12.伊勢路を北へ
 鳥羽から快速「みえ」に乗って一気に名古屋を目指した。2時間近くの長旅となるので、ずっとしまっていたCD
プレーヤーを取り出した。まだ聴いていなかった「FINE」をかけて、しばし車窓に見とれていた。蛇足だが、この
CDは旅にはピッタリなので、宣伝するわけではないが、是非購入をお奨めする。

鳥羽を出ると、車窓に海に浮かぶ島々を見ることができる。
台風が去ったばかりなので、あまり天候は良くない。

 途中、先ほど下車した伊勢市駅に到着。この時点で参宮線の未乗区間(伊勢市〜鳥羽)を乗車し、晴れて
参宮線完乗を成し遂げた。ここから先は何度か乗車しているせいか、一気に睡魔に襲われた。しかし寝る前に
車掌を捉まえて、途中通過する伊勢鉄道(津〜河原田)の運賃(490円)を払った。18きっぷはあくまでJR線内で
だけ有効なので、第3セクターである伊勢鉄道の運賃を払うのは当然である。ちなみにこの文章を読んだ以上は
「知らなかった」という言い訳は通じない。

 津を過ぎて伊勢鉄道に入った時点で、車掌が検札を始めた。先ほど購入した車内発行券と18きっぷを提示
して、また眠りに就いた。目が覚めて通過駅の駅名板を見ると「弥富」の文字。つまり桑名をも過ぎて愛知県内に
突入してしまったようだ。高架化されて様子が変わった八田駅付近を通過して、名古屋の町並みへと近づいて
いった。


13.”俊速”の大移動
 名古屋からは新快速で東を目指す。この列車は大垣発なので混雑は覚悟していたが、ホームに上がると
思った以上に混雑していた。それでも名古屋下車の人と入れ替わるので、1つぐらい空席があるだろうと勘ぐって
いたが、列車が到着してもあまり降りる人はいない。名古屋を通り抜ける人が多いようだ。まして4両編成なの
だから、なおさら混雑が激しい。運転席後ろの狭いスペースを確保して、”かぶりつき”特等席に腰を据えた。

 次の停車駅金山を過ぎると、速度計は100km/hを超える時間が長くなり、ついには120km/hにまで達した。並行
する名鉄に対抗するために、これほどのスピードを出しているのだが、当の名鉄は線形が悪いこともあって、
名古屋〜豊橋間におけるJRとの差が広がっている。しかしJRと名鉄では経由地が少し違うので、途中駅からの
乗客については名鉄に軍配が上がる。

右側の速度計が120km/hを指している。(これを見る限り、160km/hまでは出せるようだ)

 豊橋に到着してもまだ車内は混雑したままだ。本来新快速電車は豊橋〜大垣間を走るのだったが、浜松方面
からの乗換客が多いせいか、一部の列車が浜松まで直通するようになった。この列車も浜松行きなので、豊橋で
客が入れ替わるかと思いきや、ほとんど降りなかった。依然混雑したまま豊橋から各駅停車となって、更に東を
目指す。この時点で1時間近く立ちっぱなしなので、さすがに足が疲れてきた。周りを見るとあまり顔ぶれが
変わっていない。どうやら18キッパーのようで、同じく東京を目指しているのだろう。この混雑とこれから夕方
ラッシュ時間帯に入ることからして、浜松からの列車も混雑が予想される。ただ浜松からは多少余裕時間が
あるので、1本列車を遅らせてもいいようになっている。


14.日本一豪華な”各駅停車”
 列車が浜松に近づきホームに進入すると、向かい側に乗り換える予定の静岡行きが停まっている。座席が
埋まっているのを見て、次の列車にしようと思ったその時、ドア横に空席を見つけて約1時間ぶりに座ることが
できた。通勤電車と同じように窓に対して平行になっている座席(ロングシート)なので、あまり車窓は望めない。
しかし座れただけでもマシである。移動の疲れが出てきたせいか、少し眠くなってきた。しかしなぜか眠ることは
できなかった。新幹線で30分足らずのところを、1時間以上掛かって静岡に到着した。

 静岡からは19時34分発の東京行きに乗る。まだ19時前なので40分近く待ち時間がある。夕食に駅弁とビール
を購入し、ホームの乗車目標に荷物を置いて、列車の到着を待った。実はこの間にも東京方面への列車は
あり、それらに乗って沼津か熱海で乗り換えれば、もっと早く帰ることができる。しかし敢えて30分以上待った理由
は、乗換なしで東京まで行きたかったのと、34分発の東京行きに乗ること自体が目的だったからである。

逆光でつぶれてしまったが、前部の表示器には「普通」の文字。 静岡駅にて

 この列車は上写真の通り、373系電車つまり「ムーンライトながら」と同じ車両で運転する。時刻表上では通常の
普通列車だが、東京到着後折り返し「ムーンライトながら」として運転される。所属車庫が静岡にあるためだが、
特急として運転するには時間が遅いので、「ムーンライトながら」の回送を兼ねて毎日運転されている。ちなみに
上り「ムーンライトながら」の折り返し普通列車もあり、東京5時20分発静岡行きがそれである。(既に乗車済み)
この列車は18キッパーなら確実に知っており、先ほどの18キッパーも数人並んでいた。

 車内に入るとリクライニングシートが迎えてくれる。この列車を選んだ最大の理由である。もちろん特別料金は
一切不要なので、18きっぷだけで乗車できる。リクライニングシートに身を委ねて、缶ビールの封を切った。
疲れ切った体にアルコールが染み渡る。駅弁を平らげて一眠りしようと思ったが、昼間十分に寝たせいかもう
眠気が感じられない。しかし窓の外を見ても夜の闇にしか見えない。当たり前だが富士山の姿も見えない。(昼間
でもなかなか見ることはできない)途中熱海で、伊東方面からの接続待ちで10分ほど遅れた。伊東線が台風の
影響を受けていたのだろう。

 22時34分、3分遅れにまで回復して、2日前旅立った品川に到着した。反対のホームを見ると、下写真のように
臨時大垣行きに乗り込む18キッパーたちが、列車の到着を待ちわびていた。2日前はこの列に2時間以上も
並んでいたのである。月曜日でさえこの混雑なので、土曜日だった2日前はもっと混雑していたのだろう。

品川駅7番線ホームに並び、臨時大垣行きを待つ人たち。
やはり若者の姿が目立つ。おそらく大半は18キッパーだろう。

 品川到着時点で約48時間に亘る旅が終わった。しかしここで1つの問題が出てきた。今回18きっぷはまだ2日
(回)分しか使っていない。残り3回分をどうするかである。これについては次の機会に話そうと思う。



 これを以って終了です。最後までお読み頂き、ありがとうございました。


2002年10月7日脱稿、ちょっと長くなり過ぎた。次はどれぐらいになってしまうのか…。



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