| 分らない。何の集まりだろう。
 会場に沢山の人が集まっている。会場は薄暗く、通夜のような雰囲気なんだろうか。
 いや、そうでもない。
 とにかく、集まっている人々は皆うすぼんやりとした姿である。
 何かの集会が終わったらしい。
 集会の空気は、皆が集団で宿泊したような気にもとれた。
 そして宿をでるのかもしれない。
 三三五五会場を、宿舎を出て行くらしいが、私はどうしたことか急いで出ようともしないが、出なければならない。
 そのためには支度をしなければならない。
 が、もづもづしている。
 と云うのは、どうしても気になる女の姿がある。
 その女もどうしたことかもづもづしている。
 会場に残る女なのかそれとも私共と同じように出て行く女なのか?
 何程かの時たつ間にその女が会場から立ち去ろうとしている。
 そのためか、私も支度に急いでいるらしいが、靴下をはこうとしても靴下がない。
 その辺を捜したが、あるにはあっても自分のものではない。
 仕方ないからつぐはぐの靴下をはいて、靴をはこうとしても靴下と同じようなことである。
 片方はいて片方はこうとしたら、野球のつぎれかかった靴だ。
 女は出かけた。
 おくれられない。
 あわててつぐはぐの靴をはいて後をおった。
 
 外に出たら厚田安瀬国道のような処で、うし暗い道だが、巾広い道だ。
 私の先に男の集団が歩いている。
 綱越しの声が聞こえてきた。
 思わず鰊だかと声を出した。
 前の男たちから鰊だどよとの声がはね返ってきた。
 沖は炭を流したような暗さだ。
 燈火がつらほら点々と見える。
 鰊舟のあかりなんだ。
 思わず浜益がどうだと聞く。
 前の男達から、タンパケの方で薄くあるどよとの声がかえし来た。
 男達は大急ぎで浜益に帰る方向にむかって去って行くんだが、私は女の後を追った。
 
 どこへ行くんですか?
 ・・・・
 私には分らない地名を数度繰り返したがどうしても分らない。
 浜益に帰るんですがどの方向ですかと尋ねても話してくれない。
 やがて道二つに分かれる。
 男達は右の方の道に去って行くが、私は男達の後を追う気がなく、女の後を追って何度やら声をかけるが、女は私には答えてくれないで私についてくるような素振りである。
 気持ちだけは浜益と思いながら女の後を追う。
 とうとう追いついた。
 別れたくないんだ!とさけんだ。
 何れからともなく抱き合う。
 この女、誰なんだ。
 はっと目が覚めた。
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