兄とルームメイト 作:しにを  目を覚ましたのは何故だったのだろう。  物音だろうか。  それとも人の気配。  あるいは単なる偶然だったのだろうか。  ともかく、ふと眠りから覚めた私はそれを見た。  信じがたい、夢であるとしか思えない、光景を。  まだ多少眠りの残滓でぼんやりとしたから、そしてあまりにも驚いたから、声も出なかった。   顔を上げかけ、そのまま固まってしまった。  そうでなければ、叫び声を上げていたかもしれない。    眠っていた部屋に兄さんがいた。  それがまず驚き。  自宅であったとしても、それは吃驚させられたかもしれない。  でも、それどころではない。  ここは、浅上女学院の寮だった。  男子禁制はもちろん、部外者は容易に近寄れぬ場所。  そこに、兄さんがいた。  私が眠っている間に、兄さんが同じ部屋に。  それだけでも目を疑う事だった。驚かずにいられるだろうか。  こんな深夜に何故、どうやって。  ただ、それだけならば驚きと言っても、困惑よりも喜びを伴っていただろう。  兄さんが距離も困難も物ともせず、私のもとまで忍んで来てくれた。  それはいろんな事に目を瞑れば、ロマンチックにすら思える。  秘密の逢瀬、深夜の忍び合い。端的に夜這いと呟けば、少し興醒めと生々しさを感じてしまうけれど。  だけど、驚きはそれだけではなかった。  そんなものはむしろ些細な事。  深夜の浅上の寮の部屋にいる兄さん、その兄さんがしている事こそ、私の頭を真っ白にした。  兄さんは裸だった。  兄さんは一人ではなかった。  兄さんに裸の少女が絡んでいた。  それも、一人でなく、二人も。  知らない女の子ではない。それどころか良く知っている。  名前も、どんな生い立ちで、どんな好みで、どれだけ勉強が出来て、何に興味を持っていて、それから……。  思考が変な方に向く。軽い逃避だろうか。  兄さんが抱きしめている少女を知っている。兄さんに抱きついている少女を知っている。  月姫蒼香。  三澤羽居。  ルームメイト、この学園での最も親しい二人。  三人は裸だった。  兄さんは、その私の友達二人を抱いている最中だった。  始まったばかりという雰囲気ではない。  いつから。  それにどうして。  私が傍で眠っていた事も、そして目覚めた事も、まったく気にする様子は無いように。  もつれ合い、体を絡ませあい。腕を手を回して唇を寄せて。     「お兄さんの、もっと大きくなってる」  羽居の腰が動いている。  上下に。そして前後に。  ゆっくりとした、それでいてリズミカルな動き。  柔らかそうな曲線が、たっぷりとした丸みが何ともいやらしい。  兄さんの動きではなくて、羽居の腰の振り。  中心から貫かれ、それを軸に体を淫らに揺する動き。  なんて、気持ち良さそう。  抑える事無く羽居は声を洩らしている。  意味の無い「あん」とか「あふっ」といった吐息にも似た声。  快楽を伝える「いい」とか「くる」とかの声。  大きいとか、奥までとか、断片的に状態を伝える声。    それだけで想像できてしまう。  膣道を広げて貫く兄さんの太いペニスの感触。  腰を動かす毎に奥まで突き入れられ、そして途中まで抜かる動き。  ぎゅうぎゅうに嵌っている状態を無理に動かして起こる、ぬめった摩擦。  圧倒的な存在感。  挿入感が、腰を蕩かせそうな快感になって体に広がるあの感覚。 「気持ちいいよー、お兄さん」 「うん、俺も。羽居ちゃんの中、凄く気持ちいい」  兄さんがそんな事を言って腰をあげた。  今まで胸を揉んでいたものの、ほとんど動いていなかった。だから、その唐突な突き上げに羽居は甘く悲鳴を上げた。 「奥まで、凄いよー」  今までが揺れるとい程度だったとしたら、今は跳ねるとといってもいいかもしれない。  羽居の体が上下に動き波打つ。  お尻がたぷんと動く様が何とも淫靡だった。  跳ね回る乳房が、重さと柔らかさを感じさせる。  ……羨ましくなんか無い。   兄さんがぎゅっと両手で胸を掴んだ。   「目の前でこんなに揺らして、これ以上まだ誘惑するつもりかな」 「違うの、だって下から…あ、強い。おっぱい潰れちゃう」 「指が埋もれてく、羽居ちゃんの胸、凄く柔らかくていいよ」  こんなにまでと思うほど、兄さんの手が羽居の胸を好きにふるまっている。  