恐怖のセルシオおじさん

お客さんの足が遠のいていく深夜のコンビニ。
店員さんにとってはつかの間のひととき。
午後10時から翌朝8時までの夜勤は途中で休憩しないと体が持たない。

深夜1時頃、国道からライトがコンビニを照らす。
一台の車が入ってきた。
あの車は…
セルシオだ。

セルシオは駐車場の白線を無視して、コンビニの正面に止まった。
エンジンをかけたまま男性は出てきた。
助手席からも女性が出てきた。
男性は60歳前後のがっしりした体格で、女性は背は低く小太りである。
二人はコンビニに入ると、買い物カゴを持ってまっすぐジュースの売り場に向かった。
女性が缶ジュースを手当たり次第に買い物カゴに入れ始めた。
買い物カゴがいっぱいになると男性はレジにカゴを持ってきた。

ドン!
店員2人でレジ打ちを開始する。
コーラが…えーと1・2…
10本だ。
ジョージアが…6本?
いや8本だ。
バーコードで商品名を読み取り、本数を入力していく。
確認した商品は袋に入れていく。
ほとんど打ち終わった頃、男性はまた買い物カゴを持ってきた。

ドン!
今度はポカリスエットだ。
1本・2本…
LL袋がすぐにいっぱいになってしまう。
しかも重くて破れそうになっている。
男性はまた買い物カゴを持ってきた。
女性もおつまみがたくさん入った買い物カゴを持ってきた。
商品はこれで全部らしい。

女性はレジ打ちの終わった商品を車に運んでいる。
男性は我々をジーッと見ている。
金額を言うと、男性は財布の中から1万円札を数枚取り出す。
彼の財布の中にはいつも1万円札が1センチくらい入っている。
お釣りを渡すと、上着のポケットにしまい店を出る。

伝え聞いたところによると彼は中小企業の社長さんらしい。
仕事が終わった社員に振舞っているらしい。
彼が来ると我々は休めない。
しかも、ジュース売り場など空っぽになっているから、商品を補充して陳列しなければならない。
他のお客さんがいるときもお構いなくレジを占領する。
恐るべしセルシオおじさん。