私が・・・      シエル!シエル!    私を呼ぶ声が聞こえる。    私が大切にしている人の声。    あの日、ずっと、一緒に、私を幸せにしてくれると言った、あの人の声。     目覚める。    そこには、私が大好きな遠野くんが微笑んでいた。   「シエル、今日はどうしたの?さっきから、ボーッとして。何かあった?」    彼は気になっているらしく、私の顔を覗く。    私は、なんで、今日はこんなになるか、わからずにいた。いつもならば、    こんなことはない筈なのだ。    遠野くんには、心配をかけたくないので、   「なんでもありません。今日は、ちょっと夢見が悪かっただけですから。」    と微笑みながら言った。    否、微笑むように言った。なぜだか、私自身、上手に笑えているか、わからなかった。    もしかしたら、引きつって、作り笑いだと、わかるかもしれない。でも、遠野くんには      心配かけたくはなかった。        今日は、私の誕生日。それをお祝いしよう、と彼は言った。    今日は、ロアがいなくなって、初めての誕生日を迎えることになった日。    私が「人として」誕生日を迎える、何年ぶりかの日。    それを、遠野くんは一緒に祝おうと言ってくれた。確かに、今、付き合っている二人ですから、    一緒に誕生日を祝う、ということは、当たり前なのかもしれない。      ───でも、私には嬉しかった。           迎えられるはずがない、と思っていたことだから。    だって、そうでしょう?    実の両親を殺して、私の育った街の人たちを苦しめたのは、紛れもなく私なのだから。          ───いつも思う。         幸せだと気付くといつもそこにあるもの         それは、贖罪の感情。    この街に来て、遠野くんと出会って、幸せだと思うたびに、この感情が、      心を締め付け、      私の気持ちを、辛くする      優しくされる度に、      辛い気持ちに襲われる      それが悟られないように      笑い続けるのが      ・・・辛くて          『人をくびり殺したい』     あの時の感情。     そして、衝動。     それに負けてしまった私。     また、繰り返しそうで。     だって、あの時のお父さんたちを貫いた感触がこの手にあって。        それを、遠野くんにしてしまうのが非道く怖くて     繰り返してしまいそうで。     また、夢。     あの時の夢。     罪を背負った日。     私は、殺人の衝動に駆られた。     そして、勢いに任せ、父と、母の体に穴を、この手で開けた。      ───不意に、包み込まれる感覚があった。         顔を上げるとお父さんが私を抱きしめた。         そして微笑んだ。        「シエル! シエル!」     また、ぼうっとしていたみたい。最近はずっとこの感情に襲われ、不安な私。     気付くと、遠野くんが私を抱きしめていた。          そして、不意に私の心はいっぱいになってしまって     その胸に顔をうずめて、     泣いてしまった。      その胸は温かく      私の心の冷たくなったところに      熱を持たせていった。                    唐突に、思い出した。     体を貫かれたお父さんは私を抱き、微笑んで、     「エレイシア、幸せになるんだよ」     と言ったのを     「この夢、信じてもいいですか?お父さん」     唐突に出た言葉。     そこに、     「いいんだよ。」     と聞こえるはずのない言葉が聞こえた。     「え?」     と、目を開く。     そこには、微笑み、私を真っ直ぐに見つめる遠野くんの顔がありました。     「シエル、どんな夢を見ていたか、俺はわからない。でもね、それが、シエルを救うのなら、      それで、シエルが少しでも、楽になるのならば、信じるべきだと思うよ。」     胸の中にその言葉が沈んでいった。          「ねぇ、遠野くん、ずっと側にいて、私を幸せにしてくれますか?」     心からの質問。彼ならば、なんて言うか解ってる。でも、聞きたかった。     「うん。幸せにする。      ずっと、ずっと、世界が終わるまで」     彼は言った。私は、     「ねぇ、もう少しだけ、こうしていて下さい。」     と言った。          だって     貴方が       貴方の腕が、声が、胸がここにあって      私には、ここに貴方だけがいれば      幸せですから。       〜〜〜F I N〜〜〜


   TAMAKIです。    初のシエル主演です!    なかなか、時期がズレたんで、感情の表現に自信がありませんが    いかがでしょうか?     ‘02・5/17 P.M. 

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