でも、痛いのじゃないかと思うほどの胸への仕打ちに、羽居は明らかに感じている。 「可愛いよ」    兄さんが、唇を寄せる。  白い肌の中にぽつんとあるピンク色の蕾、その周りの僅かな膨らみ。  触れるかどうかという軽いものだったけど、乳首へのキスに蒼香は身をくねらせる。  もしかしたら、兄さんは舌で悪戯したのかもしれない。   「でも、小さいし……」  普段の蒼香からは考えられない態度、小さな声。  恥じ入るような表情に、兄さんは首を横に振る。 「そんなの関係ないよ。それは、羽居ちゃんには大きさで負けるけど……」  ちょんと、傍らの羽居の胸を突付く。  さんざん兄さんにしゃぶって貰い、蒼香にも咥えられた乳首が、指先で弾かれる。  予期せぬ攻撃に、羽居は「あん」と甘く悲鳴を上げた。 「綺麗だよ。白い肌に小さくて可愛い乳首。  小さいの気にしてるなら、秋葉だってあまり変わらないぞ」  余計な事を言わないでいいです、兄さん。  でも、あんな顔で言われたら、気にしている部分でも気にならなくなってしまう。 「それにさ……」  兄さんの指が蒼香の乳首を摘んだ。  軽く引張り、軽く転がすように動かす。  蒼香は耐える顔。  指が離れた。 「こんなに敏感だしね」  兄さんが笑いながら、見つめる。ふたつの胸を。  左右の胸の先端、それは明らかに違っていた。  つんと突き出た乳首と、まだ柔らかそうな突起と。  愛撫で簡単に感じてしまった胸に、蒼香は恥ずかしそうにしている。 「片方だけじゃ物足りないかな」  今度は唇。  さっきの触れるキスと違う口での愛撫。  乳首を咥えている。  ちゅっと吸っているのだろうか。柔らかく、それとも強く。  歯で噛んでいるのかも。甘く、あるいは痕が付きそうなほどに。  舌で転がして、唇で引っ張って、唾液を垂らして。  どんなにされているのだろう。  わかるのは、兄さんの顔が上がった時に、もう一方に負けないほどつんと突き出しているだろうという事。  私も、乳首の先をちろちろと舐めて欲しかった。  痛みで悲鳴を上げるほど噛んで欲しかった。  形なら、蒼香にも、羽居にも負けていないと思う。  兄さんだって、可愛いって言ってくれて、夢中で吸ってくれるのだから。  でも、今、されているのは蒼香だった。     「じゃあ、もっとエッチになって貰おうかな」 「何をするの」 「するのは蒼香だよ」  蒼香を指差し、それを下に向ける。  兄さんの下腹部。  羽居の中でたっぷりと放出した後の、それでいてまだ屹立とした兄さんのものが見える。  凄い。  大きくて、羽居の愛液でとろとろとしていて。そこに白濁液がところどころついている。  ここまで匂い立つよう。  あの場にいるのが私ならば。  黙ったまま促すように兄さんは腰を突き出すだろう。  私はそれを受けるように屈みこむ。  傍まで近づいた私の顔に、突きつけられる兄さんのもの。  鼻先や唇をかすめる熱い高ぶり。  兄さんの火傷しそうな放出物の匂い、いやらしい私の液の匂い。  強く吸い込めばくらくらしそうな性の香り。  それで私は言葉を待たずに口を開いて迎え入れる事もある。  兄さんの命じる声を、あるいはお願いの声を待って、唇の輪を被せる事もある。  いずれにしても、嬉々として性交の跡を濃厚に留めた男性のものを口に含むだろう。  でも、蒼香は違う。  戸惑いの色。  何をしようとしているのかが分からない訳ではないようだった。  でも、それでも当惑している。少なくとも自分から動こうとはしない。兄さんを待っている。 「羽居ちゃんので、こんなに濡れてるだろう?」 「うん」 「あんなに気持ち良くなった時のだよ、とろとろこぼれる程になって。  舐めてみて」 「うん」 「俺のも平気だろう? 口の中に出すよりは大丈夫だと思うけど」 「口でもいきにり出したりしなければ平気だけど。  舐めればいいの?」 「好きにして」  頷くと、蒼香は屈みこんだ。  手で、兄さんのペニスに触れる。  蒼香の小さな手の感触はどうだったのだろう。包み込むような仕草に、兄さんが溜息を洩らした。   「こんなに大きい」 「そうかな」 「うん。これでいつもめちゃくちゃにされるんだよな」  文句のような台詞だが、手の仕草は優しげだった。  