記事タイトル:屏風岩雲稜ルートに行ってきました 


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お名前: 藤田憲一   
◇ 8月31日に、昇己先生のガイドで穂高の屏風岩(雲稜ルート)を登ってきました。
 その時の様子を日記風に書きます。

◇ 朝3時に起床。3時半に出発。横尾河原で川を渉ったが、水に落ちた。
昼間なら石を見極めて跳んでいくのだが、暗くてよく見えないため、慎重に足をのばしていったら、
少し水をかぶった石のぬめりにその足が滑った。
これまで渡渉の失敗はしたことがない私としては、大変気分を害する。
◇ 第一ルンゼの押出しを登る。大岩・小岩・砂まじりの涸れた沢を歩く。濡れた足が気持ち悪い。
◇ T4尾根の取り付きに着いたが、誰もいない。岩壁は貸し切り状態である。
一休みしていると、向かいの山の端が赤紫色に輝き始めた。これで天気は大丈夫、と昇己先生は言う。
登っているうちに夜が明けてきた。
◇ T4尾根の2ピッチを登る。ここはアプローチとはいうものの、4級程度の岩登りである。
体がまだ十分にクライミングに慣れていないから、慎重に登る。
 フラットシューズに履き替えたので、気持ちがよい。2年前にもこのルートに来たが、
その時はファイブテンの「スパイヤー」を履いていた。
つま先がしなってもどかしい思いをしたので、今回は常用の「モカシム」を持ってきた。
愛用の靴をここですり減らすのはもったいないが、岩に吸い付くような感触でさすがに登りやすい。
◇ T4でひと休み。ここからが雲稜ルートの最初のピッチだ。正面のディエードル状の壁をやや右上する。
上部にチムニーっぽいところが出てくる。ここの出口で右手がきちんと決まらず、
全体のバランスで体を上げるしかなかった。前回もここはちょっと苦労した。
よいホールドを見逃しているのかな、とも思う。
◇ 次の第2ピッチは、出だしが難しい。残置スリングがあるところだ。
すべてのピッチの中でもここが一番難しいのではないかと思う。かちっと効くようなホールドがない。
決まりにくいスタンスに立ち、そろりそろりと伸び上がるしかない。それで、右側にへつる。
へつった後も垂壁に近い。何とかここを抜けて、階段状のバンドを左上する。
◇ 扇岩テラスに着く。着いた時刻は7時40分だ。ここで休憩をとった。
2年前はこの場所で空模様があやしくなり、懸垂下降で戻ったのだった。
しかし、今日はからっとした晴天。雨の気配はまったくない。
◇ この上の第3ピッチは、ボルトの梯子だ。あぶみをかけて登っていく。
ある意味では単調な作業で、時間がかかる。ボルトは古いし、残置のスリングや細引きはすり切れそうだし、
上部は岩も風化していて、大変こわい。
 このピッチは、フリー化されているらしい。出だしの縦ホールドにチョークの跡が見える。
しかし、私には、ムーブの見当すらつかない。
◇ 続けて第4ピッチのトラバースをする。ここは、ハングした岩に頭を押さえられるような形になって
いるので、身をかがめて慎重にホールドをつかむ。
最後は足をバンドの外に出してしまった方が、かえって動きやすい。
◇ 第5から第7ピッチは、東壁ルンゼに入り、ルンゼ状のスラブをやや左上する。
ここは、雨が降ると滝のようになるという。登って上から見下ろすと、なるほどと実感される。
広い面積の岩に降った水が全部ここへ注ぎ込む形状となっているのだ。
◇ 最終の第8ピッチは、草付きのざれた凹角を左上する。最後はもろい岩が続く。
ここは谷川岳「変形チムニー」の最終ピッチに似ている、と昇己先生の言。たしかに似ている。
草付きは岩と違い、足がかちっと決まらない。そして、滑り出すと止まらないからこわい。
このピッチは慎重に登った。終了点は、ちょっとしたテラスになっている。
着いたのは午前10時40分。
◇ 午前中に着いたのでほっとしたが、実はその後が大変だった。屏風の頭までのハイマツこぎがきつい。
ブルーベリーを見つけては立ち止まって口に運び、足の早い昇己先生にレジスタンスを試みる。
◇ 屏風の頭まで来てやっと、登攀を終えた喜びが湧いてきた。四方は、穂高の大パノラマ。
涸沢や槍ヶ岳の山小屋の赤い屋根が目に染みる。ここで写真を撮った。
◇ さらに下降を続けた。涸沢ヒュッテには向かわず、屏風のコルの手前で登山道に下るショートカット
を選択した。途中までは踏み跡が明瞭だったが、次第に分かりにくくなる。
野いちごの群生に出会い、ここでもつまみ食い。そのうち、無水の沢に出た。
小型版の一ルンゼ押出しみたいなところだ。そこをずんずん下っていく。
途中に、水が湧いているところがあった。飲んでみると、冷たくて、しかも大変おいしい。
ペットボトルにすくい取り、1本分飲んでしまった。
さらに下降すると、涸沢ヒュッテと本谷橋との間ぐらいのところで登山道に行き当たった。
◇ そのまま登山道を下って横尾山荘へ戻る。帰着は15時半。早朝から12時間の行程だった。
疲労は残ったが、大きな充足感を得た。
[2002/09/02 21:54:34]

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