| 時を告げる鐘がなった。自由時間になった。
 さあ、外に遊びに行こう!
 子供達はいっせいに外に飛び出した。
 
 外は雲ひとつない良い天気。
 みんなわれ先にとおもちゃ箱へ向かう。
 おもちゃ箱には、砂場で遊ぶスコップやジョウロ、ボールなどが入っていた。
 その中でも子供達に人気だったのが、木で出来た機関車のおもちゃだった。
 列車の数は多かったが、先頭の蒸気機関車の数は少ないので奪い合いになる。
 
 僕は3日ぶりに蒸気機関車を手に入れた。
 さっそく砂場に向かい、山を作りトンネルを掘った。
 山を作る砂は、表面のさらさらした白い砂ではなく、少し掘ったら出てくる黒い砂がいい。
 黒い砂は水分を含んでいるので、トンネルを掘っても崩れない。
 さあ、貫通式だ。
 トンネルを蒸気機関車がゆっくり通過した。
 
 もうすぐ自由時間が終わる。
 子供達はおもちゃを片付け始めた。
 僕の心に悪魔が何事かささやいた。
 僕はトンネルの中に蒸気機関車を入れ、山を崩した。
 これで明日も蒸気機関車は僕のものだ。
 
 次の日。
 時を告げる鐘がなった。
 自由時間になった。
 みんなわれ先にとおもちゃ箱に向かう。
 僕は真っ先に砂場へ向かった。
 そして砂を掘り返した。
 でも、蒸気機関車は出てこなかった。
 僕は、先生が毎日おもちゃを数え、洗っているのを知らなかった。
 |