15時、ヴェネツィアガラスの店に案内された。17時までフリーになったので、店内を見学したあと外に出た。サン・マルコ広場を抜け、運河沿いのカフェに立ち寄り、カプチーノを注文した。運河の向こうにサン・ジョルジョ・マッジョーレ教会が見える。運河から教会の建つ島へゴンドラが向かう。カモメがのんびり空を飛んでいる。太陽がサン・ジョルジョ・マッジョーレ島を照らしている。とても良い景色だ。目の前に座っているカップルも同じ風景を楽しんでいる。穏やかな気分になれる。カプチーノは1杯11500リラ、2人で23000リラだった。チップの相場は価格の10%くらいなので、2000リラを支払った。集合までまだ少し時間があったので運河の周りを散歩した。ヴェネツィアは水位が高く、運河をゴンドラが通るため、アーチ型の橋が多い。橋の階段を登ったり降りたりしなければならない。アラブ系の人が腕にかごを抱えて立っている。かごの中にはカラフルな丸い粘土のようなものが入っている。歩いている観光客に、かごから丸いものを取り出して売ろうとしている。子供におねだりされて買っている人もいるが、あまり売れていないようだ。ヴェネツィアと全く関係ないような気がする。
 17時、待ち合わせ場所に集まるが、2名足りない。添乗員さんが捜しに行くことになり、背が高く目立つというだけで、私がツアー客を案内してゴンドラ乗り場に向かうことになった。ゴンドラ乗り場に着くとガイドのシルビアさんがいた。少し待っていると添乗員さんが2人を連れてやってきた。2人は大鐘楼に登っていて遅れたそうだ。ゴンドラに乗って旧市街地に向かう。船頭さんは突然、坂本九の「上を向いて歩こう」をイタリア語で歌いだした。たぶん大勢の日本人観光客を乗せているのだろう。この歌を歌えば日本人は喜ぶと思っているのだろう。とりあえず驚いたふりをして、拍手をした。橋の下をくぐるときは、自分たちが観光客なのに、橋の上にいる人達に見物されているようで恥ずかしかった。運河の水は濁っていて少し臭った。10月のこの時期はそうでもないみたいで、夏の無風の日は臭いで具合が悪くなることもあるそうだ。建物は水に浸かっており、コケや貝殻が付着している。木でできているドアは、ボロボロになっている。建物は4階から5階くらいの高さが多い。古い建物だが、人は住んでいる。窓から洗濯物を干している人が我々に挨拶してくれた。日本人は外国人にここまでやさしく親切だろうか?船頭さんにチップを支払い、ゴンドラを降りた。18時、夕食はイカ墨スパゲティと肉。最後にティラミスが出た。オレンジジュースは8000リラ。
 19時40分、フェリーで新市街へ向かう。もの凄い雷が暗闇を切り裂く。外国は雷もスケールが違う。20時、シルビアさんと別れ、バスに乗り込む。20時40分、ホテルに到着した。208号室。部屋に入ってカーテンを閉めようとしたとき、突然大粒の雨が降り始めた。旅行中はまだ一度も雨にたたられていない。雨はすべてホテルに戻ってから降っている。幸運の女神は最後まで味方でいてくれるだろうか?ヴェネツィアのホテルは大きなダブルベッド。ヨーロッパのベッドは小さいらしく、イタリア旅行中も小さなベッドに小さくなって寝ていたが、今日は始めて大の字になって眠れそうだ。




ゴンドラからヴェネツィア市街を眺める