さっちんシナリオ
『月姫』EXシナリオ・弓塚さつき編解説(暫定版)



 ようやく公式で登場した弓塚さつきシナリオ。
 他のシナリオ同様に全選択肢網羅の攻略チャートと章毎の解説を作成・掲載予定しているのですが、今回は混合一体というか感想文のついでに簡易攻略、といったスタンスになっています。
 ひとえに時間不足です。後日に雪辱させてください。


  はじめに

 *さっちんルートは、メインキャラ5名のシナリオクリアー後に道が開けます。
  ただし、トゥルー・グッド(ノーマル)全てではなくて、片方でも見れば条件を満たすようです。
  (0からやり直すのはさすがに……、未確認)

 *'02/7現在では、 有志の方のミラーサイトからのダウンロードで入手可能。
  OHPでは一時中断しています。
  デェフォルトの『月姫』本体には入っていません。今後出るバージョンではわかりませんが……。
     
 *あくまで、おまけという事でバッドエンドを除くエンドは1つのみ。
  また、作中の期間も1週間弱という事で、ボリュームは他と比べれば少ないです。
  (それでも、その辺のゲームのメインシナリオより中身は濃いですけどね)

 *選択肢は、「正解が黒太字」「バッドとか注記すべき別選択が赤」という表現にしています。






『1/反転衝動T』

 始まりですから当然ながら他と同じです。
 公式HPの紹介ページ
  「遠野家に戻る最初の日ですから、気を引き締めて遅刻せずに登校し、とっとと帰りましょう」
 この一文はさり気無いヒントだったんですね。
 とりあえずここから分岐スタート。


   「今は教室に直行するべきだ」
   「教室に残って食事をとる」
   「いいかげん覚悟をきめて、屋敷に帰る」


 一緒に帰るのが第一前提ですから、遠野家ルートでの選択を取っていればOKです。

   「弓塚さんを呼び止める」

 これでさっちんルートへの門は開きます。

   「そのまま屋敷に向かう」→ 秋葉・翡翠・琥珀ルートへ

 しばし会話が続いて別れて遠野家へ。「守って」と「また明日」のコンボはちゃんとあります。
 一人になっての帰宅、選択は出ずに無条件で秋葉の事を思い出します。

   「居間に行って秋葉と話をしよう」
   「大人しく眠る」






『2/反転衝動U』

 翡翠に起こされて七つ夜と刻まれた短刀を入手したりといった展開は同じ。
 学校に行くと当然ながら、さっちん健在。
 期待半分不安半分といった面持ちで近寄ってきます。平穏な日常を堪能しておきましょう。


   「秋葉に挨拶をする」
   「弓塚さんに挨拶する」


 まあ、当然ですね。昨日に引き続き吸血鬼談義。

   「弓塚さんと一緒に帰る」

   「一人で帰る事にする」→「クラヤミ」ルート


 さっちんとの会話は、特に後の条件づけには絡まないので、好きに選択して楽しんでOKです。

   「そんな事はないよ」
   「子供の頃の事はよく覚えていない」
   「でも、朝は遅いかな」


 この辺の流れが無難でしょうか。「実は遅くまでよからぬ事を」は笑えます。
 どう頑張ってもシエル先輩や秋葉からは出てこないような普通の受け答えが、なんか新鮮。
 寄り道もせず帰って来たので翡翠と秋葉に怒られる事もなく、穏やかな夕べを迎えます。





『3/ヒビ』

 さっちんルートの章タイトルはカタカナになってます。ヒビは「日々」? それとも「皹」?
 早くもさっちんvs秋葉!! と思わせておいて、修羅場は迎えず。まだ平穏な日々。


   「弓塚さんと一緒に帰る」

   「一人で帰る事にする」
→「クラヤミ」ルート。 

 どこか一緒に帰る様が「TLS」を彷彿とさせます。
 ドキドキした挙句、倒れてしまうのは志貴の方ですが。
 眩暈を起こし、倒れそうになる志貴。チャンスとばかりにさっちんが介抱してくれます。
 (目がキラリと光ったように見える演出……)

