ゴリラーマン

「ピンポーン」
「いらっしゃいませ」
店員は条件反射のように声がでる。

ある真夏の暑い夜、そろそろ彼が来そうな予感がしていた。
「ピンポーン」
「いらっしゃいませ」
入り口には彼が立っていた。
背は160センチくらいで太めの体。
半そで半ズボンで手足は毛深い。
僕達店員は彼を「ゴリラーマン」と呼んでいる。

彼はまず雑誌を読み始めた。
10分ほどかけて新刊コーナーの雑誌をパラパラめくる。
マンガコーナーとアダルトコーナーの中間でアダルト雑誌に集中する。
女性客が来たらカムフラージュするためだ。
そのとっさの身のこなしは超一流だ。

雑誌に飽きたら買い物カゴを持って店内を物色する。
500mlのペットボトル1本とスナック菓子とお弁当を購入する。
「お弁当温めますか?」
「はい」
「はい」って言うのをわかってても聞かなければいけないマニュアル店員です。

ゴリラーマンはレジの前で体を左右に振るのが癖である。
ところが、財布からお金を取り出すときだけ体の動きが止まる。
お釣りを彼の手のひらに乗せると、彼は指で枚数を確認する。
間違ってないのを確認すると、袋を持って外へ出て行く。

ゴリラーマンが去ったあと、店員はヒソヒソ会話を始める。
「彼って絶対独身だよね」
「年はいくつくらいなんだろう?」
「25歳くらいかな?」
彼が小走りで戻ってきた。
我々の会話が聞こえたのだろうか?
彼いわく
「マイルドセブンひとつ」