頭方見聞録
自分がどんなに若いと思っていても、老いは必ずやってくる。
子供の頃テレビで見ていた高校野球の球児たちは、自分より年上だった。
今でも高校野球が大好きで毎年見ているが、よく考えてみると自分より若いのだ。
10代の頃は20代の人がすごく大人っぽく見えた。
父親(繁穂)は私にとって追い越すことの出来ない存在だった。
学生時代の私を殴った父の年齢になってみても、私の心は幼い昔のままだった。
今、こうして退職を迎えても、自分はなんて子供っぽいのだろうと思ってしまう。
あの頃の威厳のあった父親も実際はこんなものだったのだろうか?
変わっていくのは自分の体だけ。

子供の頃のアルバムを開き、思わず笑ってしまうが、気持ちは昔も今も大して変わっていないようだ。
小学校の頃、学級委員をしていた友達。
とても大人っぽくてしっかりしていた友達。
でも、こうしてアルバムを見るとなんて幼いのだろうと思ってしまう。
あんなに頼もしく見えた友達だったのに。

同窓会に出席した。
なんともなつかしい顔がそろったものだ。
昨今の不景気はリストラ世代の我々にも多くの影響を与えたようだ。
職業の欄に空白が目立っていた。
同窓会の前の日、私はアルバムを開いて予習をした。
友達に話し掛けられて名前がわからなかったら失礼だと思ったのだ。
仲の良い友達と連れ立ってテーブルをまわっていく。
仕事をしている友達は、年齢より若いように感じられた。
仕草が大人っぽいし、スーツが良く似合う
仕事をしていない友達は、黒髪がふさふさしていても何か疲れているような仕草をしている。
世間の目を気にするように遠慮がちにしている。
高そうなスーツを着ていても似合ってない。

髪の毛が白くなった人も、無くなってしまった人も、同じ年代を生きてきた仲間だ。
今晩は楽しもう。
いたずら心でみんなの髪の毛を観察していた私も、よくよく考えたら真っ白だったんだ。
子供の頃、大人だなあと思っていた年齢の人達が、ビールを飲みながら思い出を語り合っている。
こんなもんさ、大人なんて。