   「お願いする」
   「琥珀さんを呼んできて」
   「お礼も言いたいし、少し寄っていってよ」
   「中学から一緒だったんだ」
   「俺もまだ慣れていないよ」


 大きなお屋敷とかメイドさんの存在に、素直に驚いているさっちんが妙に可愛いです。
 秋葉も、アルクェイドやシエル先輩に相対した時と比べると、お嬢様らしい対応。
 拳を振り上げようが無くて、大人しい対応している姿がたまらないです。
 さっちんが帰った後も「なんですか、あの女は!」という口調でなくて、黙りがち。
 そして恐る恐るといった尋ね方をしているのが、なんともいい感じです。





『4/イト』

 「意図」? 「糸」? 平穏な学園生活に幕。そろそろ伝奇物としての貌が現れます。
 何気にシエル先輩の影がちらほらとしています。監視しているのか。
 正体不明の化け物から逃げるシーンを緊迫感あるものにしている文章力はさすが。
 眼鏡外せばあっさり始末できるだろうに、とプレイヤーに思わせませんから


 今度は昨日夕食をご馳走になったお礼とかで、お弁当を持ってくるさっちん。
 つくづく『月姫』じゃなくてどこか他のゲームなら、と思わせます。
 ヒロインじゃないまでも、メインキャラになれた器でしょう。

 さっちんとの食事&会話。「遠野くん、どうしてお弁当じゃないの?」辺りの会話が新知識。
 秋葉がお弁当を持っていく習慣が遠野家に無い?
 寄宿舎付の学校で生徒全員が食堂で同じものを食べているから、なるほどね。

   「美味しいよ」
   「弓塚さんの手作りでしょう?」


 あたりを選んでくのが良いでしょう。
 いや、必ず選んで、恥ずかしそうに俯くさっちんに萌えろ。
 しかし女の子としての戦闘能力は高いですね。手編みのマフラーとかの隠し技も持っていそう。

   「弓塚さんと一緒に帰る」
   「一人で帰る事にする」
→「クラヤミ」ルート。 

 途中で謎の化け物登場。
 とにかく逃げるしかない二人。そしてあわや、という処で……
 よく言えばいいとこ取りだけど、便利屋にも見えるシエル先輩登場!
 ここでは謎の人といった感じで、志貴達は実力の程を垣間見るだけですが。





『5/キョウカイ』

 これは「境界」?「教会」?「教戒」? さっちんの顔色が悪いと思ったら午前中に早退。
 妙な胸騒ぎを感じる志貴。さりげなく一緒にお見舞いに行くシエル先輩。

 埋葬機関(という単語は出ませんが)の説明とか、他シナリオとはちょっと異なる物言い。
 志貴にしても弓塚さんにしても無関係、という位置付けなのでしょう。


 選択肢は無し。

 遠野ルートからの派生なのでシキ登場と思わせておいて、ロア登場。





『6/コウタイ』

 これは「交替」?「後退」?「抗体」? どれも合っている様な気がします。

 さっちん半吸血鬼化。やはりこうなる運命か。嗚呼。
 でも、さっちんの魅力の半分は、吸血鬼化した姿にあるのも事実。
 いわゆるドラキュラ物の“犠牲者の許へ2度訪れる”、という様式美。
 これを『月姫』世界で成立させるお遊びが、ニヤリとさせてくれます。

 さっちん凶悪、全編通してこれほど吸血鬼らしい吸血鬼いないのでは?
 まあ、さっちんの吸血鬼ポテンシャルの高さは、公式の用語事典にもあったし。


   「動揺を隠して近づく」
   「何か方法があるはずだ」

   「いいよ、仲間になるよ」
→吸血鬼ルート。

 少し奥瀬サキ『火閻魔人』を彷彿とさせるシーン。「太陽からは逃げられないよ」の会話とか。
 もっとも、志貴が「吸血鬼化した細胞全てを……殺した」とかのシーンはないですけどね。
 (『低俗霊狩り』ならともかく、あまりメジャーなマンガじゃないかな?)