鼻を近づける。 「凄い匂い。羽居と志貴のいやらしい匂いが混ざってる」  何度も大きく匂いを嗅いでいる。  羨ましい。  射精したばかりの兄さんの熱いペニスの匂い。  それを独り占めしている蒼香。 「んん…ッ」  何度か匂いを堪能すると、蒼香は幹の半ばに唇を押し付けた。  粘液が赤い唇に付着する。  そのまま幹にそって唇が滑った。  赤黒く張った傘の根本まで。  少し位置をずらして、今度は根本へと降りる。  ただ、擦りつけているだけではない。  そうしているうちに、ねっとりとまつわりついた性交の名残が薄れていっていた。  舐め取っている。  幹を蒼香は、唇と舌とで清めていた。口に入れたものは飲み込んでいる。  兄さんは嬉しそうだった。  快感でもあるのだろう。  それ以上に、蒼香があんなに従順に奉仕しているのが嬉しいように見える。  いつものきつい言葉を吐く口が、あんなに懸命に。  そうしているうちに屹立の幹はあらかた綺麗になった。  兄さんと羽居の液の代わりに、蒼香の唾液がまぶされてもいたけど。 「後は……、ここ、だよね」  蒼香は顔を上げて兄さんを見る。  そして大きく口を開く。手付かずのペニスの膨らみ、てらてらと濡れ光り精液を滲ませている先端を口に含んだ。   「あ、んん、気持ちいい」  兄さんが声を洩らす。  蒼香の小さな口では、あんなに頬張っただけで圧迫されている筈。  口腔の固い壁、柔らかい舌、濡れた粘膜。それらがぎゅうぎゅうに兄さんを迎えているのだろう。     「蒼ちゃん、ちゃんと女の子らしいよー」 「そうなの?」 「蒼ちゃん、さっきのキス、前より上手くなってなかったかな?」 「ああ。舌なんか入れられて、気持ち良かった」 「練習したんだから、ね、蒼ちゃん?」 「ば、ばか、余計な事言うな」 「ええとね、前に一緒にした時、お兄さん誉めてくれでしょ。  羽居ちゃんのキス、凄く上手いよって。嬉しかったよ、えへへ」 「それでね、蒼ちゃんたら、教えてって言ってきてね。  二人で何度もキスしたの。こんな風に」  羽居が唇を蒼香のそれに重ねた。  ちょっと驚いた様子をしたが、蒼香もそれを受け入れる。  唇を擦り合わせるように、少し動かしている。  頬の、顎の微かな動き。  女の子同士のキス。ここでは、ありふれているとまで言わないけど、そう珍しい訳でもない。  親愛の印としては。  でも、明らかに二人のは性愛を感じさせるキス。  舌を絡ませあっているのが、単なる遊びや親しみの表れな訳が無い。  同性とはいえ、惹きつけられそうなほどの妖しさを見せていた。  それが異性であればさらに効果があるのではないだろうか。  少なくとも兄さんは、二人のキスの様を息を飲んで見つめている。  羽居が後ろから蒼香に抱きつく。  そのまま、崩れるように後ろに倒れる。  抵抗すれば別だろうけど、二人の体格だとあっさりと蒼香も従ってしまった。  二人で重なって仰向けになった状態。 「さ、お兄さん、いいですよ」 「ちょっと、羽居」 「一緒に」  兄さんは、ちょっと戸惑って、そして理解の色を浮かべた。  四つん這いになって、二人に近づく。 「じゃあ、最初は蒼香かな」  先端を当てた様子。  蒼香が息を呑んでいる。 「ゆっくりと入れてみよう」 「あ、んん……」 「蒼ちゃん、体震わせてる」  力強く奥まで一気に突き入れる動き、それとはまた違った挿入の動き。  先端を潜らせ、ゆっくりとゆっくりと兄さんが入り込む、あの感覚。 「交替」  兄さんが腰を引く。  蒼香の体が少し動く。  足が兄さんの手で上げられ、そして、体をずらしつつ兄さんは再び腰を前に。 「あ、そんな角度から」 「少し挿入し難いな。もう少し、体ひねって」 「こう? お兄…あ、あん。いっぱいだよう」 「さっきよりきつい。蒼香のでたっぷり濡らしてあるんだけどなあ」    寝たふりをしているのが馬鹿みたいになる。  三人で楽しんでいるのに、私だけ除け者なんて。  それでいて、刺激だけは襲ってくる。  喘ぎ声と、嬌声とで、体が動く音と、粘り気のある淫音とで。  体が火照っている。  欲情している。  股の間が、むずむずとしている。 「もっと、もっとしてーー、志貴ぃぃ!!」 「うあ、凄いよ。 「