 しかし何気に言われたい放題言われているな、志貴。
 あれでけっこうさっちんも、これまでの過去で心に溜め込んだ鬱屈が多いんですね。


   「絶対に助ける」

   「逃げる」
→「夜の訪問者」END(*仮に名づけました)

 最後の最後で見捨てたりすると……。
 さっちん凶悪……。これはこれで素敵すぎる。





『7/イタン』


 これは「異端」しかないでしょう。
 後はハッピーエンドに向かうのみ。
 全体通して通常シナリオの約半分の日数ですが、なかなかにボリュームあります。
 さすがに話が進むにつれて張り巡らせた謎が明らかに……、とかの展開は無いですね。おまけだし
 ただ逆に、とにかくさっちんありきといった展開で、ファンにはたまらないと思います。


   「それでも我慢する」
   「機会を得るまで、耐える」


 他の選択は全てデッドエンドになります。これでエンドへの選択は終了。
 シエル先輩が八面六臂の大活躍。実は裏シエル先輩救済シナリオかと思わせます。
 やっとかけがいのない普通の日々が、とジーンとしている志貴。
 すると、ちょっと怖い顔のシエル先輩が、こっちへ来いと手招きしています。

 ええと、弓塚さんは死徒で無くなった事により、これまでの吸血欲・飢餓感が行き場を失う。
 そして、その欲求は人間の持っている似た感覚に変換される……、ふむふむ。
 男の場合は、破壊衝動・殺人衝動になる場合が多い。
 場合によっては助けた人間と殺し合いになる悲劇が起こるケースもある。それは怖いな。
 口ごもるシエル先輩
 ほう、で、女の人の場合はそうではなくて?
 情欲や肉欲に転じるケースが多いと。もう自分では抑え切れなくなる程……。
 で、それがどうしたと仰いますか?

 ああっ、苦しそうに呻いているさっちん。

「遠野くん、優しくしてあげてくださいね」
 え、え、え?

 ……そう言えば18禁でしたね。

 Hシーン突入!

 忘我の面持ちで何もかも受入れ、というか欲望のままに快楽を貪りながらも、ふと時々理性が表に出るさっちん。
 このシーンの描写が個人的にはツボでした。

「やだ、こんな……。遠野くん、け、軽蔑しないで……」とかの台詞いいよね? 

 いつもと違って志貴がそれほどは、はっちゃけてませんね。
 あくまで優しくしてあげています。でもしっかり3回。


 → HAPPYEND 「重なる足音」





『 /クラヤミ』


 最初の4日間にさっちんと帰らないと、このルートに突入。
 どれをどうしてもバッドエンドへ一直線。
 遠野ルートにおける「暗黒唇痕」+本来のさっちんシナリオといった感じのストーリー展開。


   「尋ねる」
   「とにかく隙を見て逃げる」
   「弓塚さんを探しに行く」
   「好き」
   「いいよ、それで楽になるなら」


 まあ、どうあがいてもさっちんに血を吸われて意識を失ってしまいますが、綺麗な流れはこれ。
 そして「目が覚めたらずっと一緒だよ」と語りかける声を聴きつつ、フェードアウト。
 見方によっては、さっちんファンにとってのみのグッドエンドとも思えるので、安心してプレイ。
 ま、普通はバッドエンド扱いらしいですが。




『吸血鬼ルート』

 あくまで「6/コウタイ」のバッドエンドルートにすぎない訳ですが……。
 ちょっと補足が大きいので別項目にしました。


   「さつきと一緒なら何処だっていいさ」

 夜がこんなに綺麗だとは、とか言って手をつないで何処かへ去る志貴とさつき……。
 ある意味トゥルーエンドらしい味わいのエンドへ。
 闇の住人としての二人。目に映る夜の世界、夢幻感漂う描写の素晴らしい事。
 一見平和そうで、いずれ迎えるかもしれない結末への暗示とかも絶品。
 明日が無い二人故に、束の間幸せなのでしょうか。


   「この街に留まる」

 もう一つの選択であるこれを選んだ先に、有名なバグが眠っています。

 本来なら、夜の住人となった二人の前に、圧倒的な力と威圧感を漂わせる純白の吸血鬼・真祖の姫君が出現。
 そして、抵抗らしい抵抗も何も出来ずに殺されるという壮絶なENDに行きます。
 しかし、インストールされた「月姫」が最新Verになっていない場合、数ページ分がショートカットされます。
 そのために、 何者かが現れる → 即死亡  ……という展開での終わり方になります。

 なまじ文章のつながりに違和感が無いものだから、「アルクェイドが出た」「出ない」の騒ぎに。
 これは当時、公式の掲示板でも何日か議論されていました。
 シエル先輩ルートでも怖いアルクェイドは出てきますが、人間っぽさの欠片もないアルクェイドの壮絶さ。
 最強の吸血殲鬼に、滅ぼされるべき吸血鬼側として出会うこのシーンは、しびれるほど怖いです。
 かつての感情に乏しいアルクェイドは、こうだったのでしょう。







  まとめ

 普通の人が異様な事件に巻き込まれて……、という流れで、あくまで普通人の視点で最後まで行く処が独特です。
 (吸血鬼化したさっちんとか、直死の魔眼を持つ志貴とか、決して尋常でないですが……)
 また、このシナリオの場合、他のメインキャラが抱えた過去や運命はまったく姿を表さず終わってしまいます。
 なにしろ志貴が遠野の血を引いていない事すら、この話の中では明らかにされません。
 あくまで弓塚さつきメインのお話になっています。

 その中にあって、ある意味本編以上の大活躍を見せるのがシエル先輩。嬉しそうに腕を振るっていますね。
 しかし、さっちんの為にという辺りが、よく考えると何とも皮肉。
 でも戦闘シーンだけが、シエル先輩の見せ場ではありません。
 ラストでの切ない別れと感謝の言葉。
 ここでの志貴には、その本当の意味は分からないけれど、プレイヤーにはその重みがズンと伝わって来ます。

「いいんです。分からないでしょうけど、ありがとうを言わせてください」
 この台詞を、静かに語るシエル先輩に涙がこぼれます。
 シエル先輩のストーリーが自然に絡むんですよ。
 ちょっと『雫』のさおりんエンドを彷彿とさせてくれる、このシーンには本当に痺れました。
 (蛇足ながら『雫』の、今回起こらなかった物語を想起させる演出も秀逸。瑠璃子ちゃんの想い出がもう……)

 さっちんファンからの声があまりに強いので、仕方なく作ったみたいなコメントと共に公開
 しかし蓋を開けてみると単なるおまけシナリオでなくて、他のシナリオにも伍する出来。
 (多少贔屓目かもしれませんが……)
 改めて『月姫』のレベルの高さに感嘆しました。
 今度は青子先生を、との声があがりそうな気がしますが、どうなるでしょう? 

   (01年/8月作成)
























−−−後書き


 これは創作物で、今のところ、さっちんシナリオなるものは公開されていません
 一応、謳っておこう。
 と言うか、本気にされた方、すみません。TYPE−MOON様に問合せとかしないで下さい。

 ありもしないものをもっともらしく描く、という形式の創作なのですが、所々に「本文」引用してのレビューにしようと思って作り始めて、結局こういう形になりました。きのこさんの文体真似して書くのが難易度高すぎたからです。
 あとストーリー展開もあまり広げると収拾がつかなくなるし、何も起こってくれないと『月姫』じゃないし、という訳で、肝心の部分ぼかしたり半分の日程にしたりしてあります。
「こうあってほしい」じゃなくて「こういうのもありか」位の話ですので。
 これ作るのに何回もさっちんの出てる前半繰り返しました。改めて普通っぽい処も吸血鬼としての姿もいいなあ、とだいぶ侵食されました。

 早く公式の彼女に会いたいものですね。かなりシナリオ公開を匂わせていますし。


 ええと、前にもご覧になった方、改訂版です。……ほとんど弄っていませんけど
 割ともっともらしさが気に入っているのと、前のWORDでの作成版が重いので、軽量化しました。
 本当は、「逃げれば? いまなら見逃してあげるわよ、先輩」とかも使おうと思ったけど、断念。

   by しにを (2001/8/7)
          (2002/7/8改訂